VIRGIN TRIUMPH | T140ボンネでスタートしたトラ最速レーサーへの道 vol.02 小沢 和之さんのコラム

T140ボンネでスタートしたトラ最速レーサーへの道 vol.02

  • 掲載日/2014年11月14日
  • 写真・文/小沢 和之(ライター)

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トライアンフを購入した1982年当時は、今と違ってバイクに乗る人がすごく多くて、各地で行われていた大小様々なレースはどこも満員御礼状態。もちろんバイク人口の平均年齢も今よりは確実に低かったはず。現にワタシのまわりにも同世代のライダーがたくさんいたし、週末ツーリングに行けば、駐車場にはいろんなバイクが溢れていました。

当時のバイク仲間は学生時代からの友達や、会社に入ってから知り合った人達が中心で、まだトラ乗りや旧車に乗るライダーは少なく、仲間でツーリングに行くときは少し浮いた状態でした(笑)。

東京に住んでいると奥多摩や箱根が身近なツーリングコースで、何度も何度も通いました。けど“走り屋”って感じではないので、いつものコースを四季折々の景色を楽しみながらノンビリと走り、膝スリなんてしたことありません(今もね)。

ツーリングに行けば自然とライダー同士で話が始まりますが、ここでもトライアンフに乗る人と巡り会う事はほとんどありませんでした。トライアンフを購入したショップも専門店ではなかったし、当時は今のように容易に情報を入手する手だては無かった時代ですから、いつまで経っても“トラ友”が出来ない…。唯一の情報入手手段は愛読していた『別冊モーターサイクリスト』のイベント情報欄。毎月15日になると必ず書店に行き、この雑誌を入手して、先ず目をやるのはイベント情報ページと売買欄。行ける範囲で旧車のイベントや、その類のレースがあればサーキットに行っていました。

まだまだトライアンフに対して知識が浅く(今でも大して知識はありませんが)、自分のボンネがトライアンフ全体の中でどんな位置付けなのかも知りません。まさに“バージン・トライアンフな時代”です。いろいろわかっていくなかで、一番ショックだったのが、多くのトラ乗り達の口から発せられる「やっぱりトラは650だよね、それも別体じゃなきゃトライアンフの良さはわからないよね」と言う意味深な言葉…。

どこの世界にも否定派と肯定派が存在するものですが、ことトライアンフの世界には750のトラを肯定する人はいませんでした。トラを知る人から言わせると「あ?ナナハンなんだ?」的な発言が多く、ワタシのトラを暖かく受け入れてくれる人は、バイクの事は知っていてもトラの事には詳しくない人ばかりでした。

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初めて開催された『バトルオブザツイン』でも750のトラはいたかどうか?その頃大人気だった旧車の祭典『タイムトネンル』には年式的にエントリーは無理。トライアンフが集まりそうなイベントに行っても、やっぱりナナハン仲間はいませんでした。実際、国内で新車の750ccのトライアンフが売れた台数ってどれくらいあったのだろう?ましてやワタシが購入した1982年の国内販売数ってどうなの?たぶん数十台ってとこだったんだろうな?。となると、生き残っている国内販売のトラは数える程って事か…。

1983年にトライアンフの生産拠点だったメリデン工場が閉鎖されてから約30年。ワタシが新車購入したのがその頃なわけだから、今じゃナナハントラもようやく旧車の仲間入り(かな?)。当時カタチは同じでもなんとなくトラ乗りから敬遠されていたナナハンも、今の時代ともなれば単なる古めかしいバイクに見える(その当時もカタチだけは古かった)。トラの良さを語らせれば、そこにはそれぞれの言い分があって、またナナハン否定論を聞かれるかもしれませんが、ワタシはワタシのトラが一番好き。長年連れ添った気心の知れた友人のような存在ですからね。

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先日、山中湖畔で開催された『TRIUMPH RIOT』というイベントは、オールドトライアンフが集まるイベントとしては国内最大、と言うか唯一!今年で4回目となるこのイベントに、マイナナハントラ(レース仕様)と、650の街乗りトラの2台をトランポに積んで参加して来ました。

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紅葉間もない山中湖畔に100台以上のトラが集結。オリジナルからチョッパースタイルまで、個性豊かな“旧トラ”を見る事が出来るので、トラ乗りはもとより個性派バイカーに人気のイベントとなっている。1台1台をゆっくりと眺めて行くと、オーナーの気合いが伝わって来ます。そしてここでは650であっても750であっても、同じトライアンフとしてそれぞれがリスペクトされ、隔たりなんてありません、とてもいい空気が流れている。皆がトラ好き、それが居心地の良さを物語っているんですね。

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メリデン工場閉鎖後、1985年から3年間、ライセンス契約で復活したトライアンフを含め、旧トラの人気はここ数年若いバイク乗りの間に広がりつつあります。もちろんナナハントラも彼らにしてみれば立派なビンテージバイクなわけで、“トラ=(イコール)650”や、“別体”という意識は薄いようです。バイク人口が減少してライダーの平均年齢が50歳を超えているいま、この旧トラが少しでもバイク人口拡大&平均年齢の引き下げになればいいのですが…。

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いやいや、トラに限らず、バイクの楽しさをみんなに知ってもらえれば一番嬉しい事なんですよね。

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