VIRGIN TRIUMPH | 【2024年型NEWトライアンフ タイガー900 GTプロ/ラリープロ 試乗記】アドベンチャーマシンのニューホープ 試乗インプレッション

【2024年型NEWトライアンフ タイガー900 GTプロ/ラリープロ 試乗記】アドベンチャーマシンのニューホープ

【2024年型NEWトライアンフ タイガー900 GTプロ/ラリープロ 試乗記】アドベンチャーマシンのニューホープのメイン写真
TRIUMPH TIGER 900 GT PRO / RALLY PRO(2024)
2024年型NEWトライアンフ・タイガー900がデビュー。エンジン出力アップ、アクティブセーフティ充実、新型7インチTFTディスプレイ採用、快適性と安全性向上など全方位にわたるリファインを敢行。1000cc以下のアドベンチャーマシンの最有力候補のひとつに君臨できるポテンシャルを実感した。

タイガー900 GTプロ/ラリープロ 特徴

180度→270度→270度の不均等爆発エンジンにより
ダート走行でのグリップ力を強化

トライアンフといえば直立2気筒エンジンのクラシック系バイク「ボンネビル」のイメージが強いものの3気筒モデルの機種展開が実は興味深い。

モトGPクラスへの登竜門モト2クラス。フレーム選択は自由だが、どのチームも同一エンジンでレースを闘うシステム。トライアンフ社はその公式エンジンサプライヤーとしてストリート・トリプル765のエンジンを供給し、従来の日本製4気筒マシンよりも各コースでのラップタイムを大幅に更新し続けている。

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そんなトライアンフの3気筒エンジンのクランク位相は120度だが、アドベンチャー系モデルのタイガー900と1200は180度→270度→270度の不均等爆発エンジン(トライアンフはTプレーンクランクと命名)を採用。理由はダート走行でのグリップ力:トラクション性能をより強くするため。

2024年型タイガー900はキャストホイール・前後輪19:17インチのタイガー900GTと豪華装備の900GTプロ。前後輪21:17インチでスポークホイールのタイガー900ラリープロの3機種。 いずれもエンジン出力を95→108psへ13馬力ものアップを果たしながら最大トルクも87→90Nmへ向上させながら燃費を9%改善したという。

パワーも大事だが実際に気になるのは低疲労と安全性から生まれる快適性の向上だが、はたしてその完成度は?

タイガー900 GTプロ/ラリープロ 試乗インプレッション

あらゆる状況で存分に走りが楽しめる最適ストライクゾーン

試乗会1日目はGTプロでフラットダートを少し含むワインディングロード。2日目はラリープロによるダート走行というメニューだったが、まずはGTプロによるワインディング。

出力アップした新型タイガー900のチャームポイントは市街地から、かなりのハイペースなワインディング走行まできっちりと路面を掴む気持ち良さが堪能できたこと。

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タイトコーナーの連続でもコーナリングABSとIMU付きトラクションコントロールで安全安心のライディング。入力タッチから限界まで自在に扱えるブレンボ製Stylemaモノブロックブレーキを使いながらのバンク中もTプレーンクランクの3気筒サウンドが思い切り楽しめる。

ビッグオフは「カーブは楽しくないのでは?」というイメージを完全にくつがえす旋回力だ。車体剛性配分、前後サスの動き、強弱自在に使える前後ブレーキによって走行ラインの自由度が高く、アップライトなポジションと優れた防風性、そしてパワフルなエンジンによってワインディングが実に楽しい。

その楽しさを増長してくれるのが今回のエンジン系リファイン。5000回転以上でのパワーの伸びだけでなく、2000回転付近から上の粘りと押し出しがアップしている。1気筒や2気筒にはできない低速系の滑らかさ。高回転では4気筒に劣らぬシャープな伸びと十分すぎるパワー。しかも5000回転あたりまではTプレーンクランクらしいドルルーンとくるビート感が楽しめ、6000回転以上では、まさしくトラが吠えるような荒々しいサウンドに変化。ロングランでも退屈にならない最良の味付けだ。

GTプロのリアサスには電子制御式プリロード&伸側減衰機構がセットされてタンデムや荷物満載時の操縦性低下の心配も排除。前後180mm/170mmのストロークによってロードモデルで不安になるような路面の凹凸もスッと気軽に走破してくれる。

2日目はラリープロによるダート走行。エンジンモード、ライダーモードが選択できるGTプロと異なりロード、レイン、スポーツ、オフロードに加えて、ライダーモード、オフロードプロの選択が可能。トラクションコントロールとABS解除のオフロード・プロ設定で走ったが、着座、スタンディングのいずれもポジションのフィット感に優れ、豪快なパワーと自在性が堪能できた。

