VIRGIN TRIUMPH | トライアンフ スプリントST 試乗インプレッション

トラインフ スプリントSTの画像
TRIUMPH SPRINT ST

トライアンフ スプリントST

ヨーロッパが認めた
ハイスピードツアラー

日本と違い国同士が地続きとなっているヨーロッパでは、フルカウルのツーリングモデルの人気が高い。パニアケースに荷物を満載し、パートナーとタンデムで数百kmの距離を一気に駆け抜けるというタフな使い方をするため、自ずとバイクに対する評価も厳しいものが多くなる。今回インプレッションを行うのは、ドイツの名門2輪雑誌「モトラッド」において、50,000km耐久テストでトップの成績を収め、2008年にはツーリング賞に選ばれる栄誉に浴したトライアンフ「スプリントST」だ。数多く発売されているツアラーモデルの中で、なにゆえこのバイクが高い評価を集めているのか。あらゆるシチュエーションを走り抜けることで、その秘密に迫ってみたい。

トライアンフ スプリントST 試乗インプレッション

昂ぶるスポーツパフォーマンスと
ツアラーならではの快適さが融合

トライアンフ スプリントST 写真

「予想外」という言葉ほど、スプリントSTに似合う言葉は無い。パニアケースが装着でき、20リットルのタンクを持つフルカウルモデル、といえば典型的なツアラーイメージだが、その枠に収まらないスポーツ性能を併せ持つバイク、それがこのスプリントSTだ。今回の試乗では渋滞の多い東京23区から、千葉・埼玉などのツーリングルートを走行したが、ひと際エキサイティングな面白さを見せてくれたのは、驚くべきことにワインディングだった。低回転から力強いトルクが湧き出す並列3気筒エンジンは、アクセルのオンオフに対してリニアに反応。高速走行だけに終わらないレスポンスが楽しめる。ツーリングも視野に入れた大柄な車体は見かけとは裏腹に、積極的な姿勢変化を好んで受け入れ、タイトなコーナーでも高い旋回性を発揮。一般的なツアラーならリーンウィズで曲がるところを、膝頭一つ分だけ腰を落とし込めば、穏やかさと鋭さのバランスが取れたコーナーリングで気持ち良く駆け抜けられる。これを空荷の状態でなく、左に撮影機材、右にレインウェアなどのツーリング用品を詰め込んだ状態でこなしてしまうのだから、そのパフォーマンスには舌を巻くしか無いだろう。

トライアンフ スプリントST 写真

もちろん、主眼であるツアラーとしての実力も十分だ。ヨーロッパで人気が高いモデルだけに、高速巡航能力は抜群。6速ホールドのままでも、右手のアクション一つで追い越しは自由自在で、ストレス無く交通の流れをリードできる。今回の実燃費ではリッターあたり20kmを少し割る程度だったが、20リットルというタンク容量を考えれば航続距離は十分なもの。性能と燃費のバランスは良好だ。そして、超高速域の巡航からのブレーキングでも不安が少ないのもスプリントSTの美点。特に搭載されているABSは作動感覚が分かりやすく、ライダーへのフィードバックもソフトなので非常に扱いやすい。ただ、少し気になるのがライディングポジション。スポーツ性を重視したために、少し前傾が強いように感じた。とはいえ、あのアグレッシブな走りを知ってしまうと、これはこれで面白いパッケージと思える。快適な高速走行と、旅先での熱い走りを両立するスプリントSTだからこそ、ヨーロッパにおいてベストツアラーに選ばれているのだろう。

