トライアンフ「スクランブラー1200」国際発表会レポート クラスを超えた新世代スクランブラーの誕生だ!
- 掲載日/2018年11月01日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・写真・文/佐川 健太郎

10月24日、トライアンフの最新作「スクランブラー1200XC/XE」のプレス発表会がイギリス・ロンドンで開催された。現地からのレポートをお届けしたい。世界初公開の舞台となったロンドン郊外の巨大なメッセ、「EXCEL LONDON」には世界中から報道陣やディーラー関係者が集まり大変な盛り上がり様。このニューモデルへの人々の関心の高さがうかがえる。
ADVがライバル
「スクランブラー1200」はトライアンフ伝統のスクランブラーのスタイルと現代のアドベンチャーモデルが持つ全性能を融合した新時代のデュアルパーパスモデルとして開発された。開発が始まったのは水冷エンジンとなった新型ボンネビルシリーズがデビューした2016年で、T120の伝統的なスタイルとストリートスクランブラーの軽快な走りを融合した本格的なパフォーマンスを持った次世代のスクランブラーを目指したという。その意味で、競合として想定したのは既にマーケットにある他メーカーの“スクランブラー“と名が付くモデルではなくアドベンチャー系とのこと。トライアンフはそれを“REAL DEAL=本物”という言葉で表現していることから、かなり気合の入ったモデルということが分かる。
バーチカルツイン史上最強レベル
エンジンはボンネビルT120系の高トルク型水冷並列2気筒SOHC8バルブ1200ccをベースに専用チューニングを施すことで最高出力90ps/7400rpmを実現。これはT120から12.5%アップの数値であり、2019モデルのストリートスクランブラー比では38%も向上しているとのこと。まさにトライアンフのバーチカルツイン史上最強レベルのスペックが与えられていると言えるだろう。モデルバリエーションとしては2タイプが用意され、スタンダードモデルの位置付けの「XC」は オンロードからオフロードまであらゆる条件下で優れた走行性能を発揮する仕様。一方、上級モデルの「XE」はその名のとおり、さらにエクストリームな走りを可能にする究極のオフロード性能が与えられている。
60年代テイストを最新テクノで再現
スクランブラー1200はデザイン的には既存の「ストリートスクランブラー」より古風で、60年代に活躍したTR6などのオリジナルスクランブラーを現代的に解釈したネオクラシカルだが、ディテールには現代の高性能パーツが組み込まれ、さらに中身には最新の電子制御が投入されているのが特徴となっている。
特に「XE」にはオフロードプロを含む6種類のライディングモードや、路面状況に応じて介入度を自動的に最適化するオプティマイズド・コーナリング・ABSやオプティマイズド・コーナリング・トラクションコントロールを装備。また両モデルとも標準でトルクアシストクラッチやクルーズコントロール、キーレスイグニッションなどの他、世界初のモーターサイクル内蔵型GoPro制御システムやターンバイターンナビゲーションシステム、Bluetooth接続による通話や音楽機能も装備するなど、現行のトライアンフの中でも最先端のセーフティと機能性が盛り込まれたモデルに仕上がっている。
本物のグレード感にこだわった
また、実車を見てまず感じたのは高級感のある作り。一見アナログ風に表現された第二世代の新型TFTフルカラーディスプレイや、ステンレス製ベルトで飾られたシームレスタンク、ブラシ仕上げのアルミ製前後フェンダーや素材感にこだわった右2本出しハイマフラー、専用のアルミ製スイングアームなど、新たにデザインされたこだわりのパーツが全身に散りばめられている。佇まいからもまさに「本物」のグレード感がヒシヒシと伝わってくるのだ。
タイガーを凌ぐオフロード性能か!?
そして今回、トライアンフの開発陣が特に強調していたのがオフロード性能だ。それを証明する足まわりは、ADV仕様の21インチチューブレスタイヤ(ピレリ・スコーピオンラリー)に前後フルアジャスタブル式サスペンションを標準装備。フロントはSHOWA製倒立タイプ、リヤはスタイルにこだわり敢えてOHLINS製ツインショックとしているが特筆すべきはそのストローク量。上級版の「XE」は前後250mm(「XC」でも前後200mm)という従来のカテゴリーを超えたホイールトラベル量を確保。ちなみにアドベンチャー系で最も足の長いタイガー800XCAでさえ、フロント220mm、リヤ215mmということからもその本気度が伝わってくるはずだ。
スリムな車体で足着きも有利
気になる足着き性については、身長179cmの筆者で「XC」(シート高840mm)はヒザが少し曲げられる余裕があり、「XE」(同870mm) は少し踵が浮き気味になるが、一般的なアドベンチャー系モデルよりは足着きは良いと思われる。ちなみにタイガー800XCA(同840~860mm)に比べると車体がスリムな分、足着きも有利かもしれない。また、ハンドル位置は高めで幅広く、シートは前後に長くフラット形状に作られているなど、オフロード走行での操縦性を考慮したライポジになっているようだ。
模擬レースに大興奮、バハ1000参戦も
各国のプレス関係者やディーラーを招待した夜のローンチ・パーティでは、詰めかけた多くの観客によって特設会場は埋め尽くされた。純正クロージングの即売やロンドン名物のローカルフードの露店が立ち並び音楽フェスのような雰囲気の中、DJパフォーマンスで盛り上がるステージ上に新型スクランブラー1200が駆け上がるとボルテージは最高潮に。その場で今年のバハ1000への参戦もアナウンスされると大歓声が沸き起こった。英国のタレントや著名人も会場入りしていたようで、現地でのトライアンフの人気の高さをあらためて感じた。
極めつけはスクランブラー1200による模擬レース。会場内に作られた特設ダートコースでは、各国のジャーナリストや関係者などが参加してトーナメント方式による白熱したバトルが展開された。コーナーではテールスライドしながら曲がるシーンなども見られ、余興とは言えスクランブラー1200のオフロード性能をアピールする機会になったようだ。
さて気になる発売時期は、現段階では日本への導入時期や価格は未定とのことだが、早ければ来春にも発売される可能性もありそうなので期待したい。

