VIRGIN TRIUMPH | トライアンフのスピードトリプル1200RSを試乗インプレ!羊の皮を被った狼、ハイエンドスポーツトリプル 試乗インプレッション

トライアンフのスピードトリプル1200RSを試乗インプレ!羊の皮を被った狼、ハイエンドスポーツトリプル

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TRIUMPH SPEEDTRIPLE 1200 RS(2021)
世界が認めるブリティッシュスポーツバイクの最高峰、スピードトリプル1200RS。引き締められたアスリートのようなボディワークと、高いプライドを持つ英国紳士のような装い。それは触れるライダーにも相応の意識を求めてくる。

初代誕生から四半世紀以上の
長い歴史を持つ、無くてはならない一台

この世にスピードトリプルの名を持つバイクが誕生したのは1994年のこと。経営難に陥っていたトライアンフがモジュールコンセプトエンジンを掲げ、新たに建設したヒンクレー工場にて生産を始めた90年代初頭のことだ。すべてにおいて革新を遂げた新生トライアンフのモデルが矢継ぎ早に発表される中でも、特に大きな注目を浴びた一台だった。それはスピードトリプルが、当時レーサーレプリカなどが人気を博している中で、カウルを持さないネイキッドモデルでありながら、スポーツ性能を求めてポテンシャルを引き上げられたものであり、後にストリートファイターと呼ばれるジャンルの立役者であったことも要因となっている。

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1997年に行われたモデルチェンジでは、ヘッドライトを2灯化し、独自のアイデンティティを持たせた。このモデルは映画ミッションインポッシブル2の劇中で、主人公演ずるトム・クルーズが活躍するライディングシーンがあり、一般的な知名度も向上した。弟モデルにあたるストリートトリプルが加わっても、人気は衰えることなく、スポーティに、そしてアグレッシブに進化を続け、現在に至っている。今回は、そのスピードトリプルの歴代モデルの中でも最も過激なセッティングが施され、本年ブラッシュアップされたスピードトリプル1200RSに焦点を当てる。

スピードトリプル1200RS 特徴

現代版カフェレーサーここにあり、
ストリートファイターセグメント復権か!?

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バイクフリークの間でストリートファイターという言葉が出始めたのは90年代初頭のこと。それはスーパーバイクやレーサーレプリカなどフルカウルモデルが備えたカウルを取り払い、セパレートハンドルをバーハンドル化することで、高いポテンシャルを維持しながら、道の入り組んだ街中での操作性を向上させたカスタムバイクを指していた。 ストリートファイターバイクは、そのキャラクターからウイリーやジャックナイフだけに止まらず様々なトリックを行うスタントライドというジャンルを切り開くのにも貢献していた。ストリートファイターの走りは過激であり、見る者は歓喜する。それは60年代の英国でブームとなったロッカーズによるカフェレーサーの到来を照らし合わせることもできる物だった。そして一部のフリークから火がついた小さなストリートファイタームーブメントに対し、バイクメーカーも即反応を示すようになる。実は1993年の欧州モーターサイクルショーでは、数社がストリートファイタースタイルのモデルを発表している。その中に、トライアンフのスピードトリプルの姿もあった。

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ハンドルこそセパレートタイプが採用されていたが、従来のネイキッドモデルとは一線を画するモダンなスタイルが用いられたそれは、各国のモーターサイクルジャーナリストやプロライダーの目にもとまった。もちろん心臓部にトライアンフのお家芸でもあるトリプルエンジンが搭載されていたということもある。トライアンフ社は、一時は倒産の危機にまで陥っていたこともあり、大胆な復活戦略に誰もが驚きを隠せずにいた。その後2000年代に突入すると、オリジナリティだけでなく技術面でも優れたモデルを次々と開発することになる。昨今ではMoto2のエンジン供給も行っており、地球規模でトライアンフのバリューが認められたということが証明された。まさしくトライアンフの逆襲だ。どのモデルも高いスポーツ性を持たせながら、英国ならではの気品が感じられるものであり、スピードトリプルには、トライアンフのフラッグシップストリートファイターとしての座が与えられてきたのだ。

スピードトリプル1200RS 試乗インプレッション

トライアンフ史上ベストホット!!
刺激的な一台を望む挑戦者を求む!

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スピードトリプルの中でもトップグレードとなるスピードトリプルRSがデビューしたのは2018年のこと。大幅に刷新されたエンジンをはじめ、強化された足まわりや電子デバイスがふんだんに用いられ、究極のスポーツネイキッドと称されることもあった。それから早3年、見た目も中身も大きく手が加えられモデルチェンジが図られた。

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トリプルエンジンは排気量が1160ccまで拡大され、従来モデルと比べ最高出力は30馬力引き上げられた180馬力、最大トルクは8Nmアップの125Nmを誇る。ポテンシャルの向上と合わせて軽量化も徹底的に行われ200kgを切る199kgとした。そのパワーウエイトレシオからも、強烈な走りを想像することができるだろう。

