【トライアンフ スラクストン400 試乗記】見た目だけで終わらない。これにてシングルスポーツの新章開幕。
- 掲載日/2026年06月18日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文・写真/小松 男


由緒あるスポーツモデルの証『スラクストン』という名が与えられた有望株
「Thruxton(スラクストン)」。皆さんは、この名を聞いて何を思い浮かべるだろうか。トライアンフのモダンクラシックシリーズにおけるカフェレーサーモデル――それは間違いない。だが、そのルーツを紐解いていくと、この名前に込められたトライアンフのスポーツスピリットが見えてくる。
1959年、トライアンフは新型並列2気筒エンジンを搭載したT120ボンネビルを発表した。その名は、アメリカ・ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツで樹立した速度記録に由来している。また、「120」という数字は最高速度120mph(約193km/h)を意味するとされ、当時の高性能スポーツモデルの象徴として人気を集めた。

そのT120ボンネビルは各地のレースでも活躍し、1960年代半ばにはレース参戦用ホモロゲーションモデルとして「Thruxton Bonneville(スラクストン・ボンネビル)」が登場する。生産台数は約50台とされ、ベース車両を大幅にチューニングした特別なモデルだった。
ちなみに「スラクストン」の名は、イギリス・ハンプシャー州にあるスラクストン・サーキットに由来する。トライアンフは同地で開催されたスラクストン500耐久レースで上位を独占するなど輝かしい戦績を収めている。

一方で1960年代のイギリスでは、ボンネビルをはじめとする市販車をベースに、セパレートハンドルやシングルシート、小型フェアリングなどを装着した「カフェレーサー」スタイルが流行する。後年のスラクストンシリーズは、こうした当時のカスタムカルチャーとレースマシンのイメージを融合させたモデルとして発展していった。
2004年にはスラクストン900が登場。さらに排気量を拡大したスラクストン1200へと進化し、トライアンフを代表するモダンクラシックスポーツとして確固たる地位を築いてきた。
そして2026年、新たにスラクストン400が日本上陸を果たした。歴代スラクストンがすべてバーチカルツインエンジンを搭載していたのに対し、今回は398ccの単気筒エンジンを採用。果たしてその走りは、由緒あるスラクストンの名にふさわしいものとなっているのだろうか。
トライアンフ スラクストン400 特徴
エントリーモデルという言葉では表せない400シリーズだけの魅力
スラクストン400を理解するには、まず400シリーズ誕生の背景を知る必要がある。トライアンフが目指したのは、単なる排気量ダウン版ではない。ブランドの世界観や走りの楽しさを維持しながら、より幅広いライダーへ門戸を開く新世代モデルの開発だった。
その第一弾として登場したのがスピード400とスクランブラー400Xである。両車は398cc水冷単気筒エンジンやハイブリッドスパイン/ペリメーターフレームなどの基本構成を共有しながらも、ロードスポーツとスクランブラーという異なる個性を与えられていた。

そして今回登場したスラクストン400は、そのプラットフォームをベースに、新たなカフェレーサーモデルとして誕生した一台である。
一般的にカフェレーサーといえば、クリップオンハンドルやバックステップ、小型フェアリング、シングルシートなどを備えたスポーツ志向のスタイルを指すことが多い。スラクストン400もまた、その伝統的な定義をしっかりと踏襲。ロケットカウルを思わせるフロントフェアリングをはじめ、その佇まいからもカフェレーサーとしてのアイデンティティが伝わってくる。

しかし、その表現手法は決して懐古的ではない。エッジの効いたフェアリングのデザインやキャストホイール、バーエンドミラーなどのディテールは現代的にまとめられており、全体の印象はクラシックというよりモダンだ。
そうなると気になってくるのは、その走りである。果たしてスラクストン400は、由緒あるその名にふさわしいスポーツ性能を備えているのだろうか。早速実車に触れてみることにした。

トライアンフ スラクストン400 試乗インプレッション
パフォーマンスもクールでスマート
これは己の腕を磨いてくれるバディだ
本音を言えば、いま片付けなければならない仕事は山積みだ。しかし、スラクストン400の感触が想像以上に良かったため、そのことを、できるだけ早く伝えたいと思いモニターに向かっている。

スラクストン400を目の前にして、最初に感じたことは“細身”だということだった。シート高は795mmと、さほど低いわけではないが、コンパクトで細い車体であるため、足つき性は良い。
エンジンを始動するとタタタタッとシングルエンジン特有の歯切れのよいサウンドが響き渡る。

ハンドルに手を伸ばし、ギアを入れ、走り出す。
トライアンフ400シリーズすべてのモデルで言えることだが、低回転域でのトルクがあり良く粘る。だから不用意なエンストの心配もないし、スクランブラーのような未舗装路走行も想定したモデルでもマッチングが良い。
そんな400シリーズの中で、スラクストン400は、どの回転域でもスムーズかつ、しっかりとしたパワー感が得られるという印象だ。
スラクストン400の前に試乗テストを行ったトラッカー400の方が低中回転域をより重視した味付けだったことも付け加えておこう。

スラクストン400は大きすぎず、かといって小さすぎず、車体のサイズ感が良いため、交差点の多い都市部や狭い路地などでも使い勝手が良い。
ロードスポーツ志向のキャラクターに合わせたセッティングが施されていることもあり、高回転域までよどみなくエンジンが吹け上がる。だから高速道路も得意ステージとなる。フェアリングは想像以上に防風効果が高く、巡航時の疲労軽減にも貢献している。
ただしカフェレーサーの定石に沿っていることもあり、ライディングポジションはタイトでアグレッシブである。
クリップオンハンドルの垂れ角こそきつくはないが、燃料タンクの前後長が長めに設定されていることで、おのずと前傾姿勢となり、ステップ位置は高め、さらにシートが後方に向かうにつれ高くなっている。
だから、意識してお腹を引っ込めて背筋を使い、ハンドルに力を入れないようにして車体を操る。そうすると、素晴らしくスポーティで気持ちの良い走りをもたらしてくれる。

ワインディングロードに持ち込めば、そこではピュアなスポーツライディングの世界が待ち受けている。
細身のタンクを膝でしっかりと抑え込むようにリーンアングルを作ると、ごく自然にフロントタイヤが内側へと吸い込まれていく。
そこに過剰ではなく不足にも感じない、ライダーが引き出すのにちょうど具合の良いパワーが合わさると、まるで泳ぐかのようにコーナーをパスすることが出来るのだ。
スラクストン400は、そのスタイリングに惚れこんでオーナーになるという方も多いと思うが、ぜひとも走りの面に一歩踏み込んでみてほしい。

余談だが、今回スラクストン400に触れて真っ先に思い浮かんだのがSRX400だった。しかし実際に走らせてみると、それは単なる代替ではない。高回転まで気持ちよく回るエンジンや現代的な車体構成を含め、むしろ現代版シングルスポーツの理想形に近い存在だと感じた。
スラクストン400は、免許を取得して最初のモデルとしても、リターンライダーの肩慣らしとしても、クルーザーやツアラーモデルオーナーのセカンドバイクとしても、魅力的なシングルスポーツバイクだと太鼓判を押す。
トライアンフ スラクストン400 詳細写真












関連する記事
-
試乗インプレッション
トライアンフ ボンネビルT100










