VIRGIN TRIUMPH | 【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク 試乗インプレッション

【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク

【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク メイン写真
TRIUMPH SCRAMBLER 1200 XE(2026)
ネオクラシックスタイルでありながら、本格派ビッグオフローダーのパフォーマンスも兼ね備えているスクランブラー1200XE。2026モデルでは足回りをはじめさらなる進化を遂げた。

トライアンフの歩みの中にあるスクランブラーの必然性

トライアンフが最初のモーターサイクルを世に送り出したのは1902年。実に120年以上前のことである。当時の道路事情は、現代の我々が想像するそれとは大きく異なり、舗装路はまだごく限られた存在だった。

日本に目を向けても、東京で本格的な道路舗装が始まったのは1903年(明治36年)頃とされる。世界的に見ても、交通インフラはまだ発展途上の段階にあり、未舗装路が日常だった時代である。

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1907年に初開催された世界最古の公道レース、マン島TTも、市街地の石畳や山岳部の未舗装路を含む過酷なコースで争われた。各メーカーはそこで技術力を競い合い、その成果を広く示そうとしていたのである。

それから100年以上を経て、道路の舗装は世界中で進んだ。しかし、今から半世紀ほど前までは、オンロードとオフロードが混在する環境は決して珍しいものではなかった。舗装路も未舗装路も区別なく走り抜ける――そうした実用性から生まれたのが、“スクランブラー”という概念である。

名優 スティーブ・マックイーン が愛用したことで知られる Triumph TR6 Trophy は、カリフォルニアのデザートレースで活躍し、スクランブラー文化の象徴となった。その精神こそが、現代のトライアンフ・スクランブラーへと脈々と受け継がれている。

そして、その最新かつ最上位に位置付けられるのがスクランブラー1200XEだ。

足まわりを中心にブラッシュアップが施された2026年モデル、その進化を見ていこう。

トライアンフ スクランブラー1200XE 特徴

モダンクラシックとして登場し早20年。懐かしさを残しつつ着実に進化

今から20年前、2006年に登場したのが初代トライアンフ・スクランブラーである。865cc空冷バーチカルツインを搭載したこのモデルは、往年のTRシリーズを想起させる存在であり、トライアンフと“オフロード”の深い関係性を現代に蘇らせた一台だった。

高く取り回された2本出しマフラー、クラシカルなスタイリング、そして伝統的なエンジン形式。それは、かつて一世を風靡したトライアンフのスクランブラースタイルを、現代の解釈で再構築したモデルにほかならない。

2010年代中盤になると、モダンクラシックシリーズは大きな転換期を迎える。2016年に発表された新世代ボンネビルシリーズから水冷エンジンへ移行し、2017年モデルイヤー以降はトラクションコントロールやライディングモードといった電子制御が本格導入された。伝統的な外観を維持しながら、中身は現代的へと大きく進化したのである。

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2019年、スクランブラーは新たな頂点へ到達する。

登場したのがTriumph Scrambler 1200 XEおよびXCだ。従来の900ccから大幅にスケールアップした1200cc水冷バーチカルツインを搭載し、前後ロングストロークサスペンション、6軸IMU制御を採用。クラシックな装いのまま、本格的なアドベンチャー性能を手に入れたことは衝撃的だった。

2024年には実質的なフルモデルチェンジが行われ、ラインアップはXとXEの2本立てへ再編。キャラクターを明確に分けつつ、完成度をさらに高めた。

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そして2026年モデルでは、足まわりを中心としたさらなるブラッシュアップが図られている。

現在もTriumph Scrambler 900はラインアップに存在するが、スクランブラー1200XEは歴代スクランブラーモデルの頂点に位置するフラッグシップだ。

熟成を重ねた最新形、その真価を確かめていこう。

トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗インプレッション

体躯、トルク、ともに巨大。それを優雅に走らせる喜び

従来モデルからそうであったが、スクランブラー1200 XEはシンプルなスタイリングゆえ、遠目に眺める限りではさほど車格が大きいようには見えない。だが、一歩ずつ近づいていくと、その堂々たるサイズ感に気づかされる。

