VIRGIN TRIUMPH | トライアンフ ストリートトリプルRS(2017) 試乗インプレッション

トラインフストリートトリプルRSの画像
TRIUMPH STREET TRIPLE RS

トライアンフ ストリートトリプルRS(2017)

排気量アップと電制フル装備で
生まれ変わった3気筒ロードスター

ストリートトリプルは2007年にデビューした3気筒エンジン搭載のスポーツネイキッドである。スピードトリプル譲りのファイタースタイルのアグレッシブな外観にデイトナ675ベースのエンジンとシャーシを組み合わせ、ストリートでの軽快なフットワークとサーキットでも通用する運動性能を兼ね備えたモデルとして世界中で人気を博してきた。その最新版ではついに排気量が765ccに拡大され、電子制御テクノロジーを満載した完全新設計のニューモデルとして登場した。新シリーズでは「S」、「R」、「RS」のバージョン(「R」は国内未導入)があり、それぞれ足まわりや電子デバイスのグレードや最高出力値も異なっている。今回は最上級バージョンの「RS」について解説したい。

トライアンフ ストリートトリプルRS 特徴

トライアンフ ストリートトリプルRS 写真

エンジンと車体を完全新設計し
ライディングモードを標準装備

新型ストリートトリプルは従来モデルをベースとしながらも、エンジンや車体、足まわりのすべてを刷新した完全新設計モデルである。

エンジンはデイトナ675系の水冷並列3気筒DOHC4バルブをベースに、ボアとストロークをそれぞれ拡大することで排気量を90ccアップした765ccに設定。クランクやピストン、シリンダーなどを含め80点以上の新作パーツが採用されている。これにより、ハイエンドモデルの「RS」では最高出力を従来モデル比で16%上回る123ps/12,000rpmを実現。もちろん、歴代最強スペックとなっている。合わせて1速、2速のギアレシオをショート化して加速力を向上。新設計のスリップアシストクラッチを装備することで、シフトダウン時のコントロール性とクラッチ操作の快適性も高められた。

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特徴的なデザインのアルミダイキャスト製ツインスパーフレームは一見すると従来型と同じに見えるが、よく見ると細部の作りが異なる新作。マフラーの取り回しを考慮した完全新設計のガルウィングタイプのスイングアームは、縦剛性をアップしつつ横剛性をあえて落とすことで高速安定性と旋回性を高次元で両立。さらにスイングアームピボット位置の最適化により、加速時のトラクションをより効果的に路面に伝えられる設定となっている。ちなみに車重も従来型より軽い166kgとクラス最軽量レベルに仕上げられている。

足回りも充実し、「RS」の前後サスペンションにはショーワ製のφ41mmビッグピストン倒立フロントフォークと、別体式リザーバータンク付きのオーリンズ製STX40モノショックを装備。ブレーキシステムも前後ブレンボ製で、特にフロントはM50ラジアルモノブロックキャリパー、およびレシオ可変タイプのラジアルマスターシリンダーを採用。OEタイヤにピレリ製ディアブロスーパーコルサSPを標準装着するなど、まさにスーパーバイク並みのハイスペック装備を誇る。

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そして、今回見逃せないのが電子制御の進化だ。ライド・バイ・ワイヤ式スロットルが投入され、「RS」では5種類のライディングモードを搭載。「ロード」「レイン」「スポーツ」「トラック」「ライダー」の各モードに合わせてスロットルレスポンスとABS、トラクションコントロールの各レベルを自動的に最適化(「ライダー」は任意設定)してくれる仕組みになっている。また、クラッチ操作を必要とせずにシフトアップが可能なクイックシフターも標準装備された。

車載コンピューターも新しくなり、角度調整式のTFTフルカラーディスプレイに表示された各種情報を、手元のモードボタンや5方向ジョイスティックによって集中制御。走行中でもライダーが直感的に操作できるシステムになっている。

車体デザインも新型スピードトリプルと共通イメージのフロントマスクに刷新され、スポーティなダブルシートや一層コンパクト化されたマフラーなども含め、さらにアグレッシブで洗練されたスタイリングへと昇華されている。

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トライアンフ ストリートトリプルRS 試乗インプレッション

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走りの性能だけでなく
グレード感も全方位的に深化

パッと見た感じでは従来型とあまり変わっていない印象だが、よくよく見るとフロントマスクやサイドカウル、シートのデザインから、エンジン、スイングアーム、前後サスペンションに至るまで、ほぼすべてのコンポーネンツが刷新されている。誰が見てもそれと分かる、ストリートトリプルとしてのアイデンティティは色濃く残しつつ、細部にこだわりをもって進化・熟成させていくトライアンフらしい作品だと思う。

