ダカール2冠王者、タイガー1200で、世界一周タイムアタックに挑戦!
- 掲載日/2026年09月08日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 文/小松 男

骨折もリタイアも乗り越えてきた、
ダカール2冠の『ど根性男』
サム・サンダーランドは1989年、英国プールの生まれ。19歳のとき、ドバイに引っ越したことがきっかけでラリーレイドにのめり込み、2012年にホンダでダカールラリーデビューを果たしている。
とはいえ、そこからの道のりは決して順風満帆じゃない。デビュー戦は電気系トラブルでリタイア、翌年は事前テストで両手首を骨折して欠場、2016年には大腿骨を折る大クラッシュまで経験している。
それでも諦めなかった男は、2014年にKTMへ移籍すると着実に力をつけていき、2017年、ついに英国人史上初のダカールラリー優勝を達成。
2022年にはGasGasに移籍した初年度にまたしても優勝を飾り、異なる大陸(南米とサウジアラビア)でダカールを制した唯一の英国人ライダーになった。同じ年にFIM世界ラリーレイド選手権の初代チャンピオンにも輝いていて、まさに”生ける伝説”というやつだ。
ちなみに、今回のチャレンジはInstagram(@sundersam)でリアルタイムに更新されている。プロフィール欄にも「Dakar 2017/2022」「World rally champion 2019/2022」の実績がずらりと並び、トライアンフのアンバサダーであることもしっかり明記済み。 今、まさに世界のどこかを爆走しているはずなので、フォローして”今どこにいるか”をリアルタイムを追いかけることが出来る。

ロンドン発、19日間で地球をぐるっと一周、
5大陸で総距離29,000km!?
予定しているルートは、ロンドンをスタートして、イスタンブール、バンコク、クアラルンプール、パース、シドニー、ニュージーランド、バンクーバー、モントリオール、カサブランカを経由し、再びロンドンへ帰ってくるというもの。
総距離は約18,000マイル(約29,000km)。あのボンネビル・ソルトフラッツみたいな名所にも立ち寄りつつ、灼熱のオーストラリア・アウトバックも走り抜けるというから恐れ入る。
単純計算で1日あたり約1,000マイル(約1,600km)、日によっては17時間以上ぶっ通しで走ることになるらしい。
しかも記録として認められるには、“同じバイクで走り続けること”、“一方向にぐるっと回ること”、“地球の真裏にあたる地点を2カ所通過すること”など、細かいルールをクリアしなければならない。サンダーランド選手自身も「一番きついのは、とにかくこの走行距離。体力より、むしろ集中力が試される」とコメントしている。

この無茶な旅を支えるのは、
30Lタンクを積んだ怪物マシンだ
そんな過酷な旅の相棒に選ばれたのが、タイガー1200シリーズの最上級グレード、Tiger 1200 Rally Explorerだ。
心臓部は1,160ccのT-planeトリプル、鼓動感の強い不等間隔点火の水冷並列3気筒で、最高出力は150ps/9,000rpm。新設計フレームのおかげで旧型より25kg以上も軽量化されており、フロント21インチ・リア18インチのスポークホイールで悪路もへっちゃら。
そして今回の旅に一番効いてくるのが、シリーズ最大となる30Lの燃料タンク。標準モデルより10L多く積めるので、給油ストップの回数を減らして、とにかく前へ前へと進み続けることができる。SHOWA製の電子制御サスや電熱シートまで標準装備という、まさに”世界一周仕様”の一台となっている。
ちなみに、トライアンフからリリースが届いた後、サンダーランド選手のInstagramを拝見し、スタート地点で撮影された実車をよく見てみたところ、従来のタイガー1200シリーズとはヘッドライト周りの造形が微妙に異なることに気づいた。
スクリーン下あたりにレーダーセンサーらしきものも確認でき、”次世代Tiger 1200のプロトタイプなのでは?”という見方もできる。もしそうだとすれば、今回の過酷な旅は、トライアンフにとって次期モデルの”ガチンコ耐久テスト”も兼ねているのかもしれない。真相は、EICMA(ミラノショー)あたりで明らかになりそうだ。

「20年不動の記録」、
実はもうひとつの物語がある
ここでちょっとだけ、豆知識を挟みたい。サンダーランド選手が挑む「19日8時間25分」という記録は、2002年にケビン&ジュリア・サンダース夫妻がBMWのGSに2人乗りで達成したものである。
Guinness World Recordsは安全上の理由から、この記録を最後に公道スピード記録の認定自体をストップしていて、その意味では”公式には”今も破られていない記録ということになる。
でも実は2025年の秋、カナダの人気バイクYouTubeチャンネル「FortNine」の面々が、ドゥカティのムルティストラーダV4ラリー2台を使って世界一周に挑み、16日23時間というタイムを叩き出している。
睡眠時間も空輸も国境待ちも、全部止めずに計測したという”完全にごまかしなしの記録”らしく、その一部始終はドキュメンタリー映画にもなって公開中だ。
Guinnessの公式認定こそ受けていないので単純比較はできないけれど、情報によれば、お互いこの挑戦のことは事前に知っていたとも言われている。
“最速”の座というのは、数字だけじゃなく、こういう裏側まで含めて面白い、と個人的には思う。サンダーランド選手の旅がどんな結末を迎えるのか、しばらくSNSからも目が離せなさそうだ。
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