【トライアンフ ボンネビル ボバー 試乗記】ストリートレーサーの元祖、ここに極まる
- 掲載日/2026年01月30日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文・写真/小松 男

ニューモデル攻勢を続けるトライアンフ今期はモダンクラシックシリーズも刷新
ここ数年にわたり、立て続けにニューモデルを投入し、存在感を一層高めているトライアンフ。今シーズンは、同社史上最多規模となる29モデルを新たに導入するとアナウンスしており、その勢いはとどまるところを知らない。クラシックファンからスポーツライディング派、さらにはアドベンチャーユーザーまで、幅広いジャンルを網羅するラインアップ拡充は、いまのトライアンフの充実ぶりを端的に物語っている。

その中には、昨年末に発表・発売された新型モダンクラシックシリーズも含まれており、伝統的なスタイリングを踏襲しながら、各部にブラッシュアップが施されたモデルが顔を揃える。ボンネビルファミリーではT100、T120、T120ブラック、ボバー、スピードマスター。スクランブラー系では1200 XEと900が改良モデルとしてラインアップされ、いずれも現代のライディング環境に合わせた進化を遂げている。
新型モダンクラシックシリーズは、シリーズ共通の美しいクラシカルデザインを継承しつつ、リーン感応型コーナリングABS(Lean-Sensitive Optimised Cornering ABS)やトラクションコントロールといった最新の電子制御によるライダーサポートを標準装備。さらに充電用ソケットやクルーズコントロールなど、ツーリングシーンを意識した装備も充実させることで、走りの安心感と利便性の双方を高い次元で両立している。
その新型モダンクラシックシリーズの中でも、とりわけカスタムライクな雰囲気を色濃く漂わせ、ストリートシーンに自然と溶け込む存在がボンネビル ボバーだ。トライアンフらしい伝統と、現代的な解釈が高いレベルで融合した一台として、今回はこのボンネビル ボバーにフォーカスし、その魅力を掘り下げていこう。
トライアンフ ボンネビル ボバー 特徴
最古のカスタムシーンを現代に復活させた一台
そもそも「ボバー」とは、どのようなカスタムスタイルを指す言葉なのか。新型ボンネビル ボバーのインプレッションを本格的に書き綴る前に、まずはその成り立ちから振り返っておきたい。
ボバーと呼ばれるカスタムスタイルが誕生したのは、1940年代後半のアメリカ。第二次世界大戦から帰還した若者たちの間で、自然発生的に生まれたとされている。当時のアメリカには、ハーレーダビッドソンWLAやインディアン741といった軍用バイクが数多く流通していたが、それらは耐久性を最優先とした設計ゆえ、装備も多く、重量もかさんでいた。
そこで彼らは、「より速く、より軽く走る」ことを目的に、余分な装備を外し、各部を簡素化していく。具体的にはフェンダーを短くカットし、小型のヘッドライトへ交換し、装飾類や不要なパーツを取り外すといった手法だ。こうしてストリートレーサー的な性格を持つマシンを作り上げていったのが、ボバーカスタムの原点である。

なお、「Bobber(ボバー)」という名称は、英語の bob(切り落とす、短くする)に由来しており、その名のとおり“余計なものを切り落としたカスタムバイク”を意味する。スタイルありきではなく、機能性を高めるための軽量化から生まれたという点が、ボバーというジャンルの本質と言えるだろう。
せっかくなので、混同されがちなチョッパーとの違いにも軽く触れておきたい。チョッパーは、ボバーをベースとしつつ1950年代後半に派生したカスタムスタイルで、フレームに手を加えたり、フォークを長くしたりといった構造的な変更を伴うのが特徴だ。ボバーが「不要なものを外す」「短くする」といった引き算的アプローチであるのに対し、チョッパーは造形面での自由度を高めた、よりアート寄りのカスタムと言える。
1970~90年代にはチョッパーブームの隆盛もあり、クラシカルなボバースタイルは一時的に表舞台から姿を消すが、2000年代に入るとヴィンテージスタイルへの回帰やネオクラシックブームの再来によって再評価が進む。そして、その潮流の中でトライアンフは、長い歴史を持つボンネビルの名を冠したモダンクラシックシリーズに、ボンネビル ボバーをラインアップするに至った。

もともと1950~60年代のトライアンフ製並列2気筒モデルは、アメリカにおいてボバーやチョッパーのベース車両として数多く用いられてきた経緯がある。つまりボンネビル ボバーは、単なる流行の後追いではなく、トライアンフ自身の歴史と地続きにある存在なのだ。
そのような時代の流れと背景を踏まえたうえで、ボバーカスタムの精神を現代的に再構築した最新型ボンネビル ボバーに、いよいよ触れていこう。
トライアンフ ボンネビル ボバー 試乗インプレッション
総じて制御系統が改良され快活快速感が一層向上した
日本国内において、ボンネビル ボバーが初めてその姿を披露したのは、確か2016年のムーンアイズ横浜ホットロッドカスタムショーだったと記憶している。日本のみならず、世界各国から集まったトップビルダーたちが創り上げた珠玉のカスタムバイクがずらりと並ぶ中にあって、ハードテイル風スイングアーム、フローティング風ソロシート、極太フロントタイヤなどでスタイルを固めてきたボンネビル ボバーの存在感は決して埋もれることなく、むしろ強烈なインパクトをもって来場者の視線を集めていた。
量産車でありながら、まるでショーバイクのような完成度。カスタムの祭典という舞台において、その佇まいがまったく引けを取らなかったことを、今でもはっきりと覚えている。

