【トライアンフ ロケット3ストーム R 試乗記】ただ流すだけで得られる、特有の背徳感に酔いしれる。
- 掲載日/2026年07月19日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文・写真/小松 男


ヒンクレイでの成功後、挑戦を加速させる中で誕生した怪物
ここ数年、日本国内におけるトライアンフの認知度は、以前にも増して高まっていると強く感じている。国産4大メーカーがひしめく日本市場において、海外メーカーがシェアを拡大していくことは決して容易ではないはずなのだが、トライアンフに関しては魅力的な製品群に恵まれていること、そして英国車ならではの紳士的なキャラクターが、幅広い層のライダーに受け入れられているからなのだと思う。そのような状況の中にあって、今回取り上げるロケット3ストームは、ブランドの中でもひときわ特異な存在だといえるだろう。
初代ロケット3(当時の車名はロケットⅢ)がデビューしたのは、2003年のミラノショー(EICMA)でのことだった。量産市販バイクとして史上最大となる2300cc(正確には2294cc)の縦置きクランクレイアウトを採用した3気筒エンジンという、圧倒的な存在感によって世界中のライダーを震撼させたのである。

1970〜80年代、日本車勢の台頭によってビジネス的にやや苦しい時期を過ごしていたトライアンフは、90年代に拠点をメリデンからヒンクレイへと移す。パーツなどを共有しながら複数モデルの開発を進める「モジュラーコンセプト」を掲げ、そこから誕生した新生トライアンフは多くのライダー層に受け入れられ、見事な復活劇を果たした。ロケット3が登場したのは、まさにその勢いが加速してゆく最中のことだった。
当時のトライアンフは、4気筒エンジンを搭載するモデルを段階的に縮小し、3気筒エンジンと伝統的なバーチカルツインへとラインアップを集約させていく流れの真っ只中にあった。そうした中で、新開発の超ド級エンジンを搭載したロケット3は、まさしく異端な存在。お世辞にも万人受けするモデルとは言い難かったが、唯一無二という他に代えがたい魅力は間違いなく備えており、結果として多くの熱心なファンを生み出すことになった。

そして2019年に新世代モデルが発表され、翌2020年に国内投入。フルモデルチェンジによって排気量は2458ccにまで拡大され、シャシーも新設計となり、走りの面が一層強化されている。さらに2024年にはマイナーチェンジが施され、「ロケット3ストーム」というシリーズ名のもとに展開。現在は「R」と「GT」という2つのキャラクターのモデルが用意されており、今回はそのうちのロケット3ストームRをフィーチャーし試乗インプレをお届けする。
トライアンフ ロケット3ストーム R 特徴
巨大排気量と独特なレイアウトが生み出すこの世で唯一の圧倒的な存在感
ロケット3ストームRの特徴を語る上で欠かせないのが、やはりあの2458ccの直列3気筒エンジンだ。実はこのエンジン、開発初期段階ではここまでの排気量になるとは想定されていなかったという。トライアンフのエンジニアたちは、大排気量エンジンを検討するにあたり、横置き4気筒ではエンジン幅が出過ぎること、そしてVツインは競合他社の領域であることから、縦置きの3気筒という構成にたどり着いた。当初は1600cc程度を目安にしていたというが、開発を進めるうちに「もっと積める」ことが判明し、最終的に2294ccという初代モデルのエンジンが誕生。これが2019年の刷新で2458ccにまで拡大され、現行モデルへと受け継がれている。

この大排気量エンジンを支えるアルミフレームにも触れておきたい。実はロケット3は初代モデルの時代から、この巨大なエンジン自体をフレーム構造の一部、いわゆるストレスメンバーとして組み込むという設計思想を貫いてきた。2019年の刷新で導入された新型アルミフレームは、その考え方を継承しつつ、鋳造パーツと鍛造パーツを組み合わせることで、より高い次元での整合性を獲得。車体剛性を確保しながら軽量化も両立させ、優れたトルクウェイトレシオを実現しているという。

そしてロケット3ストームRならではの特徴が、182PS・225Nmという数値だ。従来モデルから15PS、4Nmの向上を果たしているが、興味深いのは、そのパワーアップの手法である。カムシャフトや吸気系に手を加えたわけではなく、電子制御によってスロットルバルブを完全開放できるようにしたことが最大の要因だという。従来型は耐久性確保のためにあえて出力を抑えていたが、長年の実績データの蓄積により、エンジンのポテンシャルをフルに解放できると判断されたのだ。