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それにしても、今回は徹底的に手を加えてきた。

ライディングポジションはスリムでコンパクト。ワイドで低めなバーハンドルは従来と同じヨーロピアン・ファイタースタイルで、軽く上体が前傾する戦闘的なフォームとなる。シートの高さも標準的だが、スリムな車体としなやかな前後サスの沈み込みによって足着きは良い。新型では前後分割式のダブルシートになったおかげで座面が広く、着座位置に自由度が増した感じだ。

エンジンを始動した瞬間、鮮やかなTFTディスプレイの大画面が目に飛び込んでくる。左手元のジョイスティックで簡単にメーターのレイアウトも切り換えられるのだが、そのアクションがまた優雅。よくできたCGを見ているようで、操作自体を楽しめる。これは新鮮な感覚だ。

エンジンを始動し軽くブリッピングしてみる。アクセル操作はライド・バイ・ワイヤで軽く、反応もタイムラグがなく俊敏だ。まずはデフォルトの「ロード」モードで走り出してみたが、クラッチのつながりも良く、軽やかに加速していく。トライアンフ3気筒独特のしっとりとビブラートを効かせたサウンドに思わず聞き惚れる。

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さらにスロットルを開けていくと、4輪スポーツカーにも似たラグジュアリーな咆哮ともに、豊かな中速トルクに乗って弾かれたように加速していく。トリプルはやはり音が気持ちいい。

力強さも感じる。排気量を90ccほど増やしたことで、このエンジンでもっとも美味しい中速域がさらに魅力的になった。筋肉をつけてひとつ階級を上げたボクサーのようにパンチ力が一段と増している。

このように、乗っていると興奮してアグレッシブな面ばかりに目が向いてしまうが、実は低速域での扱いやすさが向上していることも大きなポイントだ。排気量が増えてトルクに余裕が出たことやCPUの熟成によるところが大きいと思うが、極低速域でのパワーデリバリーが実にスムーズだ。以前はアイドリングちょい上の領域にやや線の細さを感じたが、新型では安心してUターンなどもこなせるようになった。

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今回、車体も軽量化されているが、このクラスにして166kgという驚異的なダイエット効果は乗ればすぐに分かるはず。試しに左右に車体を振ってみるが、とにかくフットワークが軽い。加えて瞬発力のあるパワフルなエンジンの組み合わせとなると運動性能は推して知るべし。

これを支えているのがグレードアップした足まわりだ。最上級バージョンの「RS」はフロントにショーワ製BPF、リアにオーリンズSTX40を備えている。街を流していても“いい脚”のグレード感は伝わってくるものだ。ストローク初期のビギニングの入りの良さが路面のギャップを滑らかに吸収してくれる一方で、攻めるコーナリングではしゃきっと感のある筋肉質な手応えで接地感を返してきてくれる。OE装着されたスーパーコルサSPのしっとりとしたグリップ性能も大きく貢献していると思う。

ブレンボ製で固めたブレーキシステムは強烈かつシュアなタッチで速度域を問わずコントローラブルで、ABSの作動感もより自然になった。新たに装備されたクイックシフターの作動もスムーズで気持ちよくシフトが決まるし、スリップアシストクラッチのおかげで急激なシフトダウンでも安定して減速することができる。これらは元々レース用パーツだが、慣れるとこんなに楽で便利なモノはない。もちろん安全にも寄与するので、走っていても気持ちに余裕が生まれる。

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最後にライディングモードについて。「レイン」モードはスロットルレスポンスが穏やかでトラコンの入りも早いので、雨天だけでなくドライでもまったり走りたいときなどにおすすめ。「トラック」モードにすると俊敏にトルクも弾けるので、その気になればフロントアップも軽々と決まるほど。サーキットに持ち込めば、軽さを武器に格上のスーパースポーツも追い回せるだろう。

TFTディスプレイの美しさは前述のとおりだが、ジョイスティックひとつで完結できる電制操作はシンプルでとても分かりやすい。特にライディングモードの切り替えについては、画面の中のピクトグラムをモードボタンで選択するだけで走行中でも簡単にできる。今の時代、電制が流行りだが、これを誰でも簡単に使いこなせるようにした点で素晴らしいと思う。

ストリートトリプルは元々バランスのとれた扱いやすいモデルだったが、今回は排気量を増やしてよりパワフルに、さらに軽く俊敏に車体も足まわりも含めて大幅にアップグレードするなど全方位的に魅力を高めてきた。心揺さぶるトリプルサウンドを楽しみつつ、トライアンフ独自のスポーツマインドに触れたい人には是非おすすめしたいモデルだ。

