VIRGIN TRIUMPH | 番外編 3-2 連戦連勝はチーム力のおかげ 立花 啓毅さんのコラム

番外編 3-2 連戦連勝はチーム力のおかげ

  • 掲載日/2015年12月25日
  • 写真・文/立花 啓毅(商品開発コンサルタント)

クラシックバイクのレースは、完璧に準備したつもりでも必ず何らかのトラブルに見舞われる。それはそうだ。50年以上も前のバイクをカリカリにチューンして全開でぶっ飛ばすのだから、トラブルが起きてもおかしくない。それだけでなく、予選で転倒することもあるためピットは大忙しだ。

そんなとき、どんな問題が起きても速攻で対応してくれるのが、我がチームの横川さんと竹田さんだ。1台ならまだしも、息子の方も同時にトラブったりすると、ピットは火が付いたようになる。

立花啓毅さんのコラムの画像

写真中央が息子のヒロミチ、右が横川さん、左が竹田さんだ。横川さんをご存知の方は多いと思うが、彼は1984年のパリ・ダカール・ラリーにホンダXR250で出場し、クラス優勝を果した。それ以来、パジェロやニッサン サファリで毎年走り続け、さらにはロシアン・ラリーやレイドカムロの主催者だった。

彼がパリ・ダカで成績を残してきたのは、性格が飄々(ひょうひょう)とし、何ごとにも動じないからだと思う。かと言って理性でコントロールしている風もなく、本能のおもむくままだ。だから過酷なパリ・ダカを独りで走り切るのだと思った。そんな経歴の持ち主だから、どんな問題が起きても何とか走れるようにしてくれる。

一方「飄々型の横川さん」に対して、竹田さんは「臨機応変型」で、例え部品がなくてもゴミ箱などから空き缶や雨どいの金具を持ってきて応急処置をしてしまう。またクラシックバイクに精通しているため、全てが的を付いている。

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写真は今回のサイドウェイ・トロフィーで、DBDの排気管がバッサリ折れてしまったものだ。竹田さんは早速、コーヒーの空き缶を拾ってきてぐるりと巻き付け、針金で固定した。

横川さんとの連係プレーも冴えていて、排気管と空き缶の密着を良くするため、間にシーリングテープを巻いた。排気系は0.6ミリの鉄板を丸めてパイプにしているため、チタンよりも軽いが振動で亀裂が入ってしまうのだ。

また竹田さんの凄いところは、ツナギのポケットから「四次元ポケット」の如く欲しいものが次々に出てくることだ。これは本当に助かる。例えグリッドに着いた後でも、走って来てちょちょっと手直ししてくれる。

そんな彼らの力は計り知れず、転倒してステップとチェンジレバーが折れ、排気管が曲がっても、決勝までには必ず走れるようにしてくれる。スペアパーツが無くても、だ。

レースで連戦連勝を続けられているのは彼らの力があるからで、まさに最強のチームである。問題は運転手にあり、私のタイム(ツクバ)はピーク時より、なんと5秒も遅い。これを歳のせいにはしたくない。

レースに必要なのは動体視力や瞬発力、集中力など色々あるが、持久力がないと集中も途切れてしまう。そこでジムに通ってみたが、どうも性に合わない。近くの公園でランニングをしたり、鉄棒にぶらさがったり、平衡感覚を養うため幅3センチの土留め板の上を歩いたりしている。

すると「おじちゃんすごいね!」と言って、子供が真似をしてついて来る。これはこれでなかなか楽しく、逆上がりを教えたりもしている。隣のグランドでは、中学生のサッカーチームが基礎体力を養うメニューをこなしている。見ると持久力と瞬発力を鍛えるにはぴったりの内容だった。その中学生の後ろに付いて走ってみると、見るとやるとは大違い。息が「ゼーゼー」言って距離は開くばかり…。73歳の身体を若い連中に近づけるのは、そう簡単ではない。

ではそうやって頑張った結果がレースに繋がったかと言うと、これまた難しく、前々のレースでは、最終コーナーでハイサイドを食らって大転倒してしまった。

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チーム総動員でバイクを直し、私は痛み止めを飲んで予選を何とか通過。しかし決勝前になってもまだ痛みが治まらない。薬の量を増やしてバイクにまたがり、なんとか5位に食い込むことができた。同じクラスに出場した息子の方は、なんとベロセットでベストタイムを叩き出し、お立ち台の真ん中だった。

家に帰っても痛むので医者に行ったら、肋骨が3本折れていた。アバラはかすり傷のようなものだが、この1年で転倒したのはこれで3回目だ。

このシーズンオフは身体を鍛えるメニューを増やし、バイクにも手を加え、来シーズンに備えようと思っている。

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