VIRGIN TRIUMPH | タイガーエクスプローラーXCx 長期インプレ vol.03【総合チェック編】 トピックス

タイガーエクスプローラーXCx 長期インプレ vol.03【総合チェック編】

3気筒ならではのサウンドと走りが
どんな道でもとことん楽しめる作り込み

タイガーエクスプローラーXCxの画像

新型タイガーエクスプローラー(以下、EXP)の試乗記最終回では改めて市街地、高速、ワインディング、オフロードそれぞれに共通する魅力に触れてみよう。

テスト車はスポークホイールを装備するXCx。キャストホイール装備のXR系とエンジンや車体、サスペンションなどの基本構成は同じ。スポークホイールの美点は乗り心地の良さだ。キャスト式よりわずかに重いが、路面からのショックが少ない。速度が低めの市街地でも荒れた路面のワインディングでもすぐに「しなやかさ」が感じ取れるだろう。オンロードでのカチッとした乗り味を望むならキャストホイールのXR系。オフロードを含めたしなやかさ優先ならスポークホイールのXC系だ。

とは言っても厳密に比較すればの話でキャストホイールのXR系もサスの進化によってナラシの段階から乗り心地は上々。あとは外観や手入れのやりやすさも含めて好みの問題。いずれもタイヤはチューブレス仕様で空気圧を少し落としてダート走行を楽しむならXC系。XR系はタイヤの空気を入れるエアバルブがL字型で真横に向いているためガソリンスタンドなどでも空気圧調整がやりやすい。XC系はオフ走行を意識した垂直タイプ。ただし、バルブは軽くしなやかに曲がるタイプなので空気圧調整の作業性は確保されている。

前後サスにはTSAS(トライアンフ・セミ・アクティブ・サス)・WP製電子制御式サスを装備するXCx。Cコンフォート(ソフト)・N(ミドル)・Sスポーツ(ハード)それぞれの違いは明確だが、いずれの設定も乗り心地が良い。特にリアの初期作動がしなやかで速度や路面状況により中間ストローク付近からコシが強くなり、かといってフルボトム付近でいきなり硬くなることもない。スポーツ設定でもゴツゴツする乗り味にはならずにカチッとしたコシの強さがリニアに増大するためシュアなライントレースができる。

十分なストローク量を持つ前後サスのためコーナリング中に突如現れたギャップ(段差)に乗り上げても車体がビシッと安定して跳ねない。ロードバイクと異なり、ビッグオフならではの長めのサスストロークを使って走りを楽しむEXPだからこそ、実に頼りになるポイントだ。

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例えば荷物満載&タンデム走行しても車体は尻下がりにならないリアサス自動プリロードアジャスターを持つため、最上の乗り心地を維持しながら、適正な車体姿勢のままどんな走行ペースでもふらつかずに狙ったラインをトレースする。ソロ、タンデム、荷物の有無などのサス設定ボタンをいちいち合わせる必要がなく、ゆっくり走ったり、時にはペースを上げてコーナリングを楽しんだりなど、ライダーの気ままな乗り方に瞬時に賢く対応する作りになっている。

従来のハイスペックなフルアジャスタブルサスではライダーにサス設定能力があることを大前提に特定の場所、特定のスピードでのみ適合できるものの、他の場所や別の速度域では硬すぎや柔らかすぎなどピンポイントでフィットしてもすべての走行シーンで適合とはなりにくい。対する新型EXPは柔軟性を確保しながら、どんな路面にも対応できる高品位な乗り味とスポーツ性の両立を実現している。シャフト駆動を忘れさせる軽快なフットワークを含めてIMU 6軸センサーによる安定姿勢制御と電子制御サスの連動が生みだす絶大なる安心感と楽しさはまさに格別な新世界と言える。

ちなみXCxではロードとレインとオフロードという3つのライディングモードが選択でき、それぞれに適したサスペンション設定が選択できるのだが、大半はロード設定でことは足りる。

こうしたIMU連動の優れた前後サスになれば、従来型以上に限界走行が可能となるため、より高度なブレーキ性能が問われるのだが、新採用したブレンボ製モノブロック4ピストンラジアルマウントキャリパーを持つフロントディスクブレーキは実に強力かつコントローラブルだ。最弱なレバーの握りはじめから、リアが浮くのではないかと思うほど最強なレバーへの握り込みをしてもABSのキックバックを受けることなく最短距離で制動してくれる。ブレーキ操作に絶対の自信を持つライダーでも、この制動力とABSなら不満を持つことはないだろう。