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新型スピードトリプル1200RSを目の前にすると、これまでにも増して、シャープな印象を受けた。まずフェイスマスク、アイデンティティである2灯ヘッドライトはそのままに、形状を薄く、メーターバイザーを撤廃、走行風の整流効果を発揮するスポイラーが下部に装着された。アップタイプだったマフラーはミッドセットに変更されているほか、タンク、サイドカバー、シートカウルなどの形状も変更されている。新型と従来モデル、どちらも誰が見てもスピードトリプルだと分かるものだが、明らかに新旧の差別化が用いられているのである。

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エンジンを始動し走り出す。シフトアップ/ダウン共にクラッチレバー操作を行わずに済む新しいシフトアシストシステムが搭載されているので、楽にクルージングを楽しめる。と、思いきや、低回転から多大なトルクを発生することもあり、「ゆっくりと走らせること=楽」という図式は当てはまらない。それならばとペースを上げてみると、どこまで行っても、手の上であしらわれているかのような図太いスポーツポテンシャルが与えられており、少なくとも公道では数パーセントの実力しか体感することができないという印象を受けた。

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私は自分が扱いきれるポテンシャルの方が、バイクを楽しめると考えているが、それもまたスキルの違いや使い方によって異なってくるということも理解している。ただ新型スピードトリプル1200RSは、超ド級のストリートファイターに仕上げられているため、まず一般的なスキル程度のライダーだと手に余らせてしまうことだろう。そんなことを言い始めたら、スーパースポーツモデルなどはどうするのかと言われるが、その世界観を楽しむということはできることであるし、全部使えなくても、パワーやポテンシャルに余裕を持っていることは素晴らしいという考えを持つ方もいる。ただ単に、扱い切ることができるライディングスキルを持ち合わせていないだけだと言われればそれまでかもしれない。しかしサーキットに持ち込めば話は別だが、公道では過剰だと感じてしまうことも理解して欲しいのだ。

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エンジンは最高のセッティングに煮詰められているし(ロードモードで十分)、オーリンズ製のフルアジャスタブルサスペンションも良く動く、最高にスカッとする走りを楽しめる。が、その時は確実にスピード違反だ。かといってクルマの流れに合わせていてはストレスを覚えてしまう。バイクは自由な乗り物であると考えており、使い方を四の五の語ることはしたくはないのだが、新型スピードトリプル1200RSを手に入れ、バイクライフをエンジョイしたいのであれば、ド根性スタイルだけでなく、心身共に紳士的な素質が求められることになる。そのことを伝えておきたいのだ。

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先だってハーフカウルとセパレートハンドルが用いられたスピードトリプル1200RRというモデルが発表された。こちらも是非乗り比べてみたいところだと考えている。

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スピードトリプル1200RS 詳細写真

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トライアンフ伝統の並列三気筒エンジンは完全新設計とされ、ボアストローク90×60.8mmの排気量1160ccとなった。最高出力の180馬力を10750回転で発生する。7000回転以上に引っ張ると凶暴な加速感を得られる。
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オーリンズ製フルアジャスタブル倒立フォークを採用。トラベル量は120mmと大きい。自分のライディングスタイルや、走らせるステージに合わせてセッティングを出すことをお薦めする。前後タイヤはメッツラー・レーステックRR K3を履く。
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襲いかかる蜂を連想させる2灯ヘッドライトは、さらにシャープに引き締まったデザインとされた。メーターバイザーが撤廃され、代わりにライト下方にスポイラーが装備されている。
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片持ちタイプのアルミ製スイングアームに、新形状キャストホイールをセットする。タイヤサイズはフロント120/70ZR17、リア190/55ZR17と現代のスーパーバイクのそれに準ずる。ホイールベースは1445mmと短めの設定だ。
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リアサスペンションはオーリンズ製TTX36フルアジャスタブルモノショックを、リンクを介してセットしている。乗車位置との関係性が絶妙で、路面状況やトラクションのインフォメーションがよく伝わってくる。
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5インチフルカラーTFTディスプレイを採用。発色が良く、車両の状態や各種計器の視認性も高い。マイトライアンフコネクティビティシステムとスマートフォンを連動することで、様々な機能を操作することが可能となる。
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ステップバーは後方、高い位置にセットされており、スポーツライディングを助長する。シフトアップ/ダウンどちらも作動する新型シフトアシストシステムを採用している。ニュートラルポジションに若干入れづらい印象があった。
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燃料タンク形状も変更された。容量は15リットルと大き目であり、ツーリングユースでも使い勝手が良さそうだ。ボディカラーはマットシルバーアイスとサファイアブラックという2色展開となっている。
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シート高は830mmと高めの数値だが、細くシェイプされていることや車重が軽いこともあるので、足つき性はそう悪くない。クッション性があるが、サーキットレベルでのスポーツライディングを楽しみたいなら、薄く、硬い方が好まれるだろう。
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ブラック仕上げのテーパーハンドルバーを採用。バックミラーはバーエンドタイプだ。キーレスシステムなので物理キーシリンダーは持たない。モード切替やクルーズコントロールなどの機能ボタンは左スイッチボックスに集約。
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エッジを効かせたスポーティな印象を持つテールセクション。テールランプに採用されている面発光LEDがトライアンフのマークを連想させる。
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従来モデルがシートカウル下にセットされたアップタイプだったのに対し、ミッドセットに変更されたサイレンサー。トライアンフのトリプルエンジン特有のエキゾーストノートを轟かせる。

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