VIRGIN TRIUMPH | TOWARD WEST-ALL NEW TIGER1200 特集記事&最新情報

TOWARD WEST-ALL NEW TIGER1200
掲載日/2022年10月26日
取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 
取材・文/伊井覚 写真/稲垣正倫
2022年、トライアンフの大型アドベンチャーモデルとして、新型TIGER1200がデビューした。水冷並列3気筒Tプレーンクランクエンジンから生み出される不等間隔の爆発タイミングにより、オフロード走行時のトラクションが向上。さらにSHOWAの電子制御セミアクティブサスペンションや25kgもの軽量化、巧みな排熱処理など、様々な進化を遂げたTIGER1200で、ロングツーリングを試みた。

TRIPLE ENGINE,T-PLANE
伝統のトリプルエンジン、Tプレーンクランクの底力

早朝、朝日が昇るのとともに新型TIGER1200のエンジンに火を入れた。TIGER1200の一番の魅力はやはり新設計の1158cc3気筒エンジンだろう。多くのライバルモデルが2気筒エンジンを採用する中、トライアンフは伝統的なこの3気筒エンジンを進化させ続けてきている。その理由は、乗ってみれば誰でも体感することができるはずだ。

3気筒エンジンは、低速域では太いトルクと扱いやすさを両立し、高回転域ではまるで獣の咆哮のようなサウンドを奏で、最高出力150PSもの底から押し上げてくるような力強いパワーを感じることができる。これは2気筒とも4気筒とも違う、3気筒独特のエンジンの「味」と言えるだろう。その特性が、街乗りからワインディング、さらには林道、高速道路まで様々なシーンにおいてライダーを助け、時には痛快さすら感じさせてくれるのだ。

新型TIGER1200のエンジンで旧モデルから一番大きく変わったのが、Tプレーンクランクの採用だ。これまでは3つあるクランクピンの配置が等間隔に120度ずつ配置されており、240度の等間隔で爆発させていたが、Tプレーンクランクではクランクピンを0度、90度、180度で配置。点火順序を1番→3番→2番とすることで、180度→270度→270度の不等間隔の爆発を作り出している。

不等間隔爆発は今となっては珍しいシステムではないが、Tプレーンの場合は脈動の変化がわかりやすい。高めのギヤでスロットルを開けていくと、まるでシングルエンジンのような一定間隔の振動が伝わってくる。この特性が、他の車や歩行者などに気を遣いながら走り、ストップ&ゴーが多い街中のジェントルなフィーリングだけでなく、摩擦抵抗が低く滑りやすいセンシティブな土の上で大いに生きるのだ。そんな新型3気筒Tプレーンエンジンのフィーリングを楽しんでいたら、あっという間に都市部を抜け、山間部へと至っていた。

ABSOLUTELY,GRAND TOURISM
大容量タンクと温度管理が快適な旅を演出

高速道路を降りて、ワインディングへ。TIGER1200 GT PROは20Lタンクを装備しており、燃料にはまだまだ余裕がある。ロングツーリングにおいて煩わしい給油回数を減らすことができるのは、ストレスの軽減に繋がり、リズム良く旅を進めることができる。さらにEXPLORERモデルの場合は30Lタンクを搭載しており、より航続距離が延びる。

そして秀逸なのは、そんな大容量タンクでありながら、シート周辺の膝が収まる部分はスリムに設計されており、ライディングにおいて一切阻害しないこと。ハンドルバー、ステップのポジションの三角形は秀逸なバランスで、リラックスしたライディングフォームで乗ることができ、ダートでスタンディングした時にはさらにその輝きを増す。

コーナリングABS、コーナリングトラクションコントロールが標準装備されており、急ブレーキや不意のスライドによる転倒のリスクを軽減。さらにトライアンフシフトアシストがクラッチ操作なしでのシフトチェンジを可能にしてくれるため、ライディングに集中できるのも新型TIGER1200のメリットの一つだ。

日が中空高く昇る頃になって気がついたのは、エンジン熱の取り回しが非常に優秀なことだ。旧モデルやいくつかのライバルモデルでは、その大排気量故エンジンが生み出す熱量でニーグリップする足が熱くなり、真夏などは乗っていられないほどになることもあった。しかし新型TIGER1200は電動ファンによって逃がされたラジエーターの熱が腕の下を通り抜けて遥か後方へと流れていくため、足は熱をほとんど感じない。そして全モデルにグリップヒーターが、EXPLORERにはシートヒーターが装備されており、寒い時期でも気温に左右されない快適な旅を約束してくれる。

