VIRGIN TRIUMPH | DAYTONAレースダイアリー vol.07 江本陸さんのコラム

DAYTONAレースダイアリー vol.07

  • 掲載日/2015年04月17日
  • 文/江本 陸(ライター)  写真/横山 泰介

レースへの、新たなモチベーション。

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2014年に規定タイムを7秒とするMAX7を卒業、MAX4への初参戦を果たしたものの、2015年のシーズン開幕戦となるMAX4への参戦をずっと決められずにいた。何故かと言うと、ここしばらく軽いスランプに見舞われ、MAX7とMAX4の規定タイムの狭間に陥り、行き先が見えなくなっていたからだ。しかもMAXグループ主催の最高峰クラス、スーパーマックス(2014年最終戦最速タイムは0分59秒)との混走となれば、いくら大人のレースごっことは言え生半可な気持ちで参戦するわけにもいかない…と、マイナーな気分を抱えたまま煮え切らず、悶々とする日々が続いていたのだ。

レース開催10日前となったある日、主催者の臼井氏から「どうする?迷ってるいるんだったら、出た方が良いよ。なんだったら最後尾スタートのハンディーを付ける条件で、MAX7に戻るという手もある」という、天使のさえずりが電話の向こうから聴こえてきた。一瞬心がグラッと揺らいだ。がしかし、それでは気が引けるし、潔い良い行為だとも思えない。

僕の気持ちはシーソーゲームの様に行ったり来たりを繰り返すばかりだった。わずか12年と短いレースライフではあるが、行く道を失った旅人の様に、これほど心が決まらず彷徨い続けた事は無かった。

「じっとしていても同じ思いがグルグルと頭の中を駆け巡るだけだ! 練習に行ってその時のフィーリングで決めよう」そう思った瞬間、指先がキーボードを走り、筑波の走行予約を取り付けた。

練習当日の道中「バイクにも昨年のレース以来乗っていないけど、うまくいくだろうか…」という不安感も多少なくはなかったが、「あれこれ考えてもしょうがない、今日はタイムを気にせず気持ちよく走ろう」と、スッキリした気分で早朝のベイブリッジ、レインボーブリッジを後に筑波へと向かった。

到着するや足早に準備を進めると、“始めよければ終わりよし”という諺通り、久々のサーキットではあったが緊張する事も無く、思いのほか作業もスムースに進み「わるくないな」という声無き言葉が心の中を駆け巡った。

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1本目、2本目は目一杯走らず、3本目はリラックスしつつもペースを上げていく。すると何とも言えぬ爽快感が込み上げてきた。「これならイケルかも」という、うっすらとした期待感が湧き上がってきた。

実は親しい人の助言もあり、何とは無しにMAX4への出場を視野に入れてはいたが、走行後の横浜にある『にしだモータース』の西田氏、通称“にしも”の「いい感じじゃないですか。レースはコンマ何秒でも早く走る事が大切。上に行かないと自分のためにならない」とのアドバイスに我がマインドもプッシュアップされ、その場で主催者にMAX4へのエントリーを申告したのだった。

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いよいよ迎えたレース本番、天候は晴れ。最高のレース日和となった3月29日。トランポからバイクを降ろそうとしたその時、天井に下げたグローブのフックがスクリーンに絡み、バキッ! という音と共にスクリーンが破損。普段なら良からぬ事への予兆かと思う所だが、何故かこの日は「O.K. これで厄が落ちた」と、ネガティブマインドに陥る事なく気持ちはこの日の天気の様にスッキリと晴れ渡っていた。

しかし現実はそう甘くはない。予選は7秒とタイムも振るわず、案の定、決勝は最後尾からのスタートとなった。

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レースは仲間やヘルパーとのバイブレーションがシンクロするかどうかが大切だと言う。この日は気心知れた『パールイズミ』のチー厶メイト角田氏、現在はフリーのメカニックで全日本に参戦する元トライアンフ市川のメカニック森氏、名誉の負傷で休眠中の同じデイトナライダーの土屋氏。彼らの迅速かつ手際の良いヘルプやライン取りへのアドバイス。そしてゲストとして駆けつけてくれた『DEUS』の仲間達の応援も心強く、一抹の不安も抱く事なく「今日は自分の為に思いっきりレースを楽しむぞ」と決勝レースに臨んだのだった。

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スタート直後はBMW S1000RRを抜くもアッという間に抜き返されてしまった。それでも先行する2台のドゥカティに追いつこうとペースを上げて行った。

結果は順位こそ上げる事は出来なかったが、50代最後のシーズン初戦で1分5秒台と自己ベストを更新、目標タイムの1分4秒へと一歩近づく事が出来た。数々の助言により、迷いを吹っ切り、レースに臨んだ事で前に進むための確かな手応えを掴み、レースへのモチベーションも更に高まるという御褒美を頂く事が出来た。

サンデーレースへのホットな気持ちと共に、6月の筑波ツーリストトロフィーNMクラス、MAX3富士への参戦を見据えつつ、デイトナの更なるレーサー化を押し進める今日この頃だ。

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