VIRGIN TRIUMPH | T140ボンネでスタートしたトラ最速レーサーへの道 vol.12【最終回】 小沢 和之さんのコラム

T140ボンネでスタートしたトラ最速レーサーへの道 vol.12【最終回】

  • 掲載日/2015年10月16日
  • 写真・文/小沢 和之(ライター)

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『バトル・オブ・ザ・ツイン』では一度も上位を走る事が出来ませんでしたが、その後、ミニバイクレースやモトクロス、ダートトラックなどで経験を積んだおかげで、ロードを走るテクニックも少しづつ上がってきたハズ。ずっと寝かせたままになっていたトラでの復活レース、ひとりで勝手に盛り上がっていましたが、蓋を開けてみると世の中そんなに甘くはありませんでした。

新生トライアンフレーサーで参戦当初は、戦闘力の高いマシン(排気量やチューニング度合い)と同じクラスだったため(今ではクラスが細分化されてカテゴリーが明確になっていますが)、表彰台にはまだまだほど遠いレベルの走りしか出来ませんでした。上位に食らいついた走りが出来るようになったのは、自分のレベル(タイム)が上がって来たことも事実なのですが、それ以上に、レース仲間が増えて来た事が大きな要因だったような気がします。

バトル時代はエントリーしているライダーの中にほとんど知り合いもなく、同じクラスで走っているライダーがどんな人なのかも知りませんでした。しかし現在参加している『レジェンド・オブ・クラシックス』では、サーキットに到着すると準備よりも人と話している時間の方が多いほど顔見知りだらけで、ここに居る事がホントに楽しいのです。

もちろんバトル時代も楽しかった事には変わりないのですが、今はプラスアルファの要因がとても多く、それが速く走る事に繋がっているような気がします。お互いの気持ちがわかり合えている事、その人の事を少しでも理解出来ていれば接近戦も怖くない。逆に言えば、分かり合えていない人にはなるべく近づかないような走りをする。そんな駆け引きが出来ると、おのずと走り方も変わり、どんどん上位に食い込んで行けるようになったのです。

そうしてついにその日がやって来ました。夢にまで見たシャンパンファイト。それも一番高いところで!! コルクを勢いよく抜く事が出来た喜びは、ただただ「サイコー!」のひと言でした。新車で買ったトライアンフを街乗りから潔くサーキット仕様へとカスタムして、ほんとうに良かった。

一度トップを走ると走り方を理解するのか、常にそこでバトルが出来るようになるのが不思議でした。バイクの調子も良く、数年間は表彰台の常連の一角にへばり付く事が出来ました。

はい、これで「トラ最速レーサー」の夢を果たす事が出来たのです!!

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国内に敵は居ない(なんちゃって)となれば、エントリーの場を海外に移しましょうとばかりに、このバイクを海外のヒストリックバイクレースにエントリーさせてしまいました。

じつはかれこれ10年以上観戦に行っていた『ウィロー・スプリングス』でのレースで、いつかは自分のバイクで走ってみたいな?、という思いをバイクがぶっ壊れる前に実現しました。これまた夢にまで見た大舞台に打って出たのです。

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がしかし、バイクを送る術も全く分からないところからのスタートだったので、苦労の連続だった事は言うまでもございません。だからその分、成し遂げた時の喜びはそりゃあもう感動でした。コースインした時は泣いちゃいましたからね(笑)。

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日本からアメリカのレースに参戦している人に話を聞きに行ったり、バイクを送るための書類を作ったり、海運会社とやり取りをしたり、挙げ句アメリカで受け渡し日にバイクが来ていなかったりと大変な目に合いながら、ようやく憧れのサーキットで走る事が出来たのは、自分の人生において10大ニュースに入るほどの大きな出来事でした。

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10数年通っているうちに顔見知りも出来るし、オフィシャルとも仲良くなる。異国での初レースと言えども意心地の良さはバトルよりも格段に上でした。ただしコースを走ってみてその難しさや手強さに到底ついて行けず、攻略なんてもってのほか、完走する事が奇跡ようなレースでした。

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奇跡? そう、完走すれば何かが起こる! ワタシの中でここウィローは『フィールド・オブ・ドリームス』のような存在。「ここは天国か?」なわけですね。そんな天国のようなサーキットには女神様が居るんですね?。日本から苦労してやって来た侍ライダーに、特別なご褒美をくれたのです。それは異国でのレース初参加で入賞!! あの表彰式の居心地の良さ、集まったみんなが祝福してくれたあの体験は、一生の宝物です。

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ワタシの趣味はバイクに乗る事。野球をしたりキャンプもしたり、ほかにもやる事はたくさんありますが、バイクに乗るってのはなんだか特別、そしてレースは格別なのです。

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人にはそれぞれの趣味嗜好があるけれど、ワタシはこれからもバイクで楽しんだり悔しがったりしていくつもりです。今後ともトラレーサー共々、よろしくお願い致します!!

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