ULTRA LIGHT WEIGHT,SPORTY
驚異の25kg軽量化はどこに活きるか、ライトウェイトの真髄

旅先で不意に現れる工事中のダートからキャンプ場や駐車場の砂利、そして林道。新型TIGER1200はそんなオフロードシーンにも不安を感じることなく入っていくことができる。

理由の一つは、新設計エンジン、シャシー、スイングアームなどによって25kg以上もの軽量化を実現させた車両重量だ。低速でバランスをとりながら進まなければならないような狭いダートでは、この軽さがありがたい。また、この特性はオフロード走行時以外にも恩恵がある。例えばコンビニの駐車場に入る時に乗り越える段差だ。そんなちょっとしたものでも、重量のあるバイクだと恐怖心を感じることがあるが、TIGER1200ならばどうということはない。

バイクという乗り物の特性上、どうしてもエンジンが低回転時には慣性力を失い、バランスを崩しやすいものだが、新型TIGER1200はその軽量さと、先に述べた低回転のトルクフィーリングゆえ非常に扱いやすく、滑りやすい路面でも足を掬われにくい。

ELECTRIC,SEMI-ACTIVE SUSPENSION
電子制御セミアクティブサスペンション

また、サスペンションが大きく進化している点も見逃せない。SHOWAとトライアンフが共同で開発したTIGER1200 RALLY PRO/EXPLORERのセミアクティブサスペンションは220mm(TIGER1200 GTシリーズは200mm)のロングストロークを誇る。

さらにライディングモードを選択することで、スロットルレスポンスやABS、トラクションコントロールだけでなく、サスペンション特性をも変更することができるようになった。アドベンチャーカテゴリーのモデルはオフロード走行を想定しているためにソフトなサスセッティングで出荷されることが多く、それがロードツーリングではブレーキ操作時や加速時に緩慢なピッチング挙動となってデメリットとしてあらわれてしまうことがある。

TIGER1200では予め設定されているライディングモードが選べるだけでなく、さらにそこからサスペンションの特性だけを変更することも可能となっている。また、パッセンジャーの有無や積載した荷物の重量に応じて減衰力を自動で調整してくれる。もちろん、手元のスイッチで任意に変更することも可能だ。

ダートに持ち込めば初期は滑らかに動き、路面の小さな凹凸をしっかり吸収してくれる。そして大きなギャップを越える時などは奥でしっかり粘り、急激なピッチングを抑制してくれる。そんな懐の深いサスペンションに支えられているからこそ、車重の軽さを最大限に活かすことができるのだ。

TIGER1200に搭載されているSHOWA製セミアクティブサスペンションはライディングモードによってその設定を変えるだけでなく、走行中リアルタイムに減衰力を調整し、常に最適な性能を発揮できるよう制御してくれている。さらにライダーの体重やパッセンジャーの有無、積載した荷物の重さなどを感知し、それに合わせてプリロードを自動調整してくれるのだ。旧モデルだけでなく弟分であるTIGER900シリーズに比べても大きく進化した部分と言える。

ALL SITUATION,SAFETY
先進装備が安全性を生む、ブラインドスポットレーダー

夕日が沈むのを見送ってから再び、高速道路へ。まもなく日本海が見えてくるが、30Lタンクにはまだガソリンを残している。いくら快適なTIGER1200でも、長距離走行の連続からさすがに少し疲れが見えてくる。そんな注意力が低下した時こそ、TIGER1200 GT EXPLORER/RALLY EXPLORERに搭載されている安全対策性能が活きてくる。

その一つがブラインドスポットレーダーだ。車線変更をする際にミラーで後方を確認したあと、目視で死角である斜め後ろを確認するのが、このブラインドスポットレーダーは斜め後方に車両がいた時にミラー下部が光ってその存在を教えてくれる。

さらにクルーズコントロール機能(全モデル搭載)を使うことでアクセル操作も不要となり、右手も休ませることができる。バイクに乗る上でもはやアクセルを開け続けることは当たり前のように感じていたが、このクルーズコントロールに慣れてしまえば、アクセルから解放されることが驚くほど疲労軽減に繋がる。左手のスイッチ操作によって容易にオンにでき、速度の微調整も可能。