その後、さまざまなメディアで紹介するために、幾度となく車両の取材撮影を行う機会に恵まれたが、現場で同行するカメラマンやデザイナー、編集スタッフの口からは、決まって「なんて美しいバイクなんだ」という言葉がこぼれていた。それほどまでに、ボンネビル ボバーの造形は、見る者の感性にストレートに訴えかけてくる力を持っていたのである。
そしてあれからおよそ10年。ボンネビル ボバーは細部にわたるブラッシュアップを重ね、新型へと進化を遂げた。
まずはスタイリングからチェックしていく。ひと目見ただけで従来型と見分けるポイントとなっているのは、デイタイミングライトが備わったヘッドライトケースだ。あとは気づきにくいが、燃料タンク容量は従来より拡大され、約14Lへとアップデートされている。これにより航続距離が伸び、ロングツーリング時の給油頻度も抑えられるようになった。さらに、それに合わせるかのようにシートも見直され、クッション性を高めた仕様へと変更。長時間のライディングでも疲労を感じにくい設計となっている。

エンジンを始動し、走り出す。左右2本出しスタイルのマフラーから放たれるエキゾーストノートは、トライアンフ伝統のバーチカルツイン(直立並列2気筒)らしい歯切れの良さと重厚さを併せ持ち、耳に心地よく響いてくる。そのサウンドを聞いているだけで、自然と頬が緩んでしまう。だが、このマシンの魅力は音だけにとどまらない。スロットルを開ければ、その心臓部は想像以上に力強く、ライダーに濃密なライディングプレジャーを与えてくる。
1200ccの水冷並列2気筒エンジンは270度クランクを採用し、豊かな鼓動感を演出。最大トルクは106Nmを4000rpmで発生し、2000〜3000rpm付近から湧き上がるようなトルクによって、背中を押し出されるような加速感を味わえる。この感覚は、ある種の中毒性すら覚えるほどだ。

確かに、腕が引き伸ばされるかと思うほどパワフルではある。しかしそれは、扱いきれない暴力的なパワーではなく、ライダーの意思に素直に応えるコントローラブルなもの。だからこそ、ボンネビル ボバーは、ストリートでこそ真価を発揮する“ストリートリーガルレーサー”的な楽しみ方ができる一台だと感じさせてくれるのである。
高速道路においても、そのポテンシャルは遺憾なく発揮される。特に低速域ではやや硬めに感じられたサスペンションも、速度を上げていくにつれてしなやかさが顔を出し、道路の継ぎ目や段差を通過する際にも、しっかりとストロークして衝撃を受け止めてくれる印象だ。単に硬い・柔らかいという話ではなく、速度域に応じてキャラクターが変化するあたりに、車体全体としての完成度の高さがうかがえる。
加えて、クッション性を高めた新設計シートの恩恵も大きい。路面からの入力をうまくいなしながら、体重を面で支えてくれるため、長時間走行時の疲労感も抑えられている。クルーザーテイストを持つボバーでありながら、移動性能もしっかりと確保されている点は評価したい。

ハンドリングに関しては、極太フロントタイヤや、やや前傾姿勢となるライディングポジションの影響から、いわゆるボバー系カスタムバイクらしい「立ちの強さ」を感じるのは事実だ。しかし、ハンドルへの適切な入力に加え、内ももでタンクをホールドし、ステップにもきちんと荷重していくと、思いのほか素直に旋回してくれる。癖を理解して向き合えば、決して難しいバイクではない。このあたりは、単なるスタイル先行ではなく、量産メーカーとして長年培ってきた車体設計のノウハウが生かされている部分だろう。「さすがトライアンフ」と感じさせられるポイントでもある。
また、容量が拡大された燃料タンクは、航続距離の面だけでなく、体格の良いライダーにとって車体をホールドしやすくなるという副次的なメリットも生んでいる。ニーグリップがしやすくなり、結果として車体コントロール性の向上にもつながっている点は、見逃せないポイントだ。

新型ではライディングモードがロードとレインの2種類から選択可能となり、加えてコーナーリングABSやトラクションコントロールも装備されている。通常のペースで走っている限り、電子制御の存在を強く意識する場面はほとんどないが、それこそが優れたセッティングの証と言えるだろう。万が一の場面でさりげなく介入し、ライダーをサポートしてくれるという意味で、大きな安心材料となっている。実際、ワインディングロードであえて少し意地悪なスロットル操作をしてみると、リアタイヤが流れ出す前にトラクションコントロールが穏やかに抑制してくれた。クラシカルな見た目からは想像しにくいが、中身はしっかりと現代のバイクである。
今回の新型ボンネビル ボバーへのアップデートは、外観上の変化こそ控えめだが、内容をひも解いていくと、確実な正常進化が施されていることが伝わってくる。とりわけ乗り味の熟成度は高く、懐の深さが一段と増した印象だ。

スタイリングに惹かれて選ぶのはもちろん大いにアリだが、それだけにとどまらず、「走らせて楽しいボバー」へと進化している点が、新型の最大の魅力と言えるだろう。

足つき性の良さも相まって、ボンネビルシリーズの中でも屈指の人気を誇るボンネビル ボバー。新型となった今、これまで気になりつつも踏み切れなかった人の背中を、そっと、しかし確実に押してくれる一台に仕上がっている。
トライアンフ ボンネビル ボバー 詳細写真












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