トライアンフはどのジャンルの機種でも操縦安定性で常に高い評価を受け続けているがEXPも例外ではない。フル制動時の車体安定性だけではなく、制動しながらのコーナリングでもマン・マシンの一体感が味わえる。深いバンク状態からのブレーキングで思わずABSを作動させても、信じられないぐらい安定した旋回が続けられる。ロードスポーツ車に勝るとも劣らない人車一体の走りが楽しめ、高回転で引っ張るほどEXPは車体がコンパクトに感じられるのだ。

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フロントブレーキはリアブレーキ連動型だが、これが制動時や制動しながらの旋回安定性に大きく貢献している。いざという時のリアブレーキによる姿勢安定と強力なフロントブレーキ入力の連動は実に頼もしい。ブレーキペダルはリアブレーキのみ作動するので、コーナー途中からのスロットルのギクシャク(いわゆるドンツキ)防止やパワーを引き出す作業がやりやすい。Uターンもリアブレーキのみ使って回ることができる点も安心。言ってみれば直線からカーブの途中まではフロント主体。カーブ後半やUターンはリアが主体という基本操作に適している。ワインディングだけではなく、たとえサーキット走行でもこのブレーキ構成と性能に不満を覚えることはないだろう。

前後タイヤのサイズがアップしたのは、電子制御技術に支えられて動力性能とブレーキ性能が大幅にアップしたことに関係している。従来のサイズではポテンシャルアップ分がカバーしきれなくなったためと判断できる。もちろんライバル車と同じサイズにしたことは商品性としても外せない要件だったとも言えるだろう。タイヤは太くなった分だけ、コーナーへはかえって大胆にバンキングする乗り方が良くなった。車体倒し込み初期のハンドリングは旧型とは異なると解釈していい。装着されているタイヤはメッツラーのツアランスNEXTだが、ウエット性能も十分な上にハンドリングがどんな走行ペースでも自然。騒音や乗り心地、ライフも含めてベストバランスのタイヤだ。

エンジン設定を「オフロード」に選択すればトラクションコントロールのわずかな介入とABSなしのリアブレーキとなってアクセルとリアブレーキで自在に車体の向きが変えられる。ヌルヌルの滑りやすい林道でもバランス補正がやりやすく、丸太越えでも適切なスロットルタイミングとサス反力が使えるため、フロントアップも容易にできる。カタログの車体重量値のことを忘れてしまうほど軽々しく走ることができる。

前回のテストから約2,000km以上にわたりさまざまな道を走ったが、上記の魅力以上に進化を実感したのは、より野太くなった3気筒サウンドと淀みなく高回転までシャープに吹き上がるエンジンフィールだ。しかも燃費は旧型よりも良好で市街地でリッター20km/L前後となることが多く、ツーリングでは22km/L以上をマークすることがあり、クラストップレベルの低燃費を実現している。しかもエンジンは振動が減っただけではなく、エンジンのヘッド周りからくるメカノイズや駆動系のノイズも減少。耳に入る雑音低減がツーリングバイクとして必要な「快適性」アップに貢献している。

ロングランや渋滞でクラッチ操作が辛くなるものだが、トルクアシスト式になった新型EXPは操作荷重が大幅に減っている。シフト時のショックと音も低減している。

クルーズコントロール機能は「眠くなるのではないか」と質問されることがあるが、結果はその逆。快適性による集中力維持が明確。実のところ、一定速のつもりでも無意識に速度を変化させているライダーは少なくないが、クルーズコントロールを使うと速度一定によって体にかかる負担が減って疲れにくくなる。手の力は抜けて、肘や肩まで完全にリラックスできるメリットがとりわけ大きい。クルージングはリラックスできてこそ意味がある。グリップを握る手の力が抜けることで、はじめて微細なバイクの動きが体感できる。それはバイクとの会話の始まりでもある。その意味でもクルーズコントロール装備の意味がある。