SELECTABLE 6 RIDING MODE
自分好みにカスタマイズしてベストセッティングを探る

ライディングモードを変更することでスロットルレスポンス、トラクションコントロール、ABS、サスペンションの設定を変えることが可能だ。街乗りやツーリングに向いている「ROAD」、ワインディングには「SPORT」、雨天やウェット路面に向いている「RAIN」、ダート走行に適した「OFF-ROAD」、そしてよりトラクションコントロールとABSをカットでき、よりアクティブにダートを走ることができる「OFF-ROAD PRO」(TIGER1200RALLY EXPLORERのみ設定)。そして自分好みの設定を保存しておけるカスタマイズモード「RIDER」。

さらに各ライディングモードをベースにカスタマイズして自分好みの設定を作ることもできる。例えば「OFF-ROAD」モードにするとスロットルレスポンスが良い意味でダルになり、サスペンション設定が9段階中の1(一番柔らかい設定)になっているが、ある程度スピードを出して走りたい時はサスペンションを硬めにすることで走りやすくなる場合もある。このように自分なりのベストな設定を探して色々と試してみるのもTIGER1200の楽しみ方だと言えよう。

DETAIL
TIGER1200 GT PRO,TIGER1200 RALLY EXPLORER

防風効果に優れたシールドは無段階に高さ調整が可能。スタンディングするときは低く、高速道路では高く、シーンごとに調整することでさらに快適なライディングが可能だ。

エンジン左右に設置されたツインラジエーターのおかげでエンジンを前方に配置することが可能になり、低重心化に貢献している。さらに排熱効果も高く、旧モデルの課題であった熱対策も解決した。

シートは2段階で高さ調整が可能になっており、足つき性を補助してくれる。タンクに近い部分はスリムなデザインで、スタンディング時も邪魔にならない。また、パッセンジャー用にグラブバーも装備されている。

1158ccの水冷並列3気筒DOHC12バルブエンジンはTプレーンクランクを搭載し、不等間隔爆発による優れたトルクフィーリングを提供してくれる。最高出力は150PS/9,000rpmで、最大トルクは130Nm/7,000rpm。

TIGER1200 GT EXPLORER/RALLY EXPLORERには30Lの大容量タンクが搭載されており、500km以上の航続距離を実現している。

シャフトドライブを採用しており、チェーンのような定期的な清掃・注油は不要。オフロードで起こりやすいチェーントラブルからも無縁だ。シャフトはその仕組み上、チェーンと違いロール方向に余計な力が加わるものだが、見事に打ち消され違和感はなかった。

オプション設定のラゲッジシステムはGIVIとの共同開発。アルミニウム製のトップボックスと左右パニアケースは、脱着から開閉までバイクのリモートキー1本で行うことができる。

TIGER1200 SERIES LINEUP

オンロードツーリング中心 近距離〜中距離向け
TIGER1200 GT PRO
¥2,364,000〜
カラー:LUCERNE BLUE、SAPPHIRE BLACK、SNOWDONIA WHITE

オンロードツーリング中心 中距離〜長距離向け
TIGER1200 GT EXPLORER
¥2,549,000〜
カラー:LUCERNE BLUE、SAPPHIRE BLACK、SNOWDONIA WHITE

オンロード〜オフロードまで 近距離〜中距離向け
TIGER1200 RALLY PRO
¥2,519,000〜
カラー:MATT KHAKI、SAPPHIRE BLACK、SNOWDONIA WHITE

オンロード〜オフロードまで 中距離〜長距離向け
TIGER1200 RALLY EXPLORER
¥2,699,000〜
カラー:MATT KHAKI、SAPPHIRE BLACK、SNOWDONIA WHITE

TIGER900 GT(PRO)/RALLY(PRO)

2020年に登場したTIGER900シリーズは887ccの水冷並列3気筒Tプレーンエンジンを搭載。最高出力は95.2PS/8,750rpm、最大トルクは87Nm/7,250rpm。20Lのタンクを備え、重量は219kg〜226kg。このTIGER900からセミアクティブサスペンション装備や軽量化、排熱システムなど様々な面を進化させ、より快適性を追求したモデルが新型TIGER1200となっている。

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