VIRGIN TRIUMPH | ハーレーの男が去り、BMWの男が来る。未来を切り開くトライアンフ新体制 トピックス

ハーレーの男が去り、BMWの男が来る。未来を切り開くトライアンフ新体制

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英トライアンフが、経営執行陣の大幅な刷新に乗り出した。Chief Commercial Officer(最高商務責任者)を務め18年にわたり成長を牽引してきたポール・スラウドが勇退し、後任には商務部門を「営業」と「マーケティング」に分割する形で、BMW UKのCEOだったデビッド・ジョージと、ワイン業界出身のニック・ベルが就任した。なぜ今、ひとりの椅子がふたつに分かれたのか。そしてスラウド自身もまた、かつてライバルブランドから移ってきた人物だったという事実が、この人事劇に興味深い奥行きを与えている。

18年の集大成、そして「ひとつの椅子」が
「ふたつ」に分かれた理由

ポール・スラウドがトライアンフのチーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)に就任したのは2008年11月のこと。以来18年にわたり、営業とマーケティングを一手に統括してきた。その在任中、トライアンフの世界販売台数は年間約45,000台から140,000台超へと、実に3倍近くにまで成長。直近のFY25(2024年7月〜2025年6月)では過去最高となる141,683台を記録し、世界68の国と地域、950の正規販売店網を通じて展開するまでにブランドを押し上げた。400ccレンジの投入やモトクロス・エンデューロ参戦といった新領域への進出も、スラウドの在任期間に重なる。

今回の人事で興味深いのは、後任が「ひとり」ではなく「ふたり」だという点だ。これまでCCOがまとめて担ってきた「営業」と「マーケティング」の機能を分割し、それぞれにチーフ・セールス・オフィサー(CSO)とチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)という、新たな役職を設けた。単純な後任探しではなく、組織そのものを成長のステージに合わせて作り変えた、という見方が正しいだろう。

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ポール・スラウド(Paul-Stroud)

実はもともとは”ライバル”の人だった、
トライアンフの成長を支えたスラウドの経歴

スラウドがトライアンフに来る以前のキャリアは、実は「ライバルブランド」を渡り歩くもので、トライアンフ入社前は、ハーレーダビッドソン・モーター・カンパニーの英国・アイルランド地区マネージング・ディレクターを務めていた人物なのだ。

さらにその前は、MGローバーで欧州営業・マーケティング責任者やブランド戦略・コミュニケーション責任者を歴任し、キャリアの原点はローバー・グループでのブランドマネジメント・営業だったという。つまりスラウドは、もともと「二輪の世界的ライバル」から移ってきて、トライアンフの黄金期を築いた人物だった。この事実を踏まえつつ、今回の後任人事のことを考えてみると、ある種の”デジャブ”が見えてくる。

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デビッド・ジョージ(David-George)

BMWのCEOが選んだ、
次のステージ

新たにチーフ・セールス・オフィサーに就任するデビッド・ジョージは、トライアンフ入社時点で、BMW UKのチーフ・エグゼクティブ・オフィサーという要職にあった人物だ。しかもBMWブランド単体ではなく、BMW、BMWモトラッド、そしてMINIまでを統括する立場にいた。

それ以前もフォルクスワーゲングループ、アウディ、メルセデス・ベンツ、MINI、BMWと、英国・カナダで名だたる自動車ブランドの要職を歴任してきた、まさに”プレミアムブランド”を知り尽くした人物である。

自身もモーターサイクル愛好家だということからも、トライアンフとの相性の良さを感じさせる。かつてハーレーダビッドソンから来たスラウドが18年かけてブランドを育てたように、今度はBMWという、もうひとつの二輪ライバルブランドの頂点から、次のキーマンがやってきたことになる。バイク業界に限らず、自動車・二輪業界全体で”ライバル企業への転職によるキャリアアップ”はもはや珍しい話ではないが、今回の人事は、その典型例のようにも映る。

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ニック・ベル(Nick-Bell)

ワイン業界から来た男と、
役職分割の先に見えるもの

一方のニック・ベルは、やや異色の経歴を持つ。戦略コンサルティング会社OC&Cを通じて、10年以上にわたりトライアンフと関わってきた人物だが、直近の肩書きはオンラインワイン小売大手ヴィヴィーノ(Vivino)のチーフ・オペレーティング・オフィサーだった。

バイクとは畑違いに思えるが、この1年間はトライアンフの長期成長戦略プロジェクトに深く関わり、顧客や事業、今後の方向性への理解を蓄積してきたという。CEOのニック・ブロアも、「すでに我々のビジネス、顧客、目指す方向性を深く理解している」とコメントしており、外部人材でありながら”すでに内部の人”という異例の起用と言えるだろう。

なぜ今、あえて営業とマーケティングを分けたのか。その答えは、トライアンフという会社そのものの規模にある。

年間14万台超、68の国と地域、950の正規販売店、そして世界で約3,000人の従業員。もはやひとりのCCOがすべてを見渡せる規模ではなくなった、ということなのだろう。

ちなみに日本市場に目を向けても、その成長曲線は本国の勢いと決して無縁ではない。

2019年に1,958台だった国内新規登録台数は、2024年には4,898台と、わずか5年で2.5倍以上に伸長。直近の1年間では初めて5,000台の大台を突破するなど、世界的な成長トレンドの縮図がここ日本にも表れている。ハーレーからトライアンフへ、そしてBMWからトライアンフへ。ライバル同士が人材を奪い合いながら成長していく、この業界のダイナミズムを象徴するような人事劇だった。

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