バイクはクルマよりもホイールベースが短く、相対的に重心位置が高くなるため、エンジンパワーの増減や前後ブレーキの入力も関連してピッチングモーションが大きく発生しやすい。これがバイクライディングの面白さでもあると同時に疲労の元になるのだが、新型EXPはIMUと組み合わせた電子制御サスに加えてクルーズコントロールを使用することでより大きな快適性を手にした。高速走行でもむやみにスロットルを開け閉めしなくなり、無意識のうちに低燃費走行していた。まさにこれぞ想定外の副産物。ともあれ、スロットル保持から解放される右手と右腕の楽チンぶりは想像以上だ。

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EXPは走る道を選ばない。どんな道でも退屈しないスポーツとして楽しめる。可変スクリーンを低くして時にスーパースポーツ車のようにシャープに、可変スクリーンをアップして時に防風性を優先してクルーザーのようにゆったりと。そしてある時は森の中へ風のようにサラリと駆け抜ける。

堂々としてタフなスタイルのEXPだが安全・安心・快適を軸に、どんなフィールドにも安心して進むことができる。高いポテンシャルを存分に引き出しながら走る・曲がるの楽しさが、いつまでもとことん味わい続けられるだけの深いテイストがコイツには詰まっている。

最先端のテクノロジーを装備しながら、バイクの基本としてのオーソドックスな動き、ピッチング、ロール、そしてヨーの3方向への動きがもっとも自然に、しかも奥深く味わえる稀有なビッグオフ。それが新しいタイガーエクスプローラーだと確信する。

タイガーエクスプローラーXCxの走行性能&ディテールをチェック

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舗装されていない場所や急な坂道でも、ちょっとした段差でもタイガーEXPならスイスイ入っていける。歩くような速度でのバランスが取りやすいのは4気筒並みに粘るエンジン特性と、どの速度レンジでも安心できる自然なハンドリングを持っているためだ。
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外観的に大きく変わったのはフロントからタンクにかけるカウル類の形状。旧型のいかついイメージから速度感のあるシャープなラインへ変更。タンクサイドのtriumphのロゴデザインもモダンなタイプから伝統美を感じさせる旧来タイプに変更された。
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初めてのワインディングでも、思い通りの減速を約束するブレンボ製ブレーキキャリパー。加えて6軸慣性計測ユニット、IMUによる適切な姿勢制御&コーナリングABSが安心をさらに大きくしてくれる。優れたブレーキだけではなく、トルクアシスト式クラッチへ変更したことでクラッチレバーの操作荷重が大きく低減して瞬時に正確なシフトダウンが可能となった。コーナー立ち上がりの3気筒サウンドがたまらない快感。
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落ち葉がところどころに舞い散るハーフウエットな路面でもタイガーEXPは前後輪の高い接地感を実感しながら確実に狙ったラインをトレースしてくれる。車体が大きく見えても実はタンク部分がスリムなためコーナリング中のフットワークは思いのほか軽快。バンク角も必要にして十分確保されている。
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凸凹があって滑りやすいオフロードもタイガーなら行ける。3気筒エンジンの粘りとハイトルクによってバランス補正がとてもやりやすいからだ。パワーアシスト式の軽い操作性とミートしやすいクラッチ特性、そして接地感の高い前後サスの貢献度が大きい。スタンディング時のポジションも絶妙でずっとスタンディングのまま走り続けられる。
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丸太越えに挑戦したが、意外に車体が軽く感じられた。丸太に前輪タイヤが当たった時のフロントサスの入りが非常にわかりやすく、そのスプリング反力を使ってフロントアップする流れが掴みやすいからだ。トラクションコントロールをオフにすることによってスロットルを開けるタイミングとスロットル開度についていろいろと試せることが楽しい。まずは丸太には90度直角に入ることがテクニックとしては基本。
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ちょっとした場所さえあればフロントブレーキのタイミングで後輪を浮かすことができる。オンロードバイクではなかなかトライできないことが、タイガーEXPなら自由にトライできる。軽度のジャンプや後輪をパワーでスライドさせることもできるが、難易度の低い林道であればノーマルタイヤでもスイスイ入って行ける。フィールドはまさに無限大。バイクの挙動が実に把握しやすい基本に忠実な作り込みだから、さまざまなシーンでスキルアップに挑戦できる。これぞ新型タイガーEXPならではの世界だ。
試乗ライダー プロフィール
柏 秀樹
タイガー955iで15万キロメートル走って、初期型エクスプローラーで7万キロメートル走ってきたタイガー好きなジャーナリスト。パリダカ4回参戦などビッグオフの経験も取り込んだライディングスクールKRSを精力的に各地で開催している。

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