VIRGIN TRIUMPH | 番外編 2-1 概念を越えた『ヤマハ パフォーマンスダンパー』 立花 啓毅さんのコラム

番外編 2-1 概念を越えた『ヤマハ パフォーマンスダンパー』

  • 掲載日/2015年11月06日
  • 文/立花 啓毅(商品開発コンサルタント)

立花啓毅さんのコラムの画像

ママチャリに乗ると、ちょっとした段差にもかかわらず、手がハンドルから抜け落ちてびっくりされた方は多いと思う。

実はもう何年も前だが、ヤマハのテストコースでママチャリの試乗会があった。用意されたノーマルのママチャリで、3センチぐらいの段差を乗り越える。予想通りハンドルがブルルンと振動して、しっかり握っていないと抜け落ちそうになった。

次に、ヤマハが開発した『パフォーマンスダンパー(車体制振ダンパー)』という魔法の杖を、ヘッドパイプからシートポスト間に取付けて、同じコースを試乗した。

なんと! その違いに唖然としたのだ。まるで高性能なサスペンションが付いているかのようにすんなりと段差を通過してしまう。その原理について、次のように説明して頂いた。

「物体に刺激を与えると、必ず反力が発生し、振動が起きます。この振動が乗り心地や騒音だけでなく、操縦安定性に大きく影響を及ぼしています。車体の剛性を上げても周波数が変わるだけで振動は消えません。この振動を吸収しようというのがこのダンパーの目的です。実際には1ミリ以下の極小ストロークで減衰力を立ち上げて吸収しています。すでにトヨタや日産などが採用し、ボディ前後端のバンパーレイン部などに取り付けています」

こうご説明されたのは、沢井誠二さん。事業部長をされているお偉い方だ。

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私も長い間、バイクやクルマを開発し、個人的にもいろいろとチューンを行なってきた。サスペンションだけでなく、車体の剛性を上げたりもしたが、車体の減衰までは考えが及ばなかった。

ところが沢井さんは、車体が振動している現象に気付き、それを解明し、製品化まで漕ぎつけたのだ。同じ開発者として尊敬の念すら感じる。この開発話は次回ご説明するとして、今回はパフォーマンスダンパーの効果をご紹介しよう。

この魔法の杖を早速、ノートンのフェザーベッドフレームに取り付けることにした。

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フェザーベッドフレームは、当時もっとも優れたフレームと言われ、日本でも1960?70年代のホンダやヤマハ、スズキのワークスに採用されたほどだ。

とは言っても、いま見ると問題も多い。そこでヘッドパイプ周りをトラス状に補強し、剛性アップを図った。するとターンインがし易くなり、ラインのトレース性も向上した。しかしフロントタイヤの接地性は、依然として改善されないままだ。

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そこでダンパーバルブを米国から取り寄せるとことにした。因みに価格は、この円安の時代でも送料込みで2万円弱だった。

フロントフォークをばらしてバルブを組み付けたが、セッティングがなかなか出ない。減衰力を調整し、バネのプリロードを変えるなどし、何とかセット完了。フロントの接地感はわずかに改善された。

サーキットの走行時間も限られているので、納得がいかぬままパフォーマンスダンパーを取り付けることにした。

聞くところによると、取り付け場所によって効果が違うらしい。そのためもっとも効果が出ると思われる、ヘッドパイプからシートポスト間に付けることにした。いわゆるメインパイプの位置だ。

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減衰力の違うパフォーマンスダンパーを何本か用意してテストを開始。すると減衰力の違いによる効果が手に取るように判る。ベストのものを選定すると、今まで解決できなかったフロントの接地性が大幅に向上し、ターンインもし易くなったではないか。

さらにエンジンの振動も減少した。面白いもので、振動が減ると、今まで力一杯握っていたハンドルは軽い力で済み、疲労が少ない。それによって運転に集中出来る。

驚きはブレーキのコントロール性が大幅に向上したことだ。ブレーキはTZの270φもあるダブルパネルのドラムを使用。効きは抜群だが微妙な操作が出来なかった。それが2本指でコントロールしながらコーナーに入れるようになった。これはスゴイ。

今まで発生していたこれらの現象は、全て車体が悪さをしていたことが判った。ブレーキもヘッドパイプが前後に振動していたため、微妙なコントロールが出来なかったものと思う。要は、高剛性のバイクフレームもママチャリ現象が起きていたのだ。

サーキットタイムは測定しなかったが、恐らく筑波では1?2秒は短縮すると思う。魔法の杖の質量は670gで軽量化の足を引っ張るが、この成果は天秤にも掛からぬほど大きい。

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