トライアンフ ストリートトリプルRS の詳細写真

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完全新設計の水冷並列3気筒SOHC4バルブ765ccエンジンは、ボア・ストロークの拡大とともにクランク、ピストン、ニガジルメッキアルミ製バレルなど80点以上のパーツを新作し、出力、トルクともに向上。ピークパワーは従来比16%アップの123ps/11,700rpmとなり、最大トルクも13%高められた。
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ブレーキは前後ブレンボ製を採用。フロントはφ310mmダブルフローティングディスクとM50タイプの4ピストンラジアルモノブロックキャリパーを組み合わせる。切り換え式ABSを標準装備。ブレーキ、サスペンション、タイヤを含め、足まわりのグレードは「S」と「RS」ではすべて異なる。
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スイングアームも剛性バランスを最適化した完全新設計のガルウイングタイプとなった。マフラーのデザインも刷新され、よりコンパクト化されている。
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ショーワ製φ41mmBPF(ビッグピストン・フロント・フォーク)を採用。最新式のセパレートファンクションタイプで、フォークトップに伸び側と圧側の減衰力アジャスターを集約しているため簡単に調整しやすい。プリロード調整はボトム側で行う仕組み。
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リアショックはオーリンズ製STX40ピギーバッグリザーバータンク装備のリンク式モノショックを採用。シンプルなロックリングタイプのプリロードアジャスターに伸び側、圧側の減衰力調整機構を備えたフルアジャスタブルタイプだ。
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燃料タンクのデザインは従来モデルと同じに見える。容量も17.4リットルと共通だ。スリムなライポジを実現する絞り込まれたニーグリップ部分が印象的だ。
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新型のシートは従来のワンピースタイプから、よりスポーツ志向の前後独立タイプへと変更されている。ライダーシートのフラット面が広くなり、ライポジの自由度が向上。その分、リアシートはやや小ぶりになった。
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伝統のツインヘッドライトは従来の5角形をあらため、角のとれた逆三角形を採用。レンズ表面内側部分にはLEDタイプのポジションランプも新設され、インテーク用スクープ一体型のフライスクリーンを標準装備するなど「スピードトリプル」と共通イメージとなっている。
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バックミラーはトライアンフ伝統のバーエンドにマウントされるタイプ。自分の肩が映らないので後方視界に優れる。左手元に装備されたスイッチハウジングはウインカースイッチを挟んで上が「モード」切り換え用、下が「5方向ジョイスティック」。使ってみれば数分で慣れて直感的に操作できる。
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ブレンボのRCSラジアルマスターシリンダーを採用。レバーはスパン(近さ)だけでなく油圧レシオを3段階で調整可能。ダイヤル調整で握りしろを多くとって穏やかなコントロール性を重視したり、短いストロークでカチッとした剛性感を出したりと好みによってタッチを変えられる優れモノだ。
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ヒールプレートの裏側を見るとクイックシフターの圧力センサーが装備されている。シフトアップ側だけに機能するタイプで、熟練ライダーの2.5倍の速さでギアチェンジが可能。シフトショックも最小限でスムーズに作動する。
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「RS」には完全新設計の角度調整式フルカラー5インチTFTディスプレイを標準装備。新型の車載コンピューターの各種情報を美しいグラフィックで表示する。スタイルと呼ばれる3種類(計6パターン)のレイアウトがライディングモードによって切り替わる他、任意に設定もできる。

SPECIFICATIONS – TRIUMPH STREET TRIPLE RS

トライアンフ ストリートトリプルRS 写真

価格(消費税込み) = 142万円

※表示価格は2017年2月現在

トライアンフの3気筒ミドルスポーツネイキッド。最新モデルでは排気量を765ccに拡大し、ラインディングモードを装備。RSはその最上級バージョン。

  • ■エンジン型式 = 4ストローク 水冷並列3気筒DOHC4バルブ
  • ■総排気量 = 765cc
  • ■ボア×ストローク = 78×53.4mm
  • ■最高出力 = 90kW (123ps) / 11,700 rpm
  • ■最大トルク = 77 Nm / 10,800 rpm
  • ■トランスミッション = 6速リターン
  • ■サイズ = 全長2,065mm× 全幅735 ×全高1,085mm
  • ■車両重量 = 187kg
  • ■シート高 = 825mm
  • ■ホイールベース = 1,410mm
  • ■タンク容量 = 17.4リットル
  • ■Fタイヤサイズ = 120/70-17
  • ■Rタイヤサイズ = 180/55-17

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