VIRGIN TRIUMPH | 新型ボンネビルT100 長期インプレ vol.02【高速道路&ワインディング編】 トピックス

新型ボンネビルT100 長期インプレ vol.02【高速道路&ワインディング編】

欠点だった高速走行は見事なまでに克服!

新型ボンネビルT100 長期インプレの画像

通勤や街での走行で慣らして、今回はいざツーリングへ。東京から高速道路を使って富士方面へ向かった。空冷時代のボンネビルT100は、高速道路を走ると、すぐにトップギアを使うことになり、「もう一速あればなあ」と思うことがしばしばあった。さて、この新型はというと、ほとんどトップギアの5速にいれず、3~4速で走ることが多かったのだ。3速4,000回転で時速80km、4速4,000回転で100kmの巡航ができてしまった。レッドゾーンは7,000回転からだから、余裕はたっぷりある。

高回転域での振動も前モデルよりぐっと抑えられて、体感以上にスピードが出るバイクとなっている。「いま時速80kmくらいかな」とメーターを見たら時速100km出ていたということもしばしば。新東名高速など一部で近い将来、制限時速110km化との話もあるが、このバイクなら問題ないだろう。

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風防などはなく、風をまともに受けながら走ることになるが、ニュートラルなポジションなので、へんに肩が凝ったりすることがなく長距離も比較的快適に走れる。ちなみに先に発売しているボンネビルT120は排気量が300cc大きくミッションは6速、どっしりとしていて安定感もあり、こちらの方がより快適に走れるだろうが、車両価格の差は約30万円。普段から街乗りでも多用する使い方をする人なら、少しコンパクトなT100に分があると筆者は思っている。

山ではクイックネスな走りを楽しめる

新型ボンネビルT100 長期インプレの画像

高速を降りて、山道に入った。ボンネビルT100という車種は空冷時代まで、性能面でいうと、よくも悪くも普通のバイクだった。高速道路もワインディングもそこそこ、だけどちょっとした砂利道も走れて、ポジションもニュートラルで楽。なによりデザインやテイストを重視していた。しかし、この新型T100は走りにだいぶ重きを置いていることが分かる。挙動が素直で、空冷モデルと比べるとずいぶん曲がりやすくなった。瞬発力が高く、コーナーの立ち上がりなど爽快なスピード感が味わえる。ライド・バイ・ワイヤによる、リニアなアクセルワークの実現と、トルクアシスト・クラッチによる力要らずのクラッチ操作も大きく貢献している。走っていて「あれ運転上手くなったかな」と何度も錯覚した。バイクのおかげなのだが、実際に旧モデルで走ったときよりも、安全に速く走れているはずだ。

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これまでの空冷モデルでは、ワインディングに入っても、あまり頑張る気にならなかったが、この新型は少し違う。ひらひらと自由自在に走れて、攻めようと思えば充分に攻められるバイクになった。けれどそこはボンネビルT100。ゆったり走るのも気持ちいいのだ。気合を入れてコーナーに突っ込むこともできる反面、ゆったり構えてクルージング気分で流すのもいい。どちらにも対応してライダーの気分次第で走り方を選べるという汎用性が嬉しい。同じエンジンを積んだ、よりスポーティなストリートツインでは、峠に入ったら「攻めたい」という気持ちがどうしても湧いてくる。それが好きな人にはおすすめだが、のんびりと鼓動感を味わいたいと思うなら、断然こちらがおすすめだ。

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エンジンは水冷SOHC並列2気筒8バルブ270度クランク900cc。ストリートツインやストリートカップ、新型スクランブラーなどと同じものになる。低回転で力を発揮できるセッティングで、最大出力は55PS(40.5kW)@5,900rpm、最大トルクは80Nm@3,230rpm。富士周辺の峠では3速で走ることが多かった。この3速が一般的な峠には絶妙にマッチしている気がした。幅が広く、低速からかなりの高速までこなすため、高速道路での走行も気づけばまだ3速ということがしばしば。

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ブレーキは前後シングルディスク。前輪は、310mm径シングルディスク、Nissin製2ピストンフローティングキャリパー、ABS。このブレーキが秀逸だ。以前の空冷モデルは車両重量が約20kgほど重かったということもあるが、あまり止まらない印象があり、それゆえ峠ではあまり攻められず、街中でも車間を必要以上に取る必要があった。ハーレーが止まりにくい感覚と似ている。しかし、この新型は優秀な国産車のように、「このくらいのスピードならこのくらいのブレーキで止まれる」という感覚が分かりやすい。また、ガツッと一気に利くのではなく、的確な制動性でビギナーにも安心だ。

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一般的な国産車とチェーンの取り回しが逆というのは、新型になっても踏襲されている。ブレーキは後輪もシングルディスク。255mm径シングルディスク、Nissin製2ピストンフローティングキャリパー、ABS。ボンネビルは後輪ブレーキが踏みやすく、つい思った以上に力が入ってしまいロックする傾向があるが、ABSがついているので安心。ただブレーキパッドは減りやすい。おそらくこの新型も同様なので、所有した際は日々ブレーキパッドの減り具合のチェックを欠かさないようにしたい。空冷モデルでは、6,000~7,000kmで交換するのが一般的で、早い人では3,000kmでなくなってしまうとも聞いたことがある。

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燃料タンク容量は14.5L。今回、高速とワインディングを走った平均燃費は約22km/L。ハイオク指定だけど、充分優秀だ。タンクにはメインキーでロックできるキャップが標準装備されている。これも空冷時代はなかった装備だ。タンク側面にニーグリップパッドが付いているのも嬉しい。タンク形状、幅もあわせてとてもニーグリップしやすく、バイクとの一体感は高い。筆者の身長は175cm。座る位置を少し後ろにして前傾姿勢を軽く取るようなポジションにすると、膝の曲がり具合、腕の伸び具合がともにジャストフィットで運転しやすくなった。

新型ボンネビルT100 長期インプレの画像

さて、今回のまとめだが、以前のモデルに比べると、ずいぶん走行性能が高まっていることを実感した。それでいて見た目はこのとおり、伝統のスタインリングを継承したまさしくボンネビルT100だ。しかも価格はぐっと下がり115万500円~だというのだから、やっぱり驚く。外国車は高いもの、もしくは国産と同価格帯だったら国産の方が優秀なんてイメージはあるが、もうそんなことは決してない。何も不安に思うことなく、楽しめる外国車の一台といえるだろう。次回は荷物を積んでキャンプツーリングでの性能をチェックしたい。

プロフィール
西野 鉄兵
ツーリングマガジン『アウトライダー』編集部のデスク。大学生だった2007年にアルバイトで飛び込んで以来、長きにわたって雑誌やWEBの編集に携わっている。バイクの使い方はもっぱらツーリングで、全都道府県と海外数カ国での走行経験あり。普段の愛車は、2005年式のトライアンフ ボンネビルT100。

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