トライアンフ スプリントST 特徴

ツーリングモデルの基本を抑えた
ソツの無いパッケージングが魅力

トライアンフ スプリントST 写真

個性的なルックスや走行性に対し、スプリントSTの装備類は実直なまでにスタンダードなものとなっている。20リットルの大容量タンクに、純正のパニアケースとグラブバー、タンデムでの居住性も考慮した肉厚で大き目のシートなど、ツアラーとして求められる要素を過不足無くえている。個性的な3眼ヘッドライトが印象的なカウリングも防風性能が高く、見た目のインパクトの裏に確かな実用性を確保。中でも、ヘッドライトは照射範囲、光量とも優秀で、ナイトランに安心感を与えてくれ、ロービームのワイドな配光は被視認性の面でもメリットが大きい。また、ハイビームに切り替えると3つ全てが点灯するため、街灯の少ない山間部においても、余裕を持って夜間走行を楽しむことができた。3気筒エンジンの個性派ツアラーという印象が強いモデルだが、ツーリングモデルとしてのユーティリティに抜かりは無い。

そして、もうひとつ忘れてはならない特徴と言えば、トライアンフのアイデンティティである並列3気筒エンジン。2気筒にも4気筒にも無い独自の風味を醸し出すこのエンジンは、やはりスプリントSTのキモだ。低回転域から分厚いトルクを発生し、トップエンドまで淀みなく回るエンジンは快感の一言。127馬力という十分なパワーを発生しており、乾燥重量で200kgを超える車体を軽々と高い速度域へと連れて行ってくれる。そして何より、他の形式では味わえない官能的なトリプルサウンドは必聴だろう。迫力ある低音が高回転で和音へと変わっていく様は、一度聴いたら癖になってしまう。この心地良くもパワフルなエンジンと、個性の裏に高い実用性を備えた車体の組み合わせなら、思い切り遠くまで旅に出られそうだ。

トライアンフ スプリントST の詳細写真

トライアンフ スプリントSTの画像
標準装備のボディ同色パニアケース。容量は十分だが、張り出しがハンドル幅よりあるため走行時は注意が必要だ。
トライアンフ スプリントSTの画像
防風効果の高いウインドスクリーン。メーター下まで透明となっているため、伏せた状態でも視界が広いのが特徴。
トライアンフ スプリントSTの画像
一目でスプリントSTと分かるヘッドライト。通常時は左右、ハイビームにすると真ん中も点灯する。
トライアンフ スプリントSTの画像
メーターはオーソドックスな3眼タイプを採用。右端のディスプレイは最高速度記録や走行可能距離などさまざまな情報を表示可能だ。
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ライディングポジションは前傾気味のスポーティなもの。ワインディングでぴたりと姿勢が決まるのがスプリントSTの特徴。
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ツーリングモデルのお約束とも言えるセンタースタンド。リア周りの整備の際、非常に便利だ。掛けやすさに関しては標準的。
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20リットルと余裕ある容量のフューエルタンク。取り付けられているカーボンパーツは純正オプション品だ。
トライアンフ スプリントSTの画像
肉厚で座り心地の良いシート。長距離走行時も疲労が少なくなっている。幅があるので見た目より足は着きにくい印象だ。
トライアンフ スプリントSTの画像
3気筒を主張する個性的なテールビュー。テールライトとウインカーは標準でクリア仕様となっている。

SPECIFICATIONS – TRIUMPH SPRINT ST

トライアンフ スプリントST 写真

価格(消費税込み) = 169万500円

1,050ccの並列3気筒DOHCエンジンを搭載したハイスピードツアラー。ドイツの名門2輪誌で「ツーリング賞」を獲得するなど、ヨーロッパにおいて高い評価を獲得している。

  • ■エンジン型式 = 水冷4ストロークDOHC並列3気筒
  • ■総排気量 = 1,050cc
  • ■ボア×ストローク = 79.0mm×71.4mm
  • ■最高出力 = 127PS/9,250rpm
  • ■最大トルク = 105N・m /7,500rpm
  • ■トランスミッション = 常時噛合式6速リターン
  • ■サイズ = 全長2,114×全幅750×全高1,215mm
  • ■シート高 = 805mm
  • ■ホイールベース = 1,457mm
  • ■乾燥重量 = 213kg
  • ■タンク容量 = 20.0L
  • ■Fタイヤサイズ = 120/70 ZR17
  • ■Rタイヤサイズ = 180/55 ZR17

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