VIRGIN TRIUMPH | 1880-1940年代 Vol.03 トライアンフ ヒストリー

1880-1940年代 Vol.03

不況を乗り越えるために
安価な大衆車を販売

第1次世界大戦が終わり、1920年代になるとイギリスは不景気に見舞われる。インフレーションによる物価の上昇、労働者による全国的なゼネラル・ストライキ、相次ぐ企業の倒産など、経済状態は悪化の一途を辿った。トライアンフもその影響を受けて販売が低迷。同社に必要なのは不景気でも売れる製品、つまり価格の安いモデルを開発することであった。

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タイプP(1942)

1924年型の『タイプP』はそのような状況を背景に開発、発売されたモデルで、販売価格は42ポンド16.7シリングという、従来の製品からは考えられないほど安い価格設定だった。タイプPは売れに売れ、注文が殺到。工場はフル稼働で生産に追われ、1週間に1,000台を出荷するという新記録を打ち立てた。

タイプPを安く販売できたのは、大幅にコストダウンを図ったためである。そのためモーターサイクルとしての品質は良くはなく、トラブルや故障が頻発し「信頼のトライアンフ」とまで言われた評判は地に堕ちていた。トライアンフは翌1925年、タイプPを改良した『タイプPマークⅡ』を発売し、名誉を挽回しようとしていた。

新しいデザイナー
ヴァル・ペイジを招聘

イギリス国内の景気は良くならないまま時は過ぎ、ついに1929年10月、アメリカはニューヨークの証券市場が大暴落。これが引き金となって、世界大恐慌が発生した。不景気の波は世界中を飲み込み、欧米のモーターサイクルメーカーは軒並み影響を受けていた。

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モデル2/5(1935)

各社は様々な措置を講じて大恐慌を乗り切ろうと必死であった。トライアンフも例外ではなく、新しいデザイン責任者としてヴァル・ペイジを1932年に招聘し、ニューモデルの開発を行っていた。ペイジは優秀なデザイナーで、JAP、アリエルといった名だたるメーカーで活躍し、ヒット作を生み出してきた人物である。

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モデル5/2(1935)

ペイジはトライアンフに新しいラインナップを創設。それはサイドバルブエンジンの350/550ccと、OHV単気筒エンジンの250/350/500cc、そしてOHVバーチカルツインの650ccモデルのニューモデルで構成されていた。これらは“ヴァル・ペイジ・モデル”と呼ばれ、どれもが非常によくできたモーターサイクルであった。この頃に、社名も『トライアンフ・カンパニー・リミテッド』に改めている。

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モデル6/1(1935)

しかしトライアンフの業績は、なかなか好転しなかった。1923年から4輪の自動車の製造販売も始めていた同社だが、多額の資金を投じたにもかかわらず、利益は上がらず低迷していたのである。トライアンフの財政状況は悪化し、影響力の強い銀行との話し合いから、モーターサイクル部門を閉鎖し、工場を売却して自動車の製造に移行するという決定も一時なされた。

自動車部門を売却し
モーターサイクル専門メーカーに

存続が風前の灯火となったトライアンフのモーターサイクル部門だったが、ジョン・ヤング・サングスターという救世主が現れる。彼はアリエルモーターサイクルの創立者、チャールズ・サングスターの息子で、トライアンフと同じように窮乏していたアリエルの経営を立て直したことで知られていた。

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ジョン・ヤング・サングスター

ジョン・サングスターが経営改革を行っていた1920年代のアリエルには、ヴァル・ぺイジがその一員として製品開発に携わっていた。サングスターは後にトライアンフの重要人物となる、エドワード・ターナーをデザイナーとしてアリエルに迎え入れ、ヴァル・ペイジのもとで開発に参加させた。ペイジ、サングスター、そしてターナーの3人がアリエルで共に働いていたことは、後のトライアンフにとって僥倖(ぎょうこう)となるのだった。彼らは苦境に立つトライアンフへ順に招聘され、同社を救う立役者として活躍したからである。

サングスターはトライアンフのモーターサイクル部門と工場を、4万1,000ポンドという破格の価格で譲り受けた。トライアンフは1936年、モーターサイクル部門と自動車部門を分離し、トライアンフはモーターサイクルを専門に生産するメーカーとなった。それに伴い、社名を『トライアンフ・エンジニアリング・カンパニー』としている。これは1906年当時の社名でもある(創業当時の自転車部門はすでに売却されていた)。

販売不振と業績悪化のため、創業者のベットマンは銀行からの意見もあり、代表取締役から重役へ格下げされていたが、サングスターはベットマンを再び代表に就任させ、トライアンフが健在であることを内外に知らしめた。

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