【トライアンフ ストリートトリプル765RX 試乗記】走る歓びを凝縮したプレミアム・ハンドリングマシン
- 掲載日/2026年03月09日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文・写真/小松 男

生まれた時からスーパーホット時を経て成熟し、さらなる高みへ
まだ私が駆け出しの編集者だった2007年、トライアンフから初代ストリートトリプル675が発表された。
ベースとなったフルカウルスポーツモデル、デイトナ675のファンだったこと、そして当時制作していたバイクメディア『クラブマン』誌では、トライアンフにまつわる記事の担当を務めていたこともあり、登場したばかりのストリートトリプルを借り出し、市街地からツーリング、さらにはサーキットまで走らせまくったことを覚えている。

その印象を一言で表すなら、「とにかく楽しい」。それこそがストリートトリプル675の本質であり、周囲のバイク仲間にも「これは間違いない」と自信をもって薦めていたものだ。
ストリートトリプルは、細かなブラッシュアップを重ねながら進化を続け、登場から10年を迎えた2017年には排気量を拡大しつつ大幅な刷新を受け、ストリートトリプル765へと生まれ変わる。
さらに2019年には、世界最高峰ロードレースであるMoto2クラスの供給エンジンにも採用され、そのパフォーマンスに一層の磨きがかけられた。
そして今季、そのストリートトリプル765に新たな上級グレード――ストリートトリプル765RXが追加されたのである。

トライアンフ ストリートトリプル765RX 特徴
復活した「RX」ストリートトリプルをさらに研ぎ澄ます特別仕様
ここ最近の、いや特に今期のトライアンフによるニューモデル攻勢には目を見張るものがある。新型および改良モデルを合わせ、その数は実に29モデルに及ぶというから驚きだ。そんな数あるラインアップの中から、今回あえてストリートトリプル765RXを選んだのには理由がある。
まずは単純に、私自身が初代モデルからストリートトリプルのファンだからだ。ロードスターカテゴリーのフラッグシップに位置するスピードトリプルももちろん魅力的だが、不思議なことに私の心をより強くくすぐるのは、いつもストリートトリプルなのである。
そしてもうひとつの理由が、今回のモデル名に与えられた「RX」というグレード表記だ。ストリートトリプル675の時代にも「Rx」という派生モデルは存在したが、当時は小文字の“x”が付くRの延長線上のスポーツ仕様という位置付けだった。

しかし今回のストリートトリプル765RXは、その成り立ちが少し違う。クリップオンハンドルを採用し、サスペンションにはオーリンズ製ユニットを装備するなど、よりレーシーな方向へと振ったパッケージを与えられた特別仕様なのである。
現在、日本国内のラインアップはスタンダードグレードのR、出力向上と足まわり強化が施されたRS、そして今回のストリートトリプル765RXと同時に復活登場した、最上級グレードである限定生産のMoto2エディション、そしてストリートトリプル765RXという構成だ。
果たしてこの765RXは、どのような仕上がりを見せているのか。そしてストリートトリプルという名車に、どんな新しいキャラクターを与えているのか。さっそく走らせて確かめてみることにした。

トライアンフ ストリートトリプル765RX 試乗インプレッション
速度域関係なく楽しめる
これこそ”正義”のスポーツモデル
スタンダードモデルの765Rと、その上位仕様である765RSは、ともにバーハンドルを採用している。それに対してストリートトリプル765RXは、Moto2エディションと同様のクリップオンハンドルを装備。スタイリングの段階から、他のグレードとは少し異なるキャラクターを感じさせる。
さっそく跨ってみる。スポーツ志向らしくシートはやや高めにセットされているが、クリップオンハンドルとの位置関係は実に自然で、過度な前傾を強いられる印象はない。むしろ「走るためのポジション」がすっと身体に馴染む感覚だ。

市街地をしばらく流してみる。どの回転域からでもスロットル操作に忠実に反応し、ナチュラルかつリニアにパワーが立ち上がる。三気筒エンジンの扱いやすさに関して以前から評価をしてきたが、その完成度はここまで高められているのかと感心させられる。
前傾姿勢であることから、小回りなどで扱いにくさが出るのではないかとも思っていた。しかし実際には軽量な車体と優れたハンドリングバランスによって、軽い入力で素直に舵角が生まれ、Uターンや取り回しも驚くほどスムーズだ。

