【トライアンフ ボンネビル T100 試乗記】ラフ&ラギッド、これぞクラシックスポーツ
- 掲載日/2026年01月05日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文・写真/小松 男

モダンクラシックの中でもスタンダードそこに魅力が感じられる
トリプルエンジンモデルやタイガーシリーズと肩を並べる、トライアンフの看板モデル群――モダンクラシックシリーズ。 その中でもベーシックな立ち位置を担っているのが、ボンネビルT100だ。2002年の登場から四半世紀近い時間が流れた現在も、そのスタイルは大きく変わることなく、一方で中身は時代に合わせて着実な進化を重ね、今日までラインナップされ続けてきたロングセラーモデルである。

最大の魅力は、なんといっても伝統のバーチカルツインエンジンが生み出す、鼓動感をしっかりと味わえるフィーリングと、柔らかなボディラインを描きながらも凛とした佇まいを感じさせる、いつまでも飽きのこないスタイリングにある。そんなボンネビルT100を含むモダンクラシックシリーズは、次期モデルに向けた改良の動きも伝えられており、日本への導入も予定されている。もちろんその最新モデルにも興味は尽きないが、その前に、すでに完成の域に達していると感じられた現行モデルにあらためて触れてみたくなった。今回はこのボンネビルT100をピックアップし、じっくりと向き合ってみることにした。
トライアンフ ボンネビル T100 特徴
多くの電子制御が追加される前、つまり今こそが、買い時ともいえる
もはや、そんな出来事があったことさえ忘れてしまいそうなほど日常生活は戻ったが、今から5年ほど前、新型コロナウイルスの流行により世界はパンデミック状態に陥った。当時は他者との接触を避けるためにリモートワークが推進され、その流れの中であらためて注目を集めたのが、モーターサイクルという移動手段だった。老若男女を問わず多くの人が教習所に通い免許を取得し、仕事や日常生活での足としてはもちろん、レジャーユースとしてもバイクは大いにもてはやされた。いわゆる“令和のバイクブーム”の到来である。

現在、そのブーム自体はひと段落した感もあるが、私の肌感覚では、ブームの盛衰に左右されることなく、トライアンフの存在感は着実に増しているように思える。特に街を走るバイクの数が減ってくる冬場になると、モダンクラシックシリーズやタイガー、さらには400シリーズと遭遇する機会が増え、「トライアンフがキテいる」と感じずにはいられない。
そんな折、トライアンフ・ジャパンから、2026年初頭に開催予定の新たなモダンクラシックシリーズのレセプションイベントへの招待状が届いた。すでにイギリスのトライアンフ本社が実施したグローバルオンラインミーティングにて新型モデルの説明を受け、その進化の方向性についても理解はしている。しかし実のところ、従来モデルのモダンクラシックシリーズ、なかでもボンネビルT100に対しては、個人的に強い支持を抱いてきた。新型が気になるのは当然だが、それ以上に、完成度の高さを感じていた従来モデルの円熟した乗り味に、もう一度触れてみたくなった――それが、今回この車両をインプレッションに選んだ理由である。

もちろん、新型ではさらなるブラッシュアップが施されることは間違いないだろう。IMU(慣性計測ユニット)やコーナリングABSといった装備は、安全性の向上という点では非常に有効だ。ただ一方で、少なくともクラシックモデルにおいては、必ずしもそれらを必要としないのではないか、という思いもある。だからこそ今、あらためて従来モデルに向き合い、その魅力を確かめたうえで、来シーズンには新型にも乗ってみたい。そんな思いから、今回の試乗に臨むことにした。
トライアンフ ボンネビル T100 試乗インプレッション
すべてにおいて”過ぎない”それが持ち味となる奥深さにつながる

