VIRGIN TRIUMPH | 4-2 小気味よいLWSやトラインフが生まれた理由 立花 啓毅さんのコラム

4-2 小気味よいLWSやトラインフが生まれた理由

  • 掲載日/2016年02月05日
  • 写真・文/立花 啓毅(商品開発コンサルタント)

イギリスの「食」は相変わらずイマイチだが、英国の奥深さが好きで、何かと理由をつけては行っている。少し前にも王侯貴族のスパリゾートとして知られるロイヤル・タンブリッヂウェルズへ行ってきた。ロンドンから南東に2時間のところだ。

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レンタカーを借りて走り出すと、気持ちの良い景色がずーっと続くため、わずか数日で1,000キロも走った。

その道中のほとんどが、八ヶ岳の国立公園のような景観の中に古いレンガ造りの家々が点在する。その美しさは途切れることがない。道はのどかな丘陵をゆっくり登っては、また降りる。両脇から伸びた樹木が頭上でアーチを作り、その緑のトンネルの中を、木漏れ日を浴びながら走る。ここではオープン・エアーが実に気持ち良く、まさにLWS(ライトウエイトスポーツ)や、トライアンフのような小気味よいバイクが生まれたことを改めて実感した。

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道路は信号が少なく、ロータリーが多い。一説によると、ロータリーは信号によるON/OFFとは違い、お互いの動きを確認するため、事故が少ないという。また停まらないため燃費もいい。アメリカのように直線道路をひたすら走り、信号でコントロールされるのとは大違いだ。

家々は、かつての日本がそうであったように、刈り揃えられた生け垣で囲われている。ガレージは…と見ると、プラスチックの波板ではなく、同じようにレンガが積まれている。イギリスでもプラスチックの波板のほうが安いはずだが、そんな家は一軒も目にすることはなかった。もちろん、洗濯物も看板も視界にはいらない。こうした景観の裏には、厳しい景観条例があるようだ。

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英国にいると、日本とは全く違う生活の深さを感じる。その違いは、日々の生活を楽しみ、また文化を大切にしているように思う。先人たちが作ったものを大切にしている姿は「美のある暮らし」を楽しんでいるかのようだ。

そんな英国に憧れ、リタイヤ後に永住するとしたらどこが良いか、現地の女性に尋ねてみた。すると彼女は、ブライトンが良いと言う。ロンドンまで急行で1時間だし、海に面していて気候も良く、なにしろ骨董屋とヒストリックレースのブライトンランまで楽しめるとか。

その相談した40代中頃と思われる女性は「どうせ家を使うのは年に2?3ヶ月でしょ? それだったら、その家をB&B(ベッド&ブレックファスト付き民宿)にして貸したらどうかしら? 3,000万ぐらいで購入しても充分ペイできるわよ。いや待って! あそこは学生街だから、学生に貸して長い夏休みに使う手もあるわよ。学生には、夏休みは自分が使うと言っておけばいいのよ」と親切に教えてくれた。

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美人に勧められたからではないが、気になってタンブリッジウェルズの不動産屋を何軒かのぞいてみた。すると、新しい家は2,500万ぐらいからあるのに対して、サッチド・コテージと呼ばれる茅葺き屋根の風情ある家は、1億円出しても無い。聞くところによると、今や茅葺き職人がいなくて大変なのだそうだ。

また価格は、土地の広さに関係なく、古い家を大切に手入れしているかどうかで決まるというのも面白い。ちなみに、自動車の税金も日本とは真逆で、古いクルマはタダになる。

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我々は、全てをバリュー・フォー・マネーで判断してきたが、彼らは別の価値観の中で、ゆったりと暮らしている。現地の人の話では、給料が高いわけではなく、消費税は20%だし、給料の46%は税金に持っていかれると言う。それでもお金には換算できない、穏やかな暮らしがある。

それは良いモノを何年も、いや親から子へ何世代も使い続ける時間がなせる贅沢である。これが彼らの生活、すなわち「生活態度」だと思う。日本は「生活程度」では世界トップクラスだが、生活態度、暮らし方では、英国にはかなわない。

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今回の英国の旅で、「日本は先進7か国のひとつだが、住環境は発展途上国」であることを思い知らされた。

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