シート高は870mm。身長177cmの私でも踵はわずかに浮く。さらに停車状態で車体を揺すってみると、プリロードはやや強めの設定に感じられた。想定ライダー体重を高めに設定しているのか、あるいはタンデムや積載を前提としたセッティングなのか。いずれにせよ、静止状態では引き締まった印象を受ける。

しかし、その印象は走り出した瞬間に覆る。

前後250mmという大きなストローク量を維持しながら、2026年型では足回りが刷新された。フロントには47mm径のShowa製フルアジャスタブル倒立フォーク、リアにはÖhlins製ピギーバックリザーバー付きショックを採用。この組み合わせが実に秀逸だ。

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市街地を流してまず感じるのは、初期入力に対する確かな手応えと、奥で粘るストロークの質感である。単に柔らかいのではない。入力初期はやや引き締まり、その後はしなやかに沈み込み、路面の凹凸を丁寧にいなしていく。そのフィーリングはむしろロードモデル的で、巨体を意識させない安定感をもたらす。

もちろん本質はオフロード志向だ。豊富なストローク量があるからこそ、路面変化に対する懐は深い。しかし加減速時の前後ピッチングは穏やかに抑えられており、挙動は終始フラット。長い脚を持ちながら、動きは節度あるものに制御されている。

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エンジンをはじめ各部が十分に温まったことを確認し、高速道路へと進む。

270度クランクが生む独特の鼓動感。高い位置にレイアウトされたエキゾーストから届く重厚なサウンド。そして4500rpmで最大110Nmを発揮する圧倒的トルク。決して回転を張り上げずとも、分厚いトルクに身を委ねるだけで十分に心地よい。

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それでいて、ひとたびスロットルを大きく開ければ、長いストロークを感じさせない鋭い加速が立ち上がる。巨体を忘れさせる伸びやかさだ。

つい右手に力がこもってしまうが、ワンタッチでセットできるクルーズコントロールの存在もありがたい。鼓動を感じながら淡々と距離を刻む時間もまた、このマシンの魅力のひとつである。

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郊外へ足を延ばし、ワインディングロードへと向かう。

フロント21インチ、リア17インチのホイールセットゆえ、コーナー進入時のフロントの“立ち”は強めだ。とはいえ切り返しは想像以上に軽快で、ヒラリと向きを変える感覚も備えている。110Nmの分厚いトルクは日本のワインディングのリズムとも相性が良く、回転を追い立てずともテンポよく走れる。

オンロードモデルの仲間とのツーリングであっても、置いていかれる心配はないだろう。

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未舗装路にも分け入ってみた。

巨体かつ重量級であることに変わりはなく、ラフな路面では相応の慎重さが求められる。ただしライディングモードには「オフロード」と「オフロードプロ(ABS・TC介入の最小化/解除)」が用意されており、用途に応じた制御が選択可能だ。限界走行を狙うよりも、景色を味わいながらトレッキング的に走らせるのであれば、標準のオフロードモードが扱いやすい。

標準装着タイヤでもフラットダート程度なら十分に対応できるが、本格的に未舗装路を楽しむのであればブロックタイヤへの換装は検討に値する。

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スロットル操作ひとつで容易にフロントを浮かせることもできる分厚いトルクは、舗装路であっても強烈な中毒性を持つ。そしてスクランブラー1200 XEに限らず、モダンクラシックシリーズの本質的な魅力は、その機能美とファッション性の高さにあると感じる。

装備は豪華だ。過剰と思えるほどだが、内容を精査すれば妥当な充実度であることが理解できる。

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心地よい速度域は決して高すぎない。まったりと流すことも、力強く加速を楽しむこともできる。さらに未舗装路へも踏み込める懐の深さを持つ。