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前輪21インチならではの走破力。実はアスファルトでも荒れた路面になると乗り心地の良さがさらに実感。ワイヤ式スポークホイール21インチならではの、しっとりした乗り味と低振動のハンドル&高い防風性でロングランが実に楽しい。

低速域でのバランスや鋭い立ち上がりなど、滑りやすい路面ではちょっとしたスロットルの開け加減でのレスポンスとパワーの出方が大事。新型タイガーはエンジンの扱いやすさで曲がり方がより軽快になった。重く大きな車体を持て余すのは結局、エンジンの特性なのだ!ということを気づかせてくれた。

直線でキッチリ加速してからのハードなブレーキング加減も自在。重いバイクによる急な下り坂でも前240mm、後230mmのストロークを持つ前後サスが踏ん張って狙った通りの減速とラインがトレースできるのだ。

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3気筒マルチとはいえTプレーンクランク採用の3気筒ゆえ、急な登り坂での後輪のグリップ力は低回転から高回転まで十分。しかも、低速域でのエンジンの粘り、レスポンスに優れる。

ラリープロはハンドル位置が15mm手前に移動したことで、着座でもスタンディングでもハンドル操作がより快適になった。

GTプロとラリープロはラバーマウント型ハンドルバーとなったことで手に伝わる振動が大幅に減った。クラッチも軽い。短時間でもすぐに尻を痛がる私が2日間とも尻が痛くならなかったのは驚きでもあった。前後シートともヒーター装備。5段階50mmのウインドシールド高さ調整可能といった快適性アップのほか、被視認性向上となるウインカーポジションランプ、ABS作動時の自動ハザードランプ点滅、タイヤ空気圧モニタリングシステムなど装備の充実もGTプロとラリープロの大きな魅力。

1000cc以下のビッグオフこそ、車体サイズと重量、存分に楽しめるパワーと快適性、そしてプライス(費用対効果)のハイバランス。あらゆる状況で存分に走りが楽しめる最適ストライクゾーンではないか。ストレートにそう思わせてくれた新型タイガー900GTプロとラリープロだった。

タイガー900 GTプロ/ラリープロ 詳細写真

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ラリープロはスタンディング時のリアブレーキ操作性を高めるため、ブレーキペダルの高さをハイとローの2段階でワンタッチ調整できる。ステップも滑りにくいワイドタイプ。GTプロはブレーキペダル高さ調整機能なし。ステップは振動低減のラバーが組み込まれている。
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GTプロとラリープロには前後シートに2段階シートヒーターを装備。もちろんグリップヒーターも標準装備。シートヒーターはさまざまな季節と場所に欠かせない快適必需装備だ。
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メーター類は直感的に左手親指で操作するジョイスティックで操作できる。メーター左端はUSBプラグ。ウインドスクリーンは5段階で高さ調整可能。
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ホンダ車が採用していたオレンジ色の波長で被視認性位アップを狙うウインカーポジションランプを輸入車としては初の採用。転倒しても壊れにくい位置にウインカーを配置。
【2024年型NEWトライアンフ タイガー900 GTプロ/ラリープロ 試乗記】アドベンチャーマシンのニューホープの16画像
水冷DOHC3気筒180度クランク888ccは圧縮比を11.27:1から13.0:1へ高め、出力を95.2ps /8750rpmから108ps /9500rpmへ。トルクは87Nm /7250rpmから90Nm /6850rpmへ。より低回転から大きなトルクを発生させながらトップエンドでの伸びとパワーを手に入れつつ、燃費は9%改善。実際にハイペースな林道距離100km以上の走行でも燃費はリッター20km /L近い数値だった。燃料タンクは20L容量なので実質航続距離は350km前後を十分確保。スタンディング時のニーグリップがしやすい形状。
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GTプロのフロントフォークはマルゾッキ製45mm 倒立型フルアジャスタブル・カートリッジフォーク。リアサスには電子制御式プリロードとリバウンド減衰力調整機能付きボトムリンクサス。ストロークはフロント180、リア170mmのストローク。ラリープロのフロントフォークは240mmのストロークを持つショーワ製45mm倒立式フルアジャスタブル・カートリッジ式。リアサスもショーワ製230mmのストロークを持つマニュアルプリロードと伸側減衰調整可能なボトムリンク式。ホイールはGTプロ、ラリープロとも前後輪チューブレス。ブレーキキャリパーはブレンボ製Stylemaモノブロック式。ラジアルフロントマスタシリンダーを採用。いずれもタイヤ空気圧モニタリングシステム装備。
試乗ライダー プロフィール
柏 秀樹
タイガー955iで15万キロメートル走って、初期型エクスプローラーで7万キロメートル走ってきたタイガー好きなジャーナリスト。パリダカ4回参戦などビッグオフの経験も取り込んだライディングスクールKRSを精力的に各地で開催している。

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