VIRGIN TRIUMPH | 【トライアンフ デイトナ660 試乗記】ライダーにフィットする誂え感が大きな魅力 試乗インプレッション

【トライアンフ デイトナ660 試乗記】ライダーにフィットする誂え感が大きな魅力

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TRIUMPH DAYTONA 660(2025)
英国の名門モーターサイクルブランド、トライアンフのフルカウルスポーツモデルに与えられる称号、デイトナ。その最新モデルにあたるデイトナ660は、刺激的なパフォーマンスと扱いやすさを兼ね備えている。

お得意のトリプルエンジンを搭載する
本格的フルカウルスポーツモデル

トライアンフのフルカウルスポーツに与えられる車名、「デイトナ」。その称号が約10年の沈黙を破り、ついに復活を果たしたのが2023年のことだ。長らく不在だったトライアンフのラインナップに、再び“デイトナ”の名が戻ってきたというニュースは瞬く間に世界中へ広がり、多くのファンが歓喜した。もちろん、私もその一人である。

だが、ふたを開けてみれば、エンジンは、かつてのデイトナ675で採用されていたハイパフォーマンスなトリプルユニットとは異なり、ロードスターモデルである「トライデント660」をベースとした新設計の660cc三気筒。これは、Moto2に供給されてきたレーシングユニットとは思想の違う“量産型トリプル”を核にしている、ということを意味する。

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スペック面を見れば、ピーク出力も旧675系より控えめで、数字だけを追えば「マイルドになった」「デイトナらしくない」といった声が一部から上がったのも事実だ。発売前後には、“改悪ではないか”と厳しい意見すら散見された。

しかし、私は登場直後に短時間ながら実車に触れた際、その評価には即座に首をかしげた。むしろ、トライアンフがこのバイクをどんなライダーにも扱いやすい“現代のリアルスポーツ”として緻密に仕立ててきたことが、走り出した瞬間から伝わってきたからだ。

エンジンの性格付け、しなやかに動く足まわり、過度に戦闘的すぎないライディングポジション――これらすべてが丁寧に調和しており、「速さ」だけでなく「乗る楽しさ」と「扱いやすさ」の両立を本気で目指した開発陣の意図が明確だった。とはいえ、当時の試乗はわずか1時間ほどのショートテストに限られていた。そこで今回は、あらためてじっくりとデイトナ660の持つ本質的な魅力に迫り、単なる“数字の比較”では見えてこない、このモデルの価値を深掘りしていきたい。

トライアンフ デイトナ660 特徴

トライアンフのデイトナが歩んできた道
そしてこれから進むべき方角

メリデン工場時代に生産されていたタイガー100系「デイトナ」はここでは脇に置くとして、ヒンクレーへ拠点を移した“新生トライアンフ”における初のフルカウルスポーツモデルとして歴史を刻んだのが、1980年代末に登場したデイトナ750/1000である。ここから、現代へと続くトライアンフ・デイトナの系譜が本格的にスタートした。

当時は3気筒と4気筒、2種類のパワーユニットをラインナップしつつ、トライアンフはスポーツモデルの再構築に取り組んでいた。そして2000年代へ入ると、フルカウルスポーツのメインステージはミドルクラスへと絞られ、デイトナシリーズもその流れに沿って深化を続けていく。

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その進化の象徴となったのが、2006年に登場したデイトナ675だ。独創的なトリプルエンジン、高精度なシャシーと足まわり、凝縮感あるデザイン――これらが極めて高い次元で融合し、プレミアムミドルスポーツのお手本のような存在として世界的な評価を得た。特にエンジンは高い完成度により賞賛され、後にMoto2世界選手権へ供給されるエンジンのベースユニットとして選ばれたことでも知られている。

しかし、その名車デイトナ675も2010年代中盤に生産を終了。以後、約10年近く“デイトナ不在”の時代が続くことになる。背景にはさまざまな要因が推察されるが、高性能スポーツモデルの開発には莫大なリソースが必要であったこと、そして当時の市場はネオクラシック系の需要が急速に高まっており、トライアンフにとってはボンネビルなどのクラシックシリーズへ注力すべきタイミングだった、というのが私の推測である。

そして2020年代。世界的に二輪需要が上昇し、とりわけ“手の届くミドルクラス”が求められるようになった。その要求に応えるべくトライアンフが送り出したのが、新開発のトリプルエンジンを搭載したロードスター、トライデント660だ。高性能と扱いやすさ、そして手頃な価格を両立させた同車は世界的なヒットモデルとなり、その成功を受けて2年後には同系ユニットを用いたタイガースポーツ660がデビュー。そして最新作として、同じ660ccトリプルを核に据えたフルカウルスポーツ「デイトナ660」が登場するに至った。

