VIRGIN TRIUMPH | DAYTONAレースダイアリー vol.03 江本陸さんのコラム

DAYTONAレースダイアリー vol.03

  • 掲載日/2014年12月19日
  • 文/江本 陸(ライター)  写真/横山 泰介

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モーターサイクルを題材にした映画は、日本の草刈氏が熱演した『汚れた英雄』(原作を読むべし!)、アウトローものの代表格マーロン・ブランド主演の『ワイルドワン』、ピーター・フォンダとデニス・ホッパーの最強コンビによる『イージーライダー』、青春名画はなんといっても、素肌の上にライダーススーツを着込んだレベッカとダニエルの禁断の愛を描いた胸キュンの『あの胸にもう一度』、そしてレースものといえば、ロバート・レッドフォード主演の『お前と俺』と、作家の意図によってその表現方法も千差満別だ。そんな中でも実話を元にレーシングスピリットと男のロマン、そしてヒューマニティーをアンソニー・ホプキンスの名演技と共に思いっきり描き切った『世界最速のインディアン』が、今まで観てきたモーターサイクル映画の中では最高級品、まさにミシュランだ。47歳にしてやっとレースに辿着いた、遅まきのサンデーレーサーにとって永遠のオイリーボーイ、バート・マンローのレース、そしてスピードに対するチャレンジ精神に対してはリスペクトの一言に尽きる。中でもあのワンフレーズ「歳は取っているが、心は18歳だ」には何度観ても胸が熱くなる。ひょっとしたら、「彼のような人生を送れたら最高じゃないか」という、自分がどこかにいるような気がする。

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今回は僕にとってのシーズン最終戦、MAX4への参戦がメインテーマなので、映画に関してはまた別の機会に回すとして、肝心のレースシーンにフォーカスを切り替えよう。

レース前夜の12月6日土曜日、何を観るでも無くテレビのチャンネルを切り替えていると、くだんの映画が画面に大きく映し出された。「よし、これでレーシングマインドはバッチリ充電出来たぞ」と、いつもよりリラックスした気分で夢の世界へと旅立つ事が出来た。レース全日にはこうしたささいな事が重要になってくるのは、僕だけなのだろうか?

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早朝、兄貴的な存在の写真家の横山泰介氏をピックアップ。はやる気分を抑えつつ、冬の夜明けが待ち遠しい、月明かりがたよりのベイブリッジ、そして白み始めるレインボーブリッジを後に筑波へと向かう。午前6時30分、予定通りに筑波サーキットに到着。体感する冷たい外気とは裏腹に、パドックはすでにライダーや慌ただしくマシンを押すメカニック達の熱気に包まれていた。リラックスした気分でレースに臨もうと心に決めてはいるが、周囲で繰り広げられるレースモード全開の有り様を目の当たりにすると、ウォーミングアップ中のエンジンのように、こちらのマインドも徐々にヒートアップしてくる。最近「年々時が経つのが速くなる」という言葉を耳にするが、レース場ではそれにも増して、受付、車検、注入するガソリンの計量、空気圧の調整、タイヤウォーマーと作業が目白押しとなり、慌ただしく時が過ぎて行く。

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天気は快晴だが、一向に気温も上がらず路面温度もかなり低い。今回のエントリーは、今秋MAX7を卒業したのでワンランクアップのMAX4だ。しかもトップカテゴリーのスーパーマックスとの混走となれば、おのずと気分が変わる。大人のレースごっことは言うものの、エントリーライダーは格上の強者ばかりだ。レースである以上は真剣勝負。「ここは一丁もまれてみるか」という開き直りとも思える姿勢で臨もうと覚悟を決めた。

