VIRGIN TRIUMPH | 6-8 やっと仕上がったセミレーシングの『MG-B』 立花 啓毅さんのコラム

6-8 やっと仕上がったセミレーシングの『MG-B』

  • 掲載日/2017年05月07日
  • 写真・文/立花 啓毅(商品開発コンサルタント)

少し前のことだが、ドイツの田舎道を走っていると峠にさしかかった。するとコーナーには赤白に塗られたゼブラゾーンがあり、黒々としたタイヤ跡がまだ残っているではないか。恐らく休日にこの公道を閉鎖してヒルクライムレースを行っていたのだろう。

峠までは景色を見ながら、のんびりドライブを楽しんでいたが、ゼブラゾーンとタイヤ痕をみると、ついついスイッチが入ってしまい、その気になって攻めてしまった。走ってみると変化に富んだなかなか楽しいコ―スだった。

ヨーロッパではよく見かける光景だが、アメリカでも草レースは非常に多く、小さな町にも0-400mのドラッグレースのコースや、舗装路とダートを組み合わせたコースもあり、毎週のようにレースが行われている。

息子が乗るバイクをお父さんが整備し、お母さんはピクニックテーブルを広げてランチの準備をする。そんな光景をよく目にする。

日本では考えられないことだが、こういった日々の生活の仕方がクルマ文化を作っているように思う。

立花啓毅さんのコラムの画像

今回レストアしたMGは、こういった草レースが楽しめるクルマに仕上げた。

このクルマは今からちょうど30年前(1977年)のMG・Dayでコンクールエレガンスの大賞を頂いたものだった。その時のエンブレムが今も自慢気にインパネに貼ってある。

ところが、長い間乗らずじまいだったため風化したかのように傷んでしまった。この際レストアと合わせ、セミレーシングにすることにした。いわゆるナンバー付きレーシングカーだ。

OHVカンターフローの1.8リッターエンジンは、燃焼室の形状を修正し、圧縮比を上げ、レーシングカムを入れた。キャブも大口径の1-3/4インチに交換。それ以外にもフライホイールの軽量化やポート形状など一連のチューンを行なった。

MGのレーシングカムは種類が豊富で十数種類もある。その中から好きなものが選べる。しかも価格は3万円もしなかった。

排気系は鋳鉄のEXマニホールドをタコ足風の2ポートに変更。そこから先は2サイズ太いアルミパイプで製作した。勿論、サイレンサーもアルミだから、ちょっとしたレーシングバイクのようだ。しかも排気系だけで10kgも軽量化できた。

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それ以外にバンパーを外すなどして、トータル77kgもの軽量化を達成し、車重は863kgとなった。幌は以外に重く、空気抵抗も大きいため、グラスファイバーのハードトップに変更した。

この軽量化とエンジンの効果は大きく、トルクフルなエンジンは極低速からガンガン加速する。

そして最後に、ミシュランXASタイヤを履かせることにした。どのタイヤにするか悩んだが、当時の雰囲気を残し、しかもトータル性能が高いとなるとミシュランXASしかない。

この非対称パターンのXASは1965年に発表されたもので、当時、このタイヤは各社がベンチマークにした世界の指標だった。それをいまだに供給し続けてくれることが嬉しい。

早速試乗してみると、昔に比べてかなりしなやかで接地性が非常に高く、ハーシュやロードノイズも少ない。反面、ケース剛性が低いためかヨレ感があるが、それは致し方ない。

あまりに素晴らしいので日本ミシュランタイヤの広報部に尋ねたところ、外観のパターンやロゴは当時のままだが、コンパンドや部材の一部は、現在の技術を加味してチューニングし、最適化を図っている場合があるという。

立花啓毅さんのコラムの画像

ミシュランが凄いと思うのは、まだ真円度の低いバイヤスタイヤの時代に、世界初のラジアルタイヤ「X」を1949年には発表したことだ。高性能であるだけでなく、他のタイヤの3倍もの寿命を持っていた。そしてそういった古いタイヤを今も旧車を愛する我々のために供給していることだ。

また有名なミシュランガイドは、1900年からクルマでの旅を楽しめるように、選りすぐりの宿泊施設や飲食店、レストランを紹介し続けて117年になる。それによって日本を含め、世界の食文化が高まったと言える。ミシュランは常に社会性を考えている企業であるように思う。

話をもとに戻そう。MG-Bのサスペンションは、全高を3cm下げ、4本ともスパックスの可変ダンパーに入れ替えた。純正のレバー式は分解してオイル粘度を変えるなど色々と手を打ったが、いまいち性能が出なかったからだ。

ホイールも標準の4.5J(スポーク=60本)から5.5J(スポーク=72本)の強化ホイールに変更した。

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30年間眠っていたMGも、今は乾いたエンジンサウンドを響かせ快調に走る。近いうちにこのチューンの成果が発揮できる草レースに出ようと思っている。

『MG-B Tachibana Spec』1963年
  • エンジン=直列4気筒OHV
  • 排気量=1,798cc
  • 内径×行程=80.3×88.9mm
  • 圧縮比=9.4
  • 出力=95hp/5,400rpm~
  • トルク=15.2kg-m/3,000rpm
  • 変速機=4段MT
  • サイズ=全長3,893×全幅1,516×全高1,254mm
  • 軸距=2,630mm
  • トレッド=F:1,244/R:1,250mm
  • 車両重量=863kg
  • サスペンション=F:Wウィッシュボーン+コイル/R:リジッド+リーフスプリング
  • タイヤ=ミシュランXAS 175R-14
  • ブレーキ=F:ディスク/R:ドラム

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