1970年代から80年代にかけて紆余曲折を経たトライアンフは、90年代に入ってから“新生トライアンフ”として本格的に再始動する。3〜4気筒のマルチエンジンを核としたモジュラーコンセプトを掲げ、幅広いモデル展開を進めていったのは周知のとおりだ。そして2000年代初頭、1960年代に数々のレースシーンで活躍した往年のトライアンフ・スポーツモデル、T120ボンネビルへのオマージュとして復刻されたのが、モダンクラシックシリーズの先陣を切ったボンネビルT100である。
伝統的なスタイルを色濃く受け継ぎながらも、その中身は当時としては革新的で、現代の道路事情にもきちんと適応したものだった。まだネオクラシックという言葉が一般的ではなかった時代に、その先駆け的存在として登場し、多くのファンを生み出したことは、今でもはっきりと記憶に残っている。あらためて現行モデルを目の前にすると、当時から大きく変わっていないようにも見える。しかし実際には、この20年以上の間に、細部にわたって数多くの改良が積み重ねられてきた。

たとえば外観上はキャブレターのように見える吸気系も、2008年以降はインジェクション化されている。さらに2017年のモダンクラシックシリーズ全面刷新ではエンジンが水冷化され、ラジエーターは極力目立たぬよう、フレームの隙間に巧みに収められている。そうした、バイクにさほど興味のない人には気づかれないであろう部分にまで注がれた工夫と努力に、私は長年、心からの敬意を抱きながらその進化を見守ってきた。
車体を起こし、エンジンを始動する。ドッドッドッドッ――伝統のバーチカルツインエンジンが、歯切れのよいエキゾーストノートを周囲に響かせる。そうそう、これこれ。体に伝わる心地よい振動を受け止めながら、ギアを一速に入れ、ゆっくりと走り出した。

フロント100/90-18、リア150/70R17というタイヤサイズに加え、三又を支えるフレームのネック角が比較的立てられていることもあり、ハンドリングは左右に軽く切れ込んでいく、いわばクラシックスポーツらしい特性を持つ。だからこそライダーは、着座位置や入力をできるだけナチュラルに保ちつつ、やや強めのセルフステアをうまく利用して走らせることになる。これがうまくハマったときの気持ちよさは、まさに格別だ。無理に力を加えず、自然にリーンさせるだけで、車体はすっと傾き、狙ったラインをトレースしていく。それでいてバンク角にも余裕があり、結果としてタイヤの端まできっちりと使い切ることができる。
速いか、と問われれば、決して遅くはないが、かといって速すぎるわけでもない、というのが正直な印象だ。ブレーキも、指一本でガツンと効くようなタイプではないが、必要にして十分な制動力を備え、コントロール性も高い。ライディングポジションもタイトすぎず、さりとてクルーザーのようにルーズでもない。

つまり、あらゆる要素が“過ぎない”のである。
誤解してほしくないのは、だからといって決して“つまらない”バイクではない、という点だ。エンジンはしっかりとしたトルクを備えており、その使いどころを理解すれば、交通の流れをリードする走りも難しくない。シャシーや足まわりのセッティングこそクラシカルな味付けだが、走り込むほどに、その奥深さが見えてくる。

かつてボンネビルT100ではなくスラクストンをベースにしたライトカスタム車両ではあったが、サーキットを走らせた経験がある。その際にも非常に気持ちよく走れた記憶が残っている。つまり、モダンクラシックシリーズは、根本的な基本設計が非常に優れているのだ。

私はこのボンネビルT100を、心から人に勧められる一台だと考えている。メンテナンスを含めたランニングコストは、国産メーカーと比べれば多少高く感じるかもしれない。それでもなお、ボンネビルT100には、他では代えがたい奥深さと特別な魅力がある。
先述のとおり、新型ではIMUをはじめとする電子制御デバイスが多数採用される予定だが、モダンクラシックシリーズのようなモデルにおいては、むしろシンプル・イズ・ベストと感じる向きもあるだろう。その意味で、従来モデルであっても、ボンネビルT100の世界観を味わうには、十分すぎるほどの完成度を備えている。

トライアンフ ボンネビル T100 詳細写真











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トライアンフ ボンネビルT100