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様々な心模様の中、いよいよ予選がスタート。路面も冷えているのにトップライダーはスタート直後からハイペースな走りを見せている。流石だ。2周ほどラップした所で、S字コーナー半ばで1台が転倒、続いてアジアコーナーの立ち上がりでも転倒。早々にレッドフラッグ。「これからだったのに」という気持ちを切り替え、ひたすら再開を待つ。その間、折角暖まり始めたタイヤが冷えるのを嫌い、慌ただしくスタンドをかけ、タイヤウォーマーを巻く。予選再開となるも、あえなく数周でジ・エンド。レースとはこういうもの…と、誰もが判ってはいるものの、どのライダーの表情もどことなく曇りがちだ。結果は全体的にベストタイムより2秒ほど下回っていた。僕は混走13台中11番手、クラス7台中4位と、お話にならない結果を見事射止めたのだった。

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今回のレースには、前回の筑波MyBike90分耐久レースでチームメイトとして共に優勝を勝ち取った、最新型のDAYTONA675Rに乗る砂塚氏とDUCATI1198Sの高原氏がスーパーマックスへエントリーされていた。

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僕にとってレース場でのもうひとつの楽しみは、素晴らしき仲間との再会だ。今回も根本健氏、バリー・シーン、そして大学時代からの親友にしてSUZUKIのサテライトチームで大活躍したJIN PRIZE斎藤仁等のボス荒岡健氏、筑波、岡山、富士とクラシックレースを共に享受したOVER RACINGの佐藤健正氏、我が愛機の監修者にしてDAYTONAで全日本に参戦するレーシングメカニックの森マサカズ氏、としばしの会話を楽しむ事が出来た。

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あっ、そろそろ決勝が始まる時間だ!楽しいからといって長々とパドック巡りしてはいられない。ほんの少し慌てた気分で身支度を整え、スタート前チェックをこなし、コースへと向かう。レースである以上、表彰台を目指したい。しかし、今回は勝手が違う。緊張感とリラックス感が交互に押し寄せる奇妙なメンタルコンディションの中、グリッドに付きバイクに跨がる。そうしながらも「スタートが巧く行けばあのバイクとこのバイクの間を抜けて」なんて事をイメージする。しかし周囲は最新型のBMWやDUCATI、APRILIAといったリッタークラスのマシンが居並ぶ。まして同胞の砂塚氏は雲の上だ。

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エンジンスタート!エンジン音に同調するかのように、僕のハートもアップテンポなリズムを刻み始める。周囲のライダーの肩がいかり、彼らの興奮が伝わってくる。2周のサイティングラップにもかかわらず、抑え気味ながらもグイグイと迫り来るマシン。サイティングを終え、グリットに付く。エンジン音の高鳴りと共にシグナルに集中する目、目、目。レッドシグナルを見据え心の中で1、2、3…とリズムを取る。グリーンシグナルの点灯とほぼ同時に全車スタート。一見西部劇で観るバッファローの暴走シーンの様なけたたましさが、サーキット中にこだまする。最初のうちは、なんとか食いついて行くもそこは格上のクラス。サーキットの女神様もそう易々とは微笑んでくれるはずも無い。

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あれよあれよ、という間に前を行くライダーの姿は視界から遠ざかって行く。あっという間にレースは終盤戦へと向かう。こうなったらマイペースで行くしかない。焦ってもしょうがない。たちまちチェッカーフラッグが振られ、ジ・エンド。

トップクラスの西田俊郎氏は何と0分59秒976という驚異的な速さで見事優勝。MAX4の覇者は1分04秒149を叩きだしたAPRILIA RSV4の篠塚選手。以下3位が全員1分04秒台。

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僕はと言えば、それらのタイムを大幅に下回る1分07秒台。見事ビリーザキッドの栄冠に預かるという、トホホな結果とあい成ったのだった。それでもスーパーポジティブシンキングに捉えると、クラス4位だ、と負けず嫌いが顔を出す(笑)。これから始まるストーブリーグ、バート・マンローの様にマシンを労いつつ、夢の1分04秒台を目指して、精進あるのみだ。

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