足まわりにも余念がない。軽量な10本スポークのアルミ鋳造ホイールを新採用し、バネ下重量を削減。ショーワ製47mm倒立フォークとピギーバックリザーバー付きモノショックが、前後とも減衰力・プリロード調整式で装備される。制動系はブレンボ製キャリパーが受け持ち、コーナリングABS・トラクションコントロール、4種のライディングモードなど電子制御も充実している。
それでは、実際にロケット3ストームRを走らせ、感触を探っていくことにしよう。

トライアンフ ロケット3ストーム R 試乗インプレッション
乗らずに死ねるか!
病みつきトルク三昧を、丁寧に、しかし大胆に扱え!!
最初に白状しておこう。私はロケット3が好物である。だからインプレッションも、多少甘めになってしまうことがあるかもしれない。ただこのモデルは、そもそもライバル不在で比較対象となる存在が他に無いため、その点はご了承いただきたい。
初代モデルの登場以来、私は定期的にロケット3に触れてきた。直近では2021年と2023年にも試乗を行い、記事にしている。ただしそれらはいずれもツーリング志向の強いGTグレードであり、今回のRとはキャラクターの方向性がやや異なる。加えて、現行の「ロケット3ストーム」へと刷新された2024年以降のモデルに触れるのは、今回が初めてとなる。

まず実車を前にし、外観をじっくりと眺めてみた。フレーム鍛造部、スイングアームガード、フォークロワー、ハンドルバークランプに至るまで、随所にブラックアルマイト仕上げが施されている。これまで限定モデルでのみ展開し好評を博してきたブラックアウト仕様を、標準装備として全面展開した格好だ。発表当時、トライアンフのチーフ・コマーシャル・オフィサーであるポール・ストラウド氏が「2019年以来ロケット3は世界で18,000台以上を販売してきた。顧客の声を受け、さらなるパワーとトルク、俊敏性、そしてより暗く落ち着いた佇まいを与えることにした」と語っていたことを、ふと思い出した。

車両に跨り、エンジンを始動して走り出す。発進の瞬間から、濃厚なトルクがライダーを包み込む。ストームとなって、従来モデルではあえて抑えられていたポテンシャルが解放され、最大トルクは225Nmにまで引き上げられた。しかもその発生回転数はわずか4000rpmと、日常的に使う領域だ。右手のスロットル操作ひとつで、ゆったりとしたクルージングから、目の前の景色を瞬時に置き去りにするようなロケット加速まで、思いのままに楽しむことができる。
この圧倒的な加速感は、初代モデルから受け継がれるロケット3の持ち味であり、ライダーを惹きつけてやまない最大の魅力でもある。振り返れば初代モデルは、現行ほどのパフォーマンスを持たなかったにもかかわらず、シャシー剛性とのバランスの違いからか、スロットルを開くこと自体に一種の恐怖を覚えるほどの獰猛さがあった。
対して現行のロケット3ストームRは、エンジン性能、シャシー、足まわりのすべてが熟成された上、トラクションコントロールやライディングモードも備わっている。その結果、多くのライダーが不安なく強烈な加速を引き出せるパッケージへと仕上がっている。

とはいえ、荒々しさが失われたわけではない。大柄なボディワークは、乗り手を選ぶ。シッティングポジション、やや遠めのハンドルとステップの三点が織りなすダイナミックなライディングポジションの中で、真のパフォーマンスを引き出すには、ハンドルに覆いかぶさるように上体を寄せてコントロールする必要があり、それなりのフィジカルも求められる。ちなみにGTグレードはややルーズなライディングポジションが与えられているが、アグレッシブに操りたいのであれば、Rのポジションの方が適していると感じた。

また、シャシー剛性は最適化されているものの、ロングホイールベース、縦置きレイアウトの大排気量エンジン、シャフトドライブという構成上、車体の“立ち”の強さは健在だ。だからコーナーで車体を寝かせた状態からスロットルを開けると、アンダーステア方向に流れていく感触がある。前後サスペンションにはアジャスト機構が備わっているので、自分好みのセッティングに詰めていくことは可能だが、こうした凶暴さと向き合いながら乗りこなすという行為そのものが、「ただ走らせているだけなのに、背徳感を覚える」と私が言う所以なのである。

ライディングモードの選択も、ライダーが求める気分を的確に突いてくる。ロードモードでは高回転域まで気持ちよく回り、エンジンの伸びやかさを堪能できる。パフォーマンスを全開放するスポーツモードを選べば、他に類を見ない大トルクを心ゆくまで満喫できるだろう。
ロケット3ストームを操るときは、丁寧に、しかし大胆にあれ。そうすれば、他のどんなモデルでも決して味わうことのできない、悦楽的な快感を得られる。
現在もこのようなモデルを新車で手に入れることができるという事実に、我々は恵まれているものだと感じずにいられない。
トライアンフ ロケット3ストーム R 詳細写真














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