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興味深いのは、トライデント、タイガースポーツ、デイトナはいずれも一度歴史上から姿を消し、それぞれの形で復活を遂げたモデル名であるという点だ。ここから、現行660シリーズにトライアンフが寄せる大きな期待と意欲がうかがえる。

初期のトライデント660の段階から、この新世代トリプルエンジンは“扱いやすさと爽快感の両立”で高く評価されてきた。そしてデイトナ660では、そのベースをさらに熟成させ、電子制御デバイスの充実とスポーティな味付けを盛り込み、660シリーズの最上流にふさわしいキャラクターへと仕立てられている。

それでは、いよいよデイトナ660の実際の感触をお伝えしていこう。

トライアンフ デイトナ660 試乗インプレッション

良い意味で”つっかけ”的な存在だが
その懐は深く、ライダーを成長させる

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デイトナ660のデザインは、トライアンフらしい流麗なボディラインを描きながら、フルカウルスポーツとしての空力性能をしっかりと追求したシャープさも兼ね備えている。フロント側は“デイトナ”の名にふさわしい精悍な顔つきで、スラッと伸びるカウルは高速域での安定性を意識した造形。一方で、個人的にはテールセクションにもう一段階の鋭さがあっても良いのでは、と思う部分もある。しかし、あえて威圧感を高めすぎないフォルムとしたことで、ベテランからビギナーまで幅広い層が“構えずに”受け入れられるスタイリングになっているとも言える。

全体のサイズ感はコンパクトで、取り回しの面でもライディングの面でもライダーの体格を選ばない。それでいて質感による深みはしっかり“トライアンフのプレミアム感”をまとっており、価格帯以上の高級感を感じさせてくれる。興味深いのは、今回のテスト車両ではオプションとして用意されているSKDAのグラフィックステッカーが施工されていることだ。トライアンフ公認のステッカーキットであり、様々なグラフィックが用意されている。個性を主張するアクセントになるし、着せ替え感覚で外装を変更するのも良いだろう。

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車体を起こし、スターターボタンを押すと、トリプルエンジン特有の独特なサウンドが柔らかく、しかし確かな存在感をもって周囲に響く。三気筒は近年MVアグスタやヤマハも手掛けるカテゴリーとなったが、その中でもトライアンフは長年にわたって熟成を続けてきた“本家”としての経験値を強く感じさせる。アイドリングから回転を上げていく際の粒立ちの細かさ、振動の抑え方、音のリズム、いずれも非常に洗練されている。

クラッチレバーは軽く、操作に気を使う必要がない。レバーをスッと放せば、デイトナ660は滑らかに、まるで抵抗を感じさせないかのように走り出してくれる。セパレートハンドルではあるものの、手首に負担を強いるほどの前傾ではなく、自然な前荷重で車体をコントロールできる。結果として、交通量の多い市街地や入り組んだ路地でも神経質になる場面がなく、ストレスをほとんど感じない。“フルカウルスポーツ=街中が苦手”という固定観念がこのモデルには通用しないのだ。

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エンジンやタイヤが温まり、ステージを高速道路へ移すと、デイトナ660の本領がさらに鮮明になる。0–100km/hを3秒台で駆け抜ける加速性能はスペック以上の俊敏さを感じさせ、スロットルを開ければ回転上昇は軽やかで、どの回転域からでも素直に力が湧き上がる。街中から高速巡航まで一貫して扱いやすいフラットなトルクカーブは、このエンジンの美点を最も分かりやすく示す要素だ。

さらに、トライデント660をベースとしつつ剛性バランスを最適化したフレームは、直進安定性とコーナリング性能の両立が絶妙。高速域でのレーンチェンジは驚くほど軽く、車体の反応は実に素直だ。ライダーが思い描いたラインにスッと乗り、修正舵を必要としないままコーナーに吸い込まれていく。この“安心してスピードを乗せられる感覚”はスポーツモデルとして重要な資質であり、デイトナ660の芯の強さを随所で感じられるポイントでもある。

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こうした総合的なバランスの良さは、ライダーのスキルを問わず「扱えるスポーツモデル」という最大の魅力につながっている。頑張って速く走らせるのではなく、自然体のまま振り回せてしまう――。そんな懐の深さこそ、デイトナ660のキャラクターを象徴する要素だ。

郊外へ足を延ばし、ワインディングロードへ入ると、その魅力はさらに色濃くなる。SHOWA製サスペンションとNISSIN製キャリパーといった日本が誇るパーツ群で構成された足まわりは、しなやかさと剛性感を同時に備え、路面の情報をきちんと伝えながらも不快な突き上げとは無縁。しっかりとしたトルクを発生するエンジンとの相性も抜群で、水を得た魚のようにテンポ良く次々とコーナーをパスしていくことができる。

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こういってはなんだが、あまりに小手先の入力だけで自在に走らせられるため、ついつい“つっかけサンダル”のような軽い感覚で扱ってしまいがちである。しかし、その扱いやすさの奥には、デイトナ660の真価を引き出すための“ツボ”が確かに存在する。