スタンダード仕様のXC。上級版のXEに比べると車高が低いことが分かる。

こちらは上級版のXE。専用カラーとハンドガードを装備する他、前後サスペンションのストローク量が50mm長いため車高も異なっている。

上級モデルのスクランブラー1200XE。右側2本出しのハイマフラーが特徴的だ。

60年代のオリジナルスクランブラーを現代的に解釈したクラシカルでモダンなデザイン。均整のとれた美しいフォルムだ。

クラシックスクランブラーのデザインを取り入れた、シームレス スカルプテッドスクランブラー燃料タンク。

美しいメタリック塗装のタンクも専用設計。かつては革だったタンクベルトもステンレス製に。

ボンネビルT120ベースの水冷並列2気筒SOHC8バルブ1,200ccの高トルク型エンジンは最高出力90psを発揮。

よりコンパクトにサイドマフラーを収めるため、空冷風のフィンを削ってエキパイを通している。

特徴的なマフラーはヒートガードに3種類の複合素材を使ったゴージャスな仕様になっている。

第二世代のTFTフルカラーディスプレイ。一見アナログに見えるが実はフルデジタル。

昔懐かしいベンチシート風デザインを取り入れたダブルシート。丁寧なステッチ加工が施され質感は高い。

250mmのトラベルを持つオーリンズ製のツインショックはフルアジャスタブルタイプ。

アルミ製スイングアームは専用デザインのロングタイプ。リヤブレーキもブレンボ製で統一されている。

見るからに頑丈そうなアルミフレームを装備したハンドガード。こうした細かい部分にグレード感が宿る。

「彫刻された」と表現される立体感のあるアルミ製エンブレム。

スクランブラー1200XC(右)とインスピレーションキット装着車(左)。

スクランブラー1200XE(右)とインスピレーションキット装着車(左)。

インスピレーションキットを装着したEX。そのまま荒野を走るスクランブルレースに出場できそうだ。

ローンチパーティでは会場が巨大なクラブに変身。DJに大音量のBGM、ドリンクやローカルフードで大盛り上がり。

英国の俳優やモデルなどセレブも来場していたようだ。見たことあるような無いような……。

なんと会場内にインドア特設コースを作り模擬レースを開催。バーチカルツインの鼓動溢れるサウンドが響き渡っていた。

トライアンフのファクトリーライダーがバハ1000への参戦を表明。早速スクランブラー1200の実力が問われることになる。

今年11月に米国カリフォルニアで開催されるバハ1000に参戦予定のレーシングカスタム仕様も展示されていた。
関連する記事
-
モデルカタログ
スクランブラー1200 XE(2019-)
-
モデルカタログ
スクランブラー1200 XC(2019-)