高速道路に乗ると、このモデルのもう一つの魅力が見えてくる。 スロットルを開ければ、まるでそれを待ち構えていたかのように車体が伸びやかに加速し、シャシーも足まわりもそのスピード域を余裕で受け止めてくれる。
もちろん、その気になれば相当なペースで走らせることもできてしまう。 だからこそライダーには、気持ちを抑え、時に解放するという自制心が求められる。

そしてワインディングに入ると、このモデルの真価がはっきりと現れる。 タイトコーナーでも高速コーナーでも、恐れずにフロントを差し込んでいける安心感がある。思わずブレーキングポイントを奥へ奥へと遅らせたくなるが、それを受け止めるブレーキ性能とサスペンション性能がしっかり備わっているのだ。
近年主流となっている、リアを軽くスライドさせながらコーナーへ進入する“フロント乗り”の走り方でもいい。あるいは昔ながらのハングオンでリア荷重を意識する“後ろ乗り”でもいい。 どんな乗り方をしても、スポーツバイクを操る楽しさ――その本質的な気持ちよさを味わわせてくれる。
一点、公道の速度域で楽しむのであれば、リアサスペンションのプリロードを数段緩めてみるのも面白い。そうすることで乗り味がさらにしなやかになり、より気持ちよく走らせることができるはずだ。 それだけこのストリートトリプル765RXは、スポーティに振り切ったセッティングを与えられているのである。

ここで、歴代のストリートトリプルを振り返りながら、そのキャラクターの変遷を思い出してみたい。
初代モデルは、出だしのパンチ力が強く、ローギアードな設定も相まってスロットルワークだけでフロントタイヤが軽く浮き上がるような勢いがあった。そうした荒々しさがストリートスポーツとの相性の良さを感じさせ、同じエンジンを共有するデイトナ675とは明確にキャラクターを分けていた。

その後、デイトナ675の生産終了やサーキットユーザーからの支持の高まりなどもあってか、ストリートトリプルはやや高回転志向のセッティングへとシフトしていく時期があった。街中でも扱いやすく、それでいて高回転域まで使い切るスポーツ走行を楽しめる性格へと進化していったのである。
そして2017年に排気量を拡大したストリートトリプル765へと世代交代すると、低速トルクの厚みが増しつつ高回転でのパワーも引き上げられ、走りの完成度は一段と高められた。シャシーや足まわりも見直され、ライディングプレジャーは明らかに新しい次元へと引き上げられている。
その後いくつかのグレードが用意されたが、正直なところスタンダードモデルの時点で十分に完成度が高く、「これで十分ではないか」と感じていたのも事実だ。

そんな中で今回登場したストリートトリプル765RXは、これまでとは少し異なるアプローチでストリートトリプルのポテンシャルを引き出している。クリップオンハンドルとオーリンズ製サスペンションによってスポーツ性能をより際立たせたことで、公道でもサーキットでも走りの質をさらに高めたモデルに仕上がっているのである。
なお、ラインアップの価格は、世界限定1000台の最上位モデルであるストリートトリプル765Moto2エディションが199万5000円。スタンダードモデルとなるストリートトリプル765Rが125万4000円。そして今回試乗したストリートトリプル765RXは、今年1年間のみの限定生産モデルとして173万5000円に設定されている。

RXはオーリンズ製サスペンションやクリップオンハンドルを装備し、Moto2エディションではそれに加えてカーボンパーツや専用カラーなどが与えられる。こうして並べてみると、どのモデルを選ぶか悩ましい絶妙な価格設定となっている。
ストリートトリプル765RXは、ストリートトリプルという名車の魅力をさらに研ぎ澄ませたモデルだ。 速く走らせても楽しい。ゆっくり走っても楽しい。 そんな“正義のスポーツモデル”がここにある。
トライアンフ ストリートトリプル765RX 詳細写真












関連する記事
-
試乗インプレッション
Moto2エンジンの公式サプライヤーとなるトライアンフの先行開発テスト車をインプレ
-
モデルカタログ
ストリートトリプル 765 RS (2023-)











