【トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗記】しなやかさで受け止める、ビッグツインの圧倒的トルク
- 掲載日/2026年02月20日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文・写真/小松 男

トライアンフの歩みの中にあるスクランブラーの必然性
トライアンフが最初のモーターサイクルを世に送り出したのは1902年。実に120年以上前のことである。当時の道路事情は、現代の我々が想像するそれとは大きく異なり、舗装路はまだごく限られた存在だった。
日本に目を向けても、東京で本格的な道路舗装が始まったのは1903年(明治36年)頃とされる。世界的に見ても、交通インフラはまだ発展途上の段階にあり、未舗装路が日常だった時代である。
1907年に初開催された世界最古の公道レース、マン島TTも、市街地の石畳や山岳部の未舗装路を含む過酷なコースで争われた。各メーカーはそこで技術力を競い合い、その成果を広く示そうとしていたのである。
それから100年以上を経て、道路の舗装は世界中で進んだ。しかし、今から半世紀ほど前までは、オンロードとオフロードが混在する環境は決して珍しいものではなかった。舗装路も未舗装路も区別なく走り抜ける――そうした実用性から生まれたのが、“スクランブラー”という概念である。
名優 スティーブ・マックイーン が愛用したことで知られる Triumph TR6 Trophy は、カリフォルニアのデザートレースで活躍し、スクランブラー文化の象徴となった。その精神こそが、現代のトライアンフ・スクランブラーへと脈々と受け継がれている。
そして、その最新かつ最上位に位置付けられるのがスクランブラー1200XEだ。
足まわりを中心にブラッシュアップが施された2026年モデル、その進化を見ていこう。
トライアンフ スクランブラー1200XE 特徴
モダンクラシックとして登場し早20年。懐かしさを残しつつ着実に進化
今から20年前、2006年に登場したのが初代トライアンフ・スクランブラーである。865cc空冷バーチカルツインを搭載したこのモデルは、往年のTRシリーズを想起させる存在であり、トライアンフと“オフロード”の深い関係性を現代に蘇らせた一台だった。
高く取り回された2本出しマフラー、クラシカルなスタイリング、そして伝統的なエンジン形式。それは、かつて一世を風靡したトライアンフのスクランブラースタイルを、現代の解釈で再構築したモデルにほかならない。
2010年代中盤になると、モダンクラシックシリーズは大きな転換期を迎える。2016年に発表された新世代ボンネビルシリーズから水冷エンジンへ移行し、2017年モデルイヤー以降はトラクションコントロールやライディングモードといった電子制御が本格導入された。伝統的な外観を維持しながら、中身は現代的へと大きく進化したのである。
2019年、スクランブラーは新たな頂点へ到達する。
登場したのがTriumph Scrambler 1200 XEおよびXCだ。従来の900ccから大幅にスケールアップした1200cc水冷バーチカルツインを搭載し、前後ロングストロークサスペンション、6軸IMU制御を採用。クラシックな装いのまま、本格的なアドベンチャー性能を手に入れたことは衝撃的だった。
2024年には実質的なフルモデルチェンジが行われ、ラインアップはXとXEの2本立てへ再編。キャラクターを明確に分けつつ、完成度をさらに高めた。
そして2026年モデルでは、足まわりを中心としたさらなるブラッシュアップが図られている。
現在もTriumph Scrambler 900はラインアップに存在するが、スクランブラー1200XEは歴代スクランブラーモデルの頂点に位置するフラッグシップだ。
熟成を重ねた最新形、その真価を確かめていこう。
トライアンフ スクランブラー1200XE 試乗インプレッション
体躯、トルク、ともに巨大。それを優雅に走らせる喜び
従来モデルからそうであったが、スクランブラー1200 XEはシンプルなスタイリングゆえ、遠目に眺める限りではさほど車格が大きいようには見えない。だが、一歩ずつ近づいていくと、その堂々たるサイズ感に気づかされる。
シート高は870mm。身長177cmの私でも踵はわずかに浮く。さらに停車状態で車体を揺すってみると、プリロードはやや強めの設定に感じられた。想定ライダー体重を高めに設定しているのか、あるいはタンデムや積載を前提としたセッティングなのか。いずれにせよ、静止状態では引き締まった印象を受ける。
しかし、その印象は走り出した瞬間に覆る。
前後250mmという大きなストローク量を維持しながら、2026年型では足回りが刷新された。フロントには47mm径のShowa製フルアジャスタブル倒立フォーク、リアにはÖhlins製ピギーバックリザーバー付きショックを採用。この組み合わせが実に秀逸だ。
市街地を流してまず感じるのは、初期入力に対する確かな手応えと、奥で粘るストロークの質感である。単に柔らかいのではない。入力初期はやや引き締まり、その後はしなやかに沈み込み、路面の凹凸を丁寧にいなしていく。そのフィーリングはむしろロードモデル的で、巨体を意識させない安定感をもたらす。
もちろん本質はオフロード志向だ。豊富なストローク量があるからこそ、路面変化に対する懐は深い。しかし加減速時の前後ピッチングは穏やかに抑えられており、挙動は終始フラット。長い脚を持ちながら、動きは節度あるものに制御されている。
エンジンをはじめ各部が十分に温まったことを確認し、高速道路へと進む。
270度クランクが生む独特の鼓動感。高い位置にレイアウトされたエキゾーストから届く重厚なサウンド。そして4500rpmで最大110Nmを発揮する圧倒的トルク。決して回転を張り上げずとも、分厚いトルクに身を委ねるだけで十分に心地よい。
それでいて、ひとたびスロットルを大きく開ければ、長いストロークを感じさせない鋭い加速が立ち上がる。巨体を忘れさせる伸びやかさだ。
つい右手に力がこもってしまうが、ワンタッチでセットできるクルーズコントロールの存在もありがたい。鼓動を感じながら淡々と距離を刻む時間もまた、このマシンの魅力のひとつである。
郊外へ足を延ばし、ワインディングロードへと向かう。
フロント21インチ、リア17インチのホイールセットゆえ、コーナー進入時のフロントの“立ち”は強めだ。とはいえ切り返しは想像以上に軽快で、ヒラリと向きを変える感覚も備えている。110Nmの分厚いトルクは日本のワインディングのリズムとも相性が良く、回転を追い立てずともテンポよく走れる。
オンロードモデルの仲間とのツーリングであっても、置いていかれる心配はないだろう。
未舗装路にも分け入ってみた。
巨体かつ重量級であることに変わりはなく、ラフな路面では相応の慎重さが求められる。ただしライディングモードには「オフロード」と「オフロードプロ(ABS・TC介入の最小化/解除)」が用意されており、用途に応じた制御が選択可能だ。限界走行を狙うよりも、景色を味わいながらトレッキング的に走らせるのであれば、標準のオフロードモードが扱いやすい。
標準装着タイヤでもフラットダート程度なら十分に対応できるが、本格的に未舗装路を楽しむのであればブロックタイヤへの換装は検討に値する。
スロットル操作ひとつで容易にフロントを浮かせることもできる分厚いトルクは、舗装路であっても強烈な中毒性を持つ。そしてスクランブラー1200 XEに限らず、モダンクラシックシリーズの本質的な魅力は、その機能美とファッション性の高さにあると感じる。
装備は豪華だ。過剰と思えるほどだが、内容を精査すれば妥当な充実度であることが理解できる。
心地よい速度域は決して高すぎない。まったりと流すことも、力強く加速を楽しむこともできる。さらに未舗装路へも踏み込める懐の深さを持つ。
だからこそ、この一台は長く付き合える。
アップデートを受けた2026年型スクランブラー1200 XEは、その総合力をさらに磨き上げていた。
トライアンフ スクランブラー1200XE 詳細写真












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