だからこそ、この一台は長く付き合える。

アップデートを受けた2026年型スクランブラー1200 XEは、その総合力をさらに磨き上げていた。

トライアンフ スクランブラー1200XE 詳細写真

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水冷1200ccバーチカルツインは270度クランクを採用し、低回転から厚みのあるトルクを発生。4500rpmで最大トルク110Nmを発揮し、鼓動感と実用性を高次元で両立する。スロットルに忠実なレスポンスと粘り強さが、オン/オフを問わず余裕ある走りを支える。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク12画像
フロントはφ47mmのShowa製フルアジャスタブル倒立フォークを採用し、250mmのストロークを確保。21インチのクロススポークホイールはチューブレスタイヤ対応で、悪路走破性と実用性を両立する。ブレーキはブレンボ製ラジアルマウントキャリパーを装備し、制動力とコントロール性を高めている。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク13画像
スクランブラーの象徴ともいえる2本出しアップマフラーは、往年のTR譲りのスタイルを現代に受け継ぐ意匠。高く取り回されたレイアウトは悪路走行時の安心感にもつながる。力強く歯切れのよい排気音は270度クランクの鼓動を際立たせ、走りへの没入感を高める。足まわりに近い配置ゆえ熱は感じやすいが、それもまたこのモデルならではの個性といえる。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク14画像
シルバーベゼルをあしらった丸形LEDヘッドライトは、伝統的な佇まいと現代的な視認性を両立する象徴的存在。その前面には飛び石などからレンズを保護するメッシュガードを装備し、ラフロード走行を視野に入れた実用性も確保。クラシックな意匠の中に本気のオフロード性能を秘めていることを物語るディテールだ。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク15画像
シート高は870mm。ワンピース構造ながらライダー/パッセンジャーで自然に区分されたデザインを採用する。フラットで前後に余裕のある座面は着座位置の自由度が高く、オンロードでの快適性はもちろん、スタンディングや体重移動を伴うオフロード走行にも対応する実用的な仕立てだ。
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フルカラーTFTディスプレイは、ライダーの好みに合わせてテーマやレイアウトを選べる多機能表示を採用。速度・回転・ギアポジション・燃料・モード表示などの基本情報に加え、ナビ・通話・音楽などを統合するMyTriumphコネクティビティにも対応する。高コントラストで視認性も高く、走行シーンを問わず操作性に優れる。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク17画像
左側スイッチボックスには、直感的に操作できる十字型セレクトスイッチを配置。各種メーター表示や設定変更を手元で完結でき、走行中の視線移動を最小限に抑える。さらにライディングモード切替ボタンも備え、状況に応じたセッティング変更が可能だ。グリップ前方にはブッシュガードを標準装備し、悪路走行時の保護性能も確保している。
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燃料タンク容量は15リットル。スリムに絞り込まれた形状はスタンディング時のニーグリップを妨げず、取り回しにも配慮されている。2026年型では質感の高い専用カラーリングとグラフィックが与えられ、アルミ製タンクバンドがクラシックな存在感を強調。機能性と意匠性を高次元で融合させている。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク19画像
幅広タイプのステップは安定感が高く、ヒールガード形状も相まって、かかとで車体をホールドしやすい設計。ニーグリップと合わせた車体コントロールがしやすく、ラフな路面でも安心感がある。さらにステップラバーは取り外し可能で、オフロードブーツ着用時には金属面がダイレクトに食いつき、グリップ力を一段と高められる。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク20画像
リアはスクランブラーらしいツインショックレイアウトを継承しつつ、2026年型ではÖhlins製ピギーバックリザーバー付きショックを新採用。250mmの豊富なストロークを確保しながら、減衰特性のコントロール性を高めている。クラシックな外観と最新性能を両立する、象徴的な足まわりだ。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク21画像
シート下にはUSB電源を備えるユーティリティケースが用意されている。ケースの容量自体はそれほど大きくはないものの、ガジェット類の充電などで重宝するだろう。ケーブル類がカバードされていることから、見えない部分にもしっかりとこだわっていることが伝わってくる。
【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク22画像
今回のテスト車両では、純正オプションで用意されているサドルバッグが装備されていた。見た目以上に容量は大きく、使い勝手も良かった。着脱はメインキーで簡単に行うことができ、英国のサッチェル(ランドセル)のようなデザインもなかなか良い。

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