先述の通り、ハンドルは低すぎないが、やや遠めにセットされている。本気でスポーツライディングをしようとすると、着座位置を少し後ろ気味にする必要があり、そのぶんハンドルはさらに遠く感じられる。しかし下半身でしっかり車体をホールドすれば、ほぼセルフステアでスムーズに回頭していく。この挙動はまさにスポーツバイクの基本そのものであり、言わば“走り方を教えてくれる教材”としての側面も持ち合わせている。

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エンジンも高回転までしっかり使い切ると、660とは思えないほどの伸びやかなフィーリングを見せ、さらに走りの次元が一段上がる。そうなれば、自然と「サーキットでも走ってみたい」という欲求が湧いてくるはずだ。

かつてのデイトナ675最終期は、高性能ゆえに速さを引き出すためのスキルを強く要求する側面があった。対してデイトナ660は、スポーツバイク入門者をしっかり受け止めながら、意欲に応じて着実に成長させてくれる懐の深さを備えている。

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ミドルクラスのフルカウルスポーツとして、特にストリートを主軸に楽しむライダーにとって、デイトナ660は非常に完成度の高い一台だ。扱いやすさとスポーツ性の絶妙なバランスが、日常からワインディングまで確かな満足感をもたらしてくれるだろう。

ここで一つ私の予言を記しておこう。それはデイトナ800の誕生だ。今期タイガースポーツで660/800が用意されたこと、そしてつい先日トライデント800が発表された流れを踏まえると、もしかすると、そう先の話ではないかもしれない。その心臓部には、かのMoto2に供給されたエンジンのパワートレーンが採用されるはずだ。となると、デイトナ675の再来か!? それもまた選択肢の一つとして楽しみにしている。

トライアンフ デイトナ660 詳細写真

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デイトナ660用にチューンされた659cc水冷並列3気筒エンジンを搭載。最高出力95PS、最大トルク69Nmを発生し、低回転から高回転まで一貫してスムーズな加速を実現。独自のトリプルサウンドと扱いやすいトルク特性が特徴で、街乗りからワインディングまで幅広く対応する。
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フロントにはSHOWA製41mm倒立SFF-BPフォークを採用し、しなやかな作動性と高い路面追従性を確保。ブレーキはNISSIN製4ピストンラジアルマウントキャリパー+310mmダブルディスクを装備。120/70ZR17タイヤと合わせ、安定した制動力と軽快なハンドリングを実現する。
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LEDヘッドライトを中心に、フロント中央には空気流入を促す機能的なセンターインテークを配置。ウインドスクリーンは整流効果を高めつつコンパクトに仕上げられ、スポーツモデルらしいシャープなシルエットを形成している。
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セパレートハンドルはトップブリッジ上に配置され、前傾が強すぎない自然なポジションを確保。左側スイッチボックスは、車両機能に加えスマートフォン連携機能の操作にも対応し、画面切り替えや各種モード設定を直感的に行える。
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メーターディスプレイはTFTとLCDを組み合わせたハイブリッド構成で、視認性と情報量のバランスに優れる。走行モードやトリップ情報、ギヤポジションなどを明確に表示し、スマートフォン連携時はナビ情報やメディア操作も可能。
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ステップはやや後方かつ適度に高めにセットされ、スポーティなライディングポジションを実現。ヒールプレートはコンパクトであるが位置がよく、車体を抑え込みやすい。クイックシフターは標準装備ではなくオプション設定となっている。
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リアはスチール製スイングアームを採用し、剛性と軽量化を両立。リアタイヤは160/60ZR17サイズで高い接地感を確保。マフラーはショートタイプで、デザイン性を損なわず排気効率を最適化。全体のバランスに優れ、安定した旋回性を実現する。
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テールカウルはコンパクトなデザインで、LEDブレーキランプをインサートしている。ウインカーも支持するライセンスプレートホルダーには、フェンダー的な役割も持たせている。視認性と機能性を両立し、スポーティなフォルムを維持している。
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ライダーシート高は815mmで、幅・形状ともフィッティングを重視。パッセンジャーシートはライダー側と独立したセパレートタイプ。スポーティなデザインを維持しつつ、二人乗りも可能。シートは適度なクッション性を備えており、長時間走行も快適。
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リアはSHOWA製モノショックを採用し、プリロード調整機構付き。130mmのトラベル量を持ち、路面追従性を確保し、両持ち式スイングアームと組み合わせて安定した旋回性能を実現。シンプルな構造によりメンテナンス性も高い。
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パッセンジャーシート下には、車検証などの書類程度は収められるものの、ほとんどユーティリティスペースが残されていない。車載工具を使うことでライダーシートを外すことができるが、そこもぎりぎりETC車載器が